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臨床推論 Case96
Int J Surg Case Rep. 2017:39:221-224.
PMID:28858739
【症例】
72歳 男性
【既往歴】
COPD 心房細動
【現病歴/現症】
⚫︎ 胸部不快感とタール便を認めて受診された
⚫︎ Hb7.2 PT-INR5.9と延長していた
⚫︎ ビタミンK投与後に上部消化管内視鏡検査を施行されたが異常なし
⚫︎ CTで検査で後縦隔に腫瘤病変を認め、当院紹介となった
⚫︎ 血圧120/80mmHg 脈拍120bpm
⚫︎ CTは以下の通りで上縦隔から後縦隔にかけて腫瘤病変あり
左胸水が貯留していた
気管と左心房は腫瘤に圧排され、肺野は鬱血していた
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⚫︎ 心エコーでは左房が押されて潰れていた
![](https://assets.st-note.com/img/1707759027181-dTFH3GwNPN.png?width=1200)
What’s your diagnosis ?
【診断】
縦隔血腫
【経過】
⚫︎ 入院後NPPVで対応したが、さらに胸部不快感と呼吸困難は悪化した
⚫︎ 左房の圧排を解除しないと改善しないと判断し血腫除去術を行う方針とした
⚫︎ 開胸手術で上縦隔と後縦隔がびまん性に拡大していた
⚫︎ 大きな血腫を認め可能な限り血腫除去を行なった
⚫︎ 活動性出血や異常な血管の発達は認めなかった
⚫︎ 術後容態は安定し、経過問題なく退院することができた
⚫︎ その後フォローでも問題なく経過している
【考察】
⚫︎ 縦隔血腫の原因は外傷性血管損傷、大動脈破裂などがある
⚫︎ しかし本症例のようにspontaneousに発生するのはレアである
⚫︎ 要因としては以下の3点が考えられる
① 2次性に出血しやすい状態 抗凝固剤内服、透析中など
② 他の疾患からの出血 嚢胞や腫瘍など
③ 完全な特発性 咳嗽、くしゃみ、嘔吐など胸腔に圧がかかって生じるもの
⚫︎ 今回の症例はCOPDによる慢性炎症と肺高血圧に続発する毛細血管の増殖と脆弱性が出血に関与したのかもしれない
⚫︎ 本症例のように抗凝固剤に関連して生じたものは9例報告あり
![](https://assets.st-note.com/img/1707759038756-b02vvtFMCs.png?width=1200)
⚫︎ 今回の症例はINRが逸脱していたが、上記報告の6例は適正な値だったにも関わらず生じている
⚫︎ もしかすると治療レベルに関わらず発生するのかもしれない
⚫︎ 最も多かった症状は胸痛で軽症〜激痛まで様々である
⚫︎ 胸部Xpでは血腫が大きくなるまで認識できなかった報告あり
⚫︎ 今回の症例もCTがとられる前に内視鏡をうけている
⚫︎ 胸部症状が強ければ縦隔血腫を鑑別にあげる必要がある
⚫︎ 上記報告では縦隔腫瘍疑いで手術を受けた1例を除き、他は全例保存的に治っている
⚫︎ 今回のように呼吸・血行動態が破綻するようであれば速やかに手術が必要と考える