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賃上げの方法

 こんにちは。
 
 今回は、中小企業が賃上げをするのに役立つ方法の一つを話してみたいと思います。中小企業勤務の方や、ご興味のある方向けですが、すでにご存じのようでしたらご容赦ください。

 昨今、賃上げの実施、賃上げの定着化などが政府、経済団体などから声高々と叫ばれています。

 連合(日本最大の中央労働組合の全国組織)は、今年の春闘で、賃上げ率の全体目標を5%とし、特に中小企業は6%以上の目標としています。

 一方、会員に中小企業の多い日本商工会議所の小林会頭は、「6%以上は中小企業には無理だ」との見解を示します。業績改善を伴っておらず、賃上げをするための原資がないためです。

 とはいっても物価高と言われ、人手不足により採用をするのも難しくなっているこの時代、企業は今後賃上げをしていかざるを得ない状況でもあります。

 それでは、中小企業が賃上げする、つまりは賃上げをするための原資を作るにはどうすればよいでしょうか?

 一つの方法として、労務費、原材料費等の価格転嫁を行うことで原資を確保するということがあります。

 中小企業の多くは、大企業などの発注側企業から発注を受けて、モノやサービスを提供し、発注側企業から代金を受け取ります。
 しかし、その受け取る代金に対して、モノやサービスを提供するために費やした労務費や原材料費、エネルギー費などは全額含められていないことが多いのです。つまりは価格転嫁ができていないということです。

 政府はこれを問題と見て、価格転嫁、適正取引の推進を行っており、毎年3月と9月に、中小企業とその発注元企業との価格交渉や価格転嫁等の状況を確認するための調査を行っています。

 しかし、最新の調査結果を見てみると、昨今増加する中小企業の労務費や原材料費、エネルギー費などのコストは約50%ほどしか価格に転嫁できていないことがわかります。

中小企業庁 価格交渉促進月間 フォローアップ調査結果の一部

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/dl/202409/result_01.pdf

 それでは、100%を目指して中小企業側が自社の労務費や原材料費、エネルギー費などを価格転嫁するにはどうすればよいでしょうか?

 一つの方法として、政府の推進するパートナーシップ構築宣言を利用することがあります。

 パートナーシップ構築宣言とは、企業が、発注側の立場として、下請企業等との共存共栄を目指すことを宣言するものです。
(なお、この「下請企業」という名称については、次回国会で「中小受託事業者」に改められる予定です)

 簡単に言うと、下請け企業をイジメずに公平公正な取引を行い、共存共栄を目指すということを宣言するもので、その内容には、下請企業との取引対価決定にあたっては、不合理な原価低減を行わないこと、労務費を適切に転嫁すること、原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すことなどが含まれます。

 つまり、パートナーシップ構築宣言をしている企業は下請企業に対して適切な代金を支払わなければならないわけです。

 これがどういうことかというと、下請企業が発注側企業からの取引代金について、買いたたかれている、適切に支払われていない等と感じるとき、その発注側企業がパートナーシップ構築宣言をしているのであれば、「御社はパートナーシップ構築宣言をしているのだから、適切に支払ってください
ということも言えるのです。(実際にそのように言った企業を聞いたことがあります)

  なお、自社の発注側企業がパートナーシップ構築宣言をしているかどうかは、以下のサイトで調べることが可能です。宣言企業は以下のポータルサイトでその宣言文を公表しています。

 実際に宣言をしている企業数については、2025年1月29日現在で、約59000社います。資本金3億円超の企業についても、1500社以上は宣言をしているようで、全ての企業とはいわずとも、発注側企業がパートナーシップ構築宣言をしている可能性は十分に高いと思います。

 また、いわゆる下請企業と言われる企業であっても、自社がパートナーシップ構築宣言をすることも重要です。
 
 自社が宣言することで、発注側企業に対して適正取引を求める説得力が増します。それとは別に、宣言をすることで多くの補助金の加点措置が受けられたり、日本政策金融公庫等の融資が可能になったりするなどのメリットもあります。

 さて、いかがだったでしょうか。参考になれば幸いです。

 最後に、この価格転嫁、適正取引の推進については、政府、公正取引委員会と力を入れているものですので、発注側企業がパートナーシップ構築宣言をしていないからといって下請企業は泣き寝入りをしなければならないというわけではないので、そこはご留意いただければと思います。

 
 ここまで読んでいただきましてありがとうございました!






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