俺の若草物語【ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語】
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を観ました。端的に言うとシアーシャ・ローナンがとにかく素晴らしい映画でした。邦題に「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの」と色々付いていたので、オルコットによる古典「若草物語」とは別物かと予想しましたが、ストーリーはオルコットによる原作をそのままに、グレタ・ガーウィグ監督によって現代的かつドラマチックにアレンジされた作品でした。原題は原作と同じ"Little Women"です。では何故邦題は「わたしの」若草物語なんでしょうか。
本作によって、ジョー・マーチを演じたシアーシャ・ローナンはアカデミー主演女優賞にノミネートされています。彼女の演技で好きなシーンは、ルイ・ガレル演じるベア教授に逆ギレするところです。この映画で彼女の魅力に気付いた人は、映画『ブルックリン』も是非見てみてください。
本作は現在と過去が行ったり来たりする構成だったので、時系列通りの若草物語も見たくなり、1994年に公開されたジリアン・アームストロング監督の『若草物語』もチェックしました。スター・ウォーズを時系列順に見たくなるのと同じ心理です。アームストロング監督版でジョーを演じたウェノラ・ライダーもアカデミー主演女優賞にノミネートされており、他にもローリー役にクリスチャン・ベイルが出演していたりと、ガーウィグ監督版よりも更に味のあるキャストが揃っていました。2つの映画を比べてみると、若草物語のテーマである家族の結束や女性の権利などが、どこか教科書的に描かれていたアームストロング版に対し、ガーウィグ版はより監督のパーソナルな人生観が盛り込まれている気がしました。あと、楽しみにしていたのですが、アームストロング版のジョーは逆ギレしませんでした。
最後に、冒頭の疑問に戻りまして、どうして「わたしの」若草物語という邦題になったかを考えます。本作では、ジョー自らが編集者と売上の分配や著作権について交渉します。これは過去作には無かったシーンであり、現実にはあり得なかった事かも知れませんが、ジョーが自立した個人であることを描くために監督がディレクションした重要なシーンと思います。監督のこの意向を大いに尊重し、「ストーリー・オブ・マイライフ」が付いて、更に「わたしの」が付いたのかもしれません。
というのは建前で、「わたしの」の部分は、「俺のイタリアン」に代表される「俺のシリーズ」に便乗して付けたのではないかと睨んでいます。