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臨床推論 Case160
J Med Case Rep. 2007 Dec 7;1:175.
PMID: 18067664
【症例】
39歳 女性 エホバの証人
【入院理由】
汎血球減少の精査
【既往/治療歴】
過多月経
【現症】
■ 10ヶ月続く汎血球減少のため入院された.
■ 入院時ラボデータ:
WBC 2,900/μL Hb 3.1 g/dL MCV 58.6 fL RDW 35% PLT 12.7万/μL
網状赤血球数 8,000/mm3と低値
血清鉄 17μg/dL TIBC 447μg/dL TSAT 4% フェリチン<2 ng/mL
エリスロポエチン 9544 mU/mL
【経過】
■ 宗教上の理由で輸血は受け入れられず, 鉄剤100mgを週2回で静注した.
■ 初回鉄輸注から2日後, 血小板数が3.9万/μLに減少し, ヘモグロビンは2.7 g/dLにわずかに低下, 白血球数は1,600/μLに減少した.
■ そのためマルクを施行したが過形成骨髄で特に異常はない.
■ 鉄療法開始10日後 WBC5,900/μLに正常化し, Hb5.2g/dLに改善, PLT 19.5万/μLとなった.
■ 合計1,500mgの静注鉄投与を受け, 4カ月後にはHb14.0 g/dL, PLT 18.1万/μL, フェリチン 121 ng/mLはいずれも正常範囲内だった. WBCは3,800/μLと正常下限をわずかに下回っていた.
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What's your diagnosis ?
【診断】
鉄欠乏による汎血球減少
【考察】
■ 鉄欠乏は反応性の血小板増多と関連するが, 鉄欠乏が重症化すると血小板数は減少することがある. その正確な機序は不明だが, 血小板造血と白血球造血における鉄依存性酵素の活性の変化が関連している可能性がある.
■ 本患者の白血球減少の機序は, 極めて高いエリスロポエチンレベルと関連しているかもしれない. 動物実験とヒト造血幹細胞を用いたin vitro研究で, 造血幹細胞へのエリスロポエチン添加により好中球産生が抑制されることが示されている.
■ 鉄療法後の血小板数と白血球数の突然の一過性低下は, stem cell steal現象と関連していると考えられる. 不足していた赤血球前駆体での鉄利用が過剰に増えると, 造血幹細胞が赤血球系に傾き, 他の系統の産生が疎かになったかもしれない.
■ 鉄欠が汎血球減少の原因として挙げられているのはstudyや国によって変わる
このstudyでは鉄欠乏性貧血は汎血球減少50例においてIDAが4例と2番目の原因となっている
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■ 鉄欠乏性貧血はITPレベルで血小板が低下することもある
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■ また鉄欠乏性貧血は白血球減少と相関する可能性がある
鉄欠乏性貧血が酷いほど白血球が低い(Blood (2011) 118 (21): 5279.)
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