臨床推論 Case102
Cureus 15(7): e42301.
【症例】
65歳 男性
【既往歴】
高血圧症:アムロジピン ドキサゾシンで治療中
【主訴】
発熱 咳嗽 喀痰
【現病歴/現症】
⚫︎ 1週間前より発熱、咳嗽、喀痰のため救急外来を受診された
⚫︎ PCR検査でCOVID19は陰性で急性気管支炎/肺炎を疑われアジスロマイシンの治療を受けた
⚫︎ しかし改善しないため羽田野先生の発熱外来を紹介受診された
⚫︎ 受診時バイタルサイン
血圧:126/64mmHg
脈拍:73bpm
体温:37.6℃
呼吸:20bpm
SpO2:98%(RA)
⚫︎ 右胸部にcoarse crackles聴取した
⚫︎ 採血は以下の通り
⚫︎ CTでは右肺にmucos plugsと上葉におよぶ粒状影、コンソリデーションあり
⚫︎ 軽度の気管支肺炎としてアジスロマイシンを処方して対応されたが改善なし
⚫︎ 2回目のSARS-CoV-2 PCRは陰性であった
⚫︎ グラム染色を実施したところ焦点の違う2点の画像は以下の通り
What’s your diagnosis ?
【診断】
肺結核症
【経過】
⚫︎ ZN染色は以下の通り
⚫︎ 結核菌PCR検査は陽性であった
⚫︎ 結核専門病院に転院し六ヶ月の治療を終えた
⚫︎ 初めの2ヶ月はINH+RFP+PZA+EBの4剤で治療し、残り4ヶ月はINH+RFPで対応した
⚫︎ 感受性はすべて問題なかった
【考察】
⚫︎ 日本の結核の粗発生率は10万人にあたり33.9➡︎13.9まで低下した
⚫︎ 同様に粗死亡率も10万人あたり2.2➡︎1.5まで減少した
⚫︎ 結核の年齢・性別標準化年間届出率は2022年には10万人あたり4.5人と減少してきている
⚫︎ パンデミックによって将来的に結核関連死が数千人増加すると多くのモデル研究で言われているが、実際はどのように影響しているのか不明である
⚫︎ 「グラムゴースト」はグラム染色で結核菌の中性(陽性でも陰性でもない)の外観を示す用語である
⚫︎ 結核菌はCOVID19パンデミックにおいて鑑別すべき重要な菌である
⚫︎ グラム染色はマイコバクテリウム同定においてメリットは2つある
① グラムゴーストがあれば不適切なキノロン投与による結核の診断の遅れを防げる
② 空気感染対策を講じることができ、エアロゾルが発生するような処置の際には予防措置がとれる
⚫︎ グラム染色はCOVID19流行下においても依然として強力な診断ツールである