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臨床推論 Case63

Rheumatol Int. 2019 Sep;39(9):1655-1660.
PMID:31214770

【症例】
44歳 男性

【主訴】
頸部痛 両肩疼痛

【既往】
尿道下裂 停留精巣 僧帽弁逆流症(mild)

【現病歴/現症】
⚫︎ 10年以上続く頸部痛と両肩痛、時折左腕の知覚障害のため受診された
⚫︎ 頸部は朝の強ばりと夜間に周期的な痛みを認めていた
⚫︎ NSAIDsには反応していた
⚫︎ 家族にはSpAや先天性奇形はいない

⚫︎ 頸部に圧痛あり、後屈と回旋の動きに制限あり
⚫︎ Schoberテストは4.5cmと陽性であった
⚫︎ HLA-B27が陽性になった
⚫︎ CTでは頚椎の癒合を多数認めた

⚫︎ 軸椎型のSpAが疑われた
⚫︎ しかし採血は炎症反応など何も異常はなし
⚫︎ これらの奇形と既往歴からある疾患が疑われた


What’s your diagnosis ?







【診断】
Kippel-Feil syndrome (KFS)

【経過】
⚫︎ NSAIDsと理学療法で症状消失し5ヶ月後のフォローでも問題なく経過している

【考察】
⚫︎ 脊椎関節症は慢性炎症性疾患の1群である
⚫︎ 症状-診断までの期間は5-10年と長い
⚫︎ 軸椎、末梢、関節外症状+HLA-B27が特徴である
⚫︎ SpAと先天性脊椎変形の併存は報告なし

⚫︎ KFSは1つの頚椎の癒合を特徴とする先天性疾患である
⚫︎ KFSはしばしば他の骨格異常や内臓障害を合併する
・聴覚障害
・心疾患
・尿路奇形など
⚫︎ 胚発生の過程で椎骨が適切に分節化されないために生じ、体軸の中胚葉の分化と体節形成のシグナル伝達経路の異常が関連している
⚫︎ 優性および劣性遺伝子変異が発見されている
・常染色体17q21.31に位置するMEOX1遺伝子の変異は劣性遺伝子と関連している
・GDF6とGDF3の変異は常染色体優性遺伝子に関連している
⚫︎ Gruber先生らの横断研究ではKFSの有病率は0.0058%(172人に1人)であった

⚫︎ 3徴候は短頸、後頭部のHair lineの低下、頸部の可動域制限
  実際この3徴候が揃うのは50%未満である
⚫︎ 骨格筋の奇形としては頸部側弯症が1番で60-70%認め、2番目は肩甲骨のスプレンゲル変形(肩甲骨の高さが違う)であった

吉澤整骨院のHPより

⚫︎ 他に頸肋、二分脊椎、四肢の異常などそれぞれ15%前後であった

⚫︎ 内臓では以下の通り
・泌尿生殖器:腎臓、膀胱の奇形、子宮の欠如、尿道異常など
・心血管:AR MR 中隔欠損など
・呼吸器:SAS 肺小葉増多
・耳:難聴 外耳奇形
・眼科:斜視 眼振 網膜脈絡膜萎縮
・中枢:痙攣 水頭症 髄膜瘤 空洞症 片麻痺 脳腫瘍

⚫︎ 最新のKFSの分類は3パターンあり
・TypeⅠ:癒合したセグメントが1つ
・TypeⅡ:癒合したセグメントが複数あり連続していない
・TypeⅢ:癒合したセグメントが複数あり連続している

⚫︎ 頚椎の異常のため神経根障害、脊髄症を訴えることがある
  軽症では成人期になって訴えることがある
⚫︎ そのため長期的なフォローが必要である

⚫︎ 慢性的な疼痛を訴えることがあり、治療は理学療法、必要であれば手術する
⚫︎ 特に慢性の頸部痛、背部痛を訴える場合は鑑別にあげる必要がある

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