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臨床推論 Case39

Front Med(Lausanne). 2022; 9: 1058824.

【症例】
75歳 女性

【既往】
COPD   CKD   腹部大動脈治療後

【現病歴/現症】
⚫︎ バイクから落ちて左大腿骨頸部骨折の診断となった
⚫︎ オピオイドで鎮痛し、翌日に手術した

⚫︎ 術後意識が悪くE2V1M1で発汗と頻呼吸となった
⚫︎ HR110bpm 血圧は正常
⚫︎ Hb7.1 WBC26400 CRP10.3mg/dL BS108mg/dL
⚫︎ フルマゼニル、ナロキソンを投与したが改善なし

⚫︎ ICUに挿管せず入室となった
⚫︎ 瞳孔正常、対光反射あり、腱反射低下、バビンスキー反射陰性であった
⚫︎ 数時間で血圧低下、酸素悪化し、挿管管理となった
⚫︎ 心エコーで右室の拡張と高エコーの物質がみられた

⚫︎ 胸部造影で肺塞栓は認めず
⚫︎ 入院後のMRIは以下の通り

What’s your diagnosis ?







【診断】
脂肪塞栓症

【経過】
⚫︎ 対症療法で対応した
⚫︎ ICU入室3日後から徐々に意識状態改善した

【考察】
⚫︎ 脂肪塞栓は骨折、やけど、外傷後に生じる
⚫︎ レアなのはnon traumaticで生じる(Case Rep Med. 2018; 2018: 1479850.)

⚫︎ リスク:骨盤骨折、両側骨折、固定の遅れ、30以下の男性
⚫︎ 症状は典型的には24-48時間で生じる
⚫︎ 3徴候:呼吸、神経、皮膚
⚫︎ 呼吸は頻呼吸で肺水腫、低酸素、ARDSなど
  44%で重症化し挿管管理となる
  また閉塞性ショックとなり、急性右心不全を起こす
⚫︎ 神経は50%以上で意識障害、痙攣をおこす
⚫︎ 点状出血は腋窩、体幹、強膜などに生じる

⚫︎ 機序としては骨折による髄内圧上昇で脂肪が血管に入り込む
⚫︎ トロンボプラスチンが活性化し血小板凝集も関連する
⚫︎ 脂肪が血管内皮を障害して炎症がおき、閉塞しやすくする
⚫︎ 血小板低値、貧血進行を認める

⚫︎ 頭部MRIではStarfield patternとして両側に白質、灰白質ともに広範囲にDWI高信号を認める
⚫︎ 臨床と相関し、改善すればMRIでも異常陰影は消失している
⚫︎ 治療は支持療法のみ 特に酸素
⚫︎ 死亡率は10%以下で数日〜1週間でfullに回復する

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