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臨床推論 Case137

Intern Med. 2020 Aug 1; 59(15): 1873–1877.
PMCID: PMC7474991

【症例】
60歳 男性

【主訴】
心窩部痛 動悸

【既往/治療歴】
クッシング病:両側副腎摘出および下垂体放射線治療後
コートリル朝15mg 午後5mg内服
喘息:無治療
心室性期外収縮

【現病歴】
■ 心窩部痛と動悸で救急外来を受診された
■ 症状は誘引ははっきりせず安静にしていても生じる
■ 持続時間は1分ほどである
■ 左肩に放散し、倦怠感を伴う

【現症】
心電図:特記すべき異常なし
ラボ:心筋逸脱酵素上昇なし 好酸球は正常上限であった

【経過①】
■ 入院して見ていたが重篤な疾患はなさそうで一旦退院された

■ しかし動悸と倦怠感が悪化し、すぐに救急外来に受診され再入院となった
■ 入院して朝方になり動悸が持続したため心電図を施行したところ以下の通り

■ ST上昇していたので冠動脈カテーテル検査を施行した

■ びまん性の攣縮を認め冠動脈攣縮性狭心症の診断となった

【経過②】
■ ニフェジピンとニコランジルを投与したが胸痛は持続した
■ 早朝ホルモン検査を施行したところACTHとコルチゾール低値であった

What's your diagnosis ?







【診断】
副腎不全による冠攣縮性狭心症(CSA)

【経過③】
■ 眠前にデキサメタゾン0.25mg/dayを開始しところ胸痛、動悸は全く起きなくなった

【考察】
■ 副腎不全に対してコートリルで治療していた
■ しかしin vivoのサーカディアンリズムを全く真似るのは難しいし、過小or過剰治療になりがちである
■ 不適切なステロイド治療は心血管リスクを上昇させる
■ ステロイドとともにIL1 IL6 TNFαは上昇する
  これらによって心血管リスクが増えると言われている
■ しかしステロイドが足りないと心室でのKチャネルや心膜でのCa輸送体の発現が低下する
  その結果、心保護作用が低下する
■ とくに甲状腺中毒症状態+副腎不全は心血管イベントんhighリスクである

■ 難治性の冠攣縮性狭心症にステロイドが効いた6例の報告

■ いずれも何かしらのアレルギーを持っていた
■ 1例はCSA症状が出るたびに喘息が悪化した
■ これらの報告はCSAのスパズムは動脈の過活動やアレルギー性炎症によって生じ、それをステロイドが抑えることを示唆している
■ こういった症例はコートリルよりも長時間作動するプレドニンやデキサメタゾンがよいのかもしれない

■ 本症例もコートリルの作用が切れる早朝に起きていた
■ ホルモン測定したところ早朝のコルチゾールは低値であった

■ 本例のIgEは正常値であり喘息がどこまで関与していたのかは不明である

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