キリコ・オカザリ・ヘイソク。祈りが込められた東北沿岸部の美しい紙細工たち。
こんにちは紅猫堂です。
今年も残すところ2ヶ月。神社などではそろそろ年末年始に向けて繁忙期に入る頃です。令和の世になったとはいえ、お盆や正月には地域色が色濃く出る事がありますよね。私の実家のあるあたりではお供えの下に「玉紙」を敷くのが当たり前だったのですが、これが地域限定だと知ったのはかなり大人になってからでした。
最近になってもうひとつの異文化と出会いました。
去年の暮れに北上川上流の十三浜にある「釣石神社」に行った時、半紙に美しい切り込みが入った神棚飾りを頂いたのです。
我が家ではこういったものを飾る習慣が無かったのですが、調べてみると、登米市豊郷町や塩竃市、南三陸町などで盛んにおこなわれているようです。
特に南三陸町では震災後に「きりこプロジェクト」が行われ、地元の方々の復興に一役買っていたようでした。
たった一枚の白い紙が、神棚を美しく華やかな祝福の空間に変える。伝承切り紙「きりこ」は南三陸の人々の精神文化をよく物語っています。
伝承切り紙とは「正月飾りや神楽などの宗教儀礼に用いられるものとして残っている切り紙」のこと。その多くは、儀礼が終わると燃やされて消滅してしまうので、後世に残ることはほとんどありませんでした。
南三陸町の家々の神棚は 、正月になると真っ白な紙に縁起物が切り透かされた美しいオカザリで華やかに飾られます。鯛や巾着やお神酒などを切り透かした紙は、神社毎に絵柄も違います 。どの神社のきりこも生き生きとして、命ある万物とともに在る祝福の心があふれています。
伝承切り紙は「切り透かし」「御幣」「網飾り」の3種類。岩手県南部から宮城県にかけての旧伊達藩の範囲にしか存在しないといわれています。「切り透かし」は、きりこプロジェクトに使われているように紙に模様を切り込み平面で飾るもの。「御幣」は神道の祭祀で用いられるもので2本の紙垂を竹などに挟んだもの。そして表紙の写真に使われている立体的な「網飾り」というのが、”東北地方にしかない”伝承切り紙なのです。
、伝承切り紙は神社から氏子へ配られるもの。多いところでは500もの氏子に配るために年が明けると翌年の分をつくりはじめるのだそうです
オカザリ:地域の特色が光る正月飾り
登米市をはじめ、宮城県各地には、キリコ以外にも様々なオカザリが存在します。地域によって素材や形、意味合いが異なり、それぞれの地域の文化や風習を物語っています
南三陸町や登米市の正月飾りであるキリコやオカザリは、単なる飾り物ではなく、人々の願いや祈りが込められた、貴重な文化遺産です。これらの伝統文化に触れることで、地域の豊かな歴史や文化を深く理解し、次の世代に繋いでいくことが大切ではないでしょうか。