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海の上のピアニスト

船で生まれ、一生船から降りずにいた天才ピアニストの話。

主演のティムロスが当たり役だったと思う。何より、その喋りが心地よかった。もちろん、演技も素晴らしかった。

本当にあんなピアニストがいるように思えたし、彼が行ったこともない土地の風景を語る場面では、自分がまるでそこにいるような気がした。

なにより、エンリオモリコーネの壮大で甘い音楽は、映画に相応しかった。名曲揃いで、自分でも楽譜を買って弾いてみたりもした。

主人公は船を降りないことで、現実の恋を結局諦め、ピアニストとしての安心をとった。

それは、外の世界に出て行く恐れだったと思うけれど、船が彼の世界のすべてならば、それはそれでアリだったのだろう。彼は、想像の世界の中で、いくらでも恋も愛も語れるのだから。

船という狭い世界にいかにも閉じ込められているように見えても、私達の現実の世界だって、自分の思いが作り出している限られたもので、それは、彼の船と同じなのではないだろうか。

船と共に一生を終えた彼は、そこで過ごせた時に抱かれて満足だったのだと、あの美しい物語を見終えて、そう感じた。





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