見出し画像

AIの「言語理解」の仕組み(統計モデル vs ヒトの理解)



1. AIと人間の言語理解の違い


私たち人間は、言葉を聞いたり読んだりすると、それが何を意味しているのかを「概念」として理解します。
たとえば、「りんご」という言葉を聞けば、赤くて丸い果物のイメージが頭に浮かび、「食べられる」「甘い」「果物」といった関連する情報も思い出せます。
一方、AI(特にGPTのような言語モデル)は、人間のように「意味」を理解しているわけではありません。
AIは、大量の文章データを学習し、「ある単語の後にどんな単語が来やすいか」という統計的なパターンを学習しています。

2. AIの言語理解:統計モデルの仕組み


AIは、与えられたテキスト(プロンプト)に対して、次に来る単語を確率的に予測して文章を生成します。
例えば、「今日は天気が」と入力したとき、AIは以下のような確率を考えます。
* 「いい」→ 60%
* 「悪い」→ 30%
* 「くもり」→ 10%
この確率に従って、AIはもっとも適切だと思われる単語を選びながら文章を作成していきます。
この仕組みのポイントは、「AIは文章の意味を理解しているわけではなく、確率的にもっとも自然な文章を作るようにしている」ということです。
つまり、AIの言語処理は 「意味の理解」ではなく「統計的なパターンの予測」 に基づいているのです。

3. なぜAIは「人間らしい」文章を作れるのか?


AIがまるで人間のように自然な文章を作れるのは、以下のような学習方法のおかげです。
(1) 大量のデータから学習する
AIは、インターネット上のニュース記事、書籍、Wikipediaなど、膨大なテキストデータを学習しています。
そのため、「一般的にこういう場面では、こういう言葉が使われる」というパターンを知っています。
(2) 文脈を考慮する
GPTのような言語モデルは、文章全体の流れを考えながら言葉を選ぶことができます。
たとえば、「私は昨日、夜遅くまで○○していた」という文があった場合、「○○」には「勉強」「仕事」「映画を観る」などの単語が入りやすいことをAIは理解しています。
(3) 単語の関連性を数値化する
AIは「言葉同士の関係性」も学習しています。
例えば、「猫」という単語が出てきたとき、「犬」や「動物」といった単語が関連性が高いと判断されるため、文脈に応じた自然な文章が作れるのです。

4. AIの言語理解の限界


AIが確率的に文章を作る仕組みを持つ以上、次のような限界もあります。
(1) 本当の意味では理解していない
AIは文章のパターンを学習しているだけであり、本当の意味では「理解」していません。
たとえば、「火星には空気がありますか?」と聞くと、AIは一般的な情報を元に「火星の大気は薄いですが、二酸化炭素を主成分としています」などと答えますが、それは「理解」ではなく「過去の文章の統計的な予測」にすぎません。
試しにネットで「火星 空気ある」と検索すると、AIによる概要として同じような内容があがってきます。この内容はネット上の記事にある内容をまとめてくれた内容となっています。
(2) 文脈を間違えることがある
短い文章では、文脈を適切に捉えられないことがあります。
例えば、「彼は野球が好きです。でも、彼はあまり○○しません。」といった文章で、「○○」に適切な言葉を入れる場合、どこかニュアンスがおかしい選択をすることがあります。
(3) 事実とは異なることを言うことがある(ハルシネーション)
AIは確率的に自然な文章を作るため、自信満々に間違った情報を出すこと があります。
たとえば、「トーマス・エジソンは何年に日本に訪れましたか?」と聞くと、エジソンが日本に来たという事実がないにもかかわらず、それっぽい回答を作ってしまうことがあります。これはあくまで例えの話で、同じ内容をChatGPTに聞くと、「生涯で日本を訪れた記録はありません。」と答えてくれます。AI技術が進むにつれてハルシネーションは減ってくるかもしれませんが、ゼロにはならないことは頭の片隅に置いておく必要があると思います。


まとめ:AIの言語理解の特徴


項目 人間の理解 AIの理解(GPT)
言葉の処理方法 意味を考えて理解する 確率的なパターンで予測する
学習の仕組み 経験・概念・感情に基づく 大量の文章データを統計的に学習
文脈の捉え方 状況に応じた柔軟な解釈 文章内の単語のつながりから判断
限界 不完全な情報でも推論できる 文脈を間違えることがある・事実でない情報を生成する

この記事のポイント
1. AIは言葉を「意味」ではなく「確率」で理解している
2. 次に来る単語を予測することで文章を作成している
3. 人間のように自然な文章を生成できるが、誤解や間違いも起こる
この仕組みを理解することで、「AIがどのように言語理解をしているのか」というイメージが湧くようになります。

次回の記事では、「なぜ曖昧なプロンプトだと、出力結果に差がでるのか?」に関してわかるような記事を作成予定です!

いいなと思ったら応援しよう!