不妊治療とキャリア もやっとしたこと

通ってるクリニックは仕事と不妊治療の両立を1番に掲げていて、朝かなり早くから診察も始まるし、スケジュールも出来るだけこちらの希望を尊重してくれるし、通院や病院での滞在時間が出来るだけ少なくなるよう工夫してくださっていて、不満を言いようがない。

でも少しもやっとしたことがあった。

先生、どうして夫にはありがとうって言うの?

通ってる病院では、初めての採卵周期の初回診察時には男性パートナーは必ず同席あるいはオンラインでの同席が義務化されている。その日は初めての先生にあたった。年配でクリニックでも偉い職位の男性の先生だ。

夫と診察室に入ると、その先生は、正面にいる私ではなく、斜め前にいる夫の方に体をまっすぐ向け直して「本日はお忙しいところお時間を作ってご来院いただきありがとうございます」と言った。

そこから先は血圧があがってしまって危うく聞くべきことが聞けないところだった。質問をメモしていて良かった。

初診の際も、2人で不妊ドックを受けたときも、その結果を聞いたときにも夫は同席していた。平日に2人で休暇を取って通院した日もあった。その時の女性の先生からはそんなこと言われたこともなかった。

会議をリスケした日も、繁忙期も、わたしたちは

もちろん、病院側としては同席を義務化している診察項目である以上、面倒なカスハラ防止のためにあらかじめ丁重に謝辞を言わないといけないといったプロトコルがあることは想像できる。だけど、私たち女性は義務も同席もなにも毎回登場しないと不妊治療はそもそも成立しないのだ。テレビ電話じゃ採血もエコー内診も出来ないからこの身を引っ提げて病院に行っているのだ。そしてそのために会社を休んだり、既にお子さんがいる人は子供を預けたり、フレックス勤務にしたり、急に打合せの予定を変えてもらったり、出張を断ったりし、すみませんすみませんと各所に頭を下げているのだ。なのに先生、先生は夫の何に頭を下げてるの?

2人が勝手に決めてやってること。誰にも謝辞なんて言われなくてよい

とどのつまり、不妊治療はカップルが2人で選択してやっていることだ。病院に行くことにしたのも2人の「選択」だ。どんなに身や心がしんどくても、会社で後ろめたい思いをしても、それが選択なのと同じで、義務化された診察に同席するのも選択。だから、別に病院は男性にも女性にも誰にも謝礼を述べたり、頭を下げる必要なんてないと思う。(頭をさげるくらいなら、不妊治療において片方が社会的に不利な立場に置かれる状況を変えられるよう医療業界団結して声を挙げて欲しい。)

母になれてもなれなくても無意識のバイアスに立ち向かってやる

先生に悪気がないことはわかっている。でも実は、こういう風に無意識に、悪気なく、そういう態度を示されるのが、誤解を恐れずにいえば「この国の働く女性の環境はまだこんなものか」とがっかりしてしまい、一番つらいのだ。特にいま通っている病院は、仕事と不妊治療の両立を大きく謳っている病院で、働く女性が沢山来院しているからこそ尚更悲しい気持ちになってしまった。

母になれるかどうかはわからない。なれても、なれなくても、この国で生きる私たちやこどもたちが無意識に決めつけで人に区別した態度で接することのない国にしたいと思う。自戒も込めて。その生涯の目標は変わらないだろう。




いいなと思ったら応援しよう!