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物欲クロニクル①

~西洋式毛鉤釣用竹棹

今から20年以上前、この雑誌に掲載されていた特集記事によりバンブーロッド(西洋式毛鉤釣用竹棹)に興味を抱いた。

雑誌の特集記事


フライフィッシング(西洋式毛鉤釣)で使用されるロッド(棹)の素材は現在カーボングラファイト(炭素繊維)が主流となっている。
軽量かつ弾性に優れるその特性は釣竿の素材としてこれ以上のものは無いと云えよう。
バンブー(竹)は懐古趣味的要素の多い、どちらかといえば性能よりも赴きを楽しむものと云えるかもしれない。
2000年に発刊されたこの雑誌の中で私が興味を持ったのは、バンブーロッドを製作する、あるビルダー(職人)の特集記事だった。
バンブーロッドの素材としてはトンキンケーンと呼ばれる中国産の竹が一般的なのだが、このビルダーは国産の「淡竹」を用いてロッド製作をしているという。
フライフィッシング用の竹棹は断面が鉛筆のような六角形をしているのだが、これは竹を繊維方向に正三角形に、かつテーパー状(先細り)になるように専用のカンナで削り出し、それを6枚張り合わせることで形成される。
淡竹(はちく)は茶筅などにも用いられる素材で、細い繊維が表面(外皮側)に寄って密集している。
中心側のほうは「ピス」と呼ばれる繊維の少ない部分になり竿の素材としてはよろしくない。
トンキンケーンはこのピスと呼ばれる繊維密度の小さい部分が少なく、釣棹の素材として最良とされている。
このビルダーは淡竹の外皮側のみを用いて製作するために、正三角形に削り出したスプリットケーンの中心側、ピスにあたる部分を削り取り、断面を中空にする「ホロービルド」という非常に手間のかかる製法で製作しているとのことだった。
当時としてはその際立った独創性に惹かれ、いつか竹棹を手にする日が来るならば、この人の創る棹を手にしたいと思った。
それから12年後、私はその棹を手にした。
今も私の宝物であり最高の相棒である。
最高のシチュエーション(サイトで尺ヤマメ)の時に手にしているのはこの棹でといつも思うのである。


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