臨床推論 Case116
Clin Nucl Med 2010;35: 891–893
PMID:20940553
【症例】
80歳 男性
【主訴】
発熱
【現病歴/現症】
⚫︎ 2ヶ月続く間欠的な発熱のため受診された
⚫︎ 食欲低下、体重減少あり
⚫︎ 血液検査では特記すべき異常なし
⚫︎ エコー検査やCT検査でも原因は指摘できず
⚫︎ PET検査は陰茎に集積あり しかし対応するCTでは特に異常は指摘できない
⚫︎ その時の診察では特に陰部に炎症所見は認めず
⚫︎ しかし徐々に疼痛が出現し、エコーで精巣上体に炎症所見を認めた
⚫︎ そのため精巣および陰嚢の生検を施行した
⚫︎ 病理では精索に異常リンパ球を認めた(これ以上の詳細な情報なし)
⚫︎ 血管内にも浸潤を認める
What’s your diagnosis ?
【診断】
陰茎リンパ腫
【考察】
⚫︎ FUOは一般に感染、悪性腫瘍、自己免疫疾患、その他になる
⚫︎ 不明熱となりやすい感染はIE、歯科感染、骨盤内感染、腹腔内感染、結核である
⚫︎ 悪性腫瘍はリンパ腫、慢性白血病、腎細胞癌、肝細胞癌、結腸癌である
⚫︎ 自己免疫はSLE、リウマチ熱、GCAである
⚫︎ その他は薬、サルコイドーシス、DVTなど
⚫︎ 節外性リンパ腫は節外組織に発生したリンパ腫、直接浸潤したリンパ腫、遠隔から飛んできて浸潤したリンパ腫(リンパ腫は”転移”という表現を用いてはならず”浸潤”という)の3パターンがある
⚫︎ 本例はリンパ節組織に全く認めていない
⚫︎ 男性の生殖器リンパ腫は精巣、精索、陰茎を含む
⚫︎ 精巣リンパ腫は全精巣腫瘍の5%で、全リンパ腫の1%である
⚫︎ 陰茎リンパ腫となるとウルトラレアである
⚫︎ 今回のは陰茎リンパ腫から精巣上体や精索に浸潤したものと思われる
⚫︎ 陰茎は血管が豊富なので生検するのはリスクが高いため、隣接する臓器を選択した