割れ窓理論

私は色々と事情があって、ありがたくも親戚が所有するアパートに住んでいる。

曾祖父さん相当の年月を重ねたとても古い建物だが、住めば都。
水回りはいつか直す必要があるなと毎日認めつつも
気ままな一人暮らしができ、雨風をしのぐ屋根と寝床があることは
この上なく幸せなことである。

羨ましがってくださる方もおられるでしょうが
現実は非常に地味な暮らしだ。

さらに、ここは自他ともに認める
「少々民度が低いのがたまに傷」なエリアなのだ。

前住民より注意点は聞かされていたが
郵便受けに放火されたり、自転車が盗まれるようなゲットーさに
私の知らない世界に足を踏み入れたことをじわじわと認識しつつ、
やれ、それからウン10年経っているわけだから
ご近所さんも代替わりやお引っ越しでメンツも変わっているであろう。
気は持ちようだ。

まずは自分が、気持ちのいい隣人でいようではないか。
爽やかでいることを心がけていた。

心がけている、のだ。

私は。

他の人がどう思おうと関係のないこと。

重要なのは、私がどうしたいか、だ。

が、ついに限界が来た。

このアパートに何ヶ月か前から、階段によだれ（*唾を吐く）をたらす奴がいて
さらに人様の家の前に灰を落としながらタバコを吸い、階段に捨てて行く。

犯人にお目にかかったら、ヨダレ掛けとおしゃぶりをもれなくプレゼントしたい。

そんなある日、事件が起きた。

もともとタバコの吸い殻を「落としていた」箇所に
もう一つ吸い殻が落ちていたのだ。

これは割れ窓理論にのっとれば、この場所のスラム化が進むということである。

汚い
危ない
不衛生

私の理解できない価値観を持つ方だ。
理解に及ばないなど、私もまだまだ修行が足りません。

が、私もここの住民として。

「共同エリアである階段」の風紀が乱されることを
黙って見過ごすわけにはいかない。

自分が住むアパートの民度の低下をどうにかして阻止せねばならぬ。

とりあえず、タバコの吸い殻を掃除し
掲示板に「お願い」をしてみることにした。
まずはここから、だ。