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臨床推論 Case90

Case Rep Gastroenterol 2021;15:443–449


【症例】
51歳 女性 

【既往】
1年前に胆嚢摘出術を受けている

【主訴】
右上腹部痛

【現病歴】
⚫︎ 右上腹部の断続てな痛みを訴えて受診
⚫︎ 痛みは鈍い、間欠的で持続時間は10-20分 
⚫︎ 嘔気 嘔吐 熱 体重減少なし
⚫︎ 診察では圧痛はなく、腸の蠕動音も正常であった

⚫︎ AST662 ALT857 ALP261 Bil1.6 D-Bil1.4で他は正常であった
⚫︎ 肝障害の自己抗体やウイルス、銅などは正常であった
⚫︎ エコーやMRCPで総胆管は7.0mmと拡張あり、石や腫瘤はない
⚫︎ マノメトリーを併用したERCPを施行したところ胆道括約筋の圧80と高値であった

What's your diagnosis ?






【診断】
oddiの括約筋機能障害

【経過】
⚫︎ EST後症状、肝酵素異常は改善し、再発なく経過した

【考察】
⚫︎ oddi括約筋障害は胆道ディスキネジアともよばれる
⚫︎ 原因としては炎症後の瘢痕、感染、外傷、膵炎、胆石の通過など
⚫︎ 機序はよく分かっていないが局所的なホルモンまたは神経障害の影響を受けているのだろう
⚫︎ 胆嚢摘出後に多いのは胆嚢と胆嚢管を経由してoddi括約筋の間を通る神経線維が切断されるために起こると考えられている
⚫︎ ただし胆摘後だけじゃなく、自然に起こる人もいるため他の機序もあるのだろう
⚫︎ 胆道への影響は右上腹部-心窩部痛で30分-1時間続く

⚫︎ SODは3タイプに分けられる(World J Gastroenterol 2007 December 21; 13(47): 6333-6343 )

Ⅰ型:追加検査することなくESTの適応である
Ⅱ型:確定のためoddi括約筋のマノメトリーを受ける必要あり
Ⅲ型:胆道管に変化がないため、機能性の問題があるのか、他の消化管の原因を調べる必要がある

⚫︎ ESTはⅠ型は90%、Ⅱ型は70%で改善を認めた
⚫︎ Ⅲ型はCa拮抗薬、SSRI、ソマトスタチンなど保存的治療が望ましい

⚫︎ 総胆管は胆嚢摘出後は1/3で6mm以上に拡大するし胆嚢の大きさ比例する

⚫︎ そのためSODを胆管のサイズだけでは決められない
⚫︎ ゴールドスタンダードはマノメトリーである
⚫︎ 括約筋の異常な上昇 40mmHg以上で診断される
⚫︎ 平滑筋弛緩剤を投与しても改善しない

⚫︎ SODによる影響は膵臓にも及ぶ
⚫︎ SODにより繰り返す膵炎を起こす報告がある
⚫︎ 典型的には数ヶ月おきに数炎を起こし、アミラーゼ・リパーゼが上昇する
⚫︎ 肝酵素、Bilも上昇し、膵管の拡張がみられる

⚫︎ 膵臓のタイプ別は以下の通り

⚫︎ 特発性再発性膵炎とされている患者のうちSODは一定数含まれている


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