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本年施行の雇用保険制度改正(その4) 自己都合退職の給付制限期間の見直しについて
2月に入り、節分/立春が過ぎました。少し前には春の兆しが見えていましたが、また寒さがぶり返してきました。とはいうものの、三寒四温という言葉もある通り、確実に春は近づいています。
また、多くの企業の皆様は年度末も近づきつつあり、お忙しい時期になるかと思います。お体には気を付けて、お仕事を頑張りましょう!
さて、本年施行される、雇用保険制度の改正ですが、育児系で2回、そして第3回の前回は高年齢雇用継続給付の改正について記載しました。
今回第4回になりますが、本来先に論じるべきかとも思われる、本家本元の基本手当に関する話題です。
現在、自己都合退職の場合、基本手当を受給する際に申請後待期期間の後に2か月の給付制限があります。これが4月1日から改正されます。
今回はこちらの制度見直しについてご説明したいと思います。
なお、厚生労働省の資料については、以下のURLからご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001293213.pdf
【現在の基本手当の支給について】
詳細が記載されている厚生労働省(ハローワーク インターネットサービス)のURLは以下の通りです。
この中に以下の記載があります。
「雇用保険の被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職し、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職していただくために支給されるものです。」
この文書だけを見ると、基本的に会社都合による離職を想定しているような文書ですね。自己都合の離職には言及していないように思えます。
その事もあるのか、いわゆる自己都合の離職については、給付制限期間があったり、給付日数に差があるのが実情です。
たとえば、支給日数は以下のURLから参照できますが、
こちらの2.がいわゆる自己都合離職の場合の給付日数になります。1.のいわゆる会社都合(特定受給資格者、特定理由離職者)とはだいぶ差があるのが分かります。
また、以下の表を見ていただくと分かりますが、
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自己都合の場合、待期期間の後、給付制限が現状2か月あり、その後から給付を受けることができます。
つまり、自己都合で退職し、雇用保険の基本手当を受けようとする場合は、約3か月程度無収入であることも覚悟のうえという事になります。
ちなみに、5年以内に2回基本手当を受けている場合、給付制限は3か月となります。
【改定の趣旨】
最初に示したURLのPDF内に記載されていますが、
「労働者が安心して再就職活動を行えるようにする観点等を踏まえ、給付制限期間を見直す必要がある。」
との背景から、以下の改定が行われます。
離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限を解除。
※このほか、通達の改正により、原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。
ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヶ月とする。
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いろいろなニュース媒体や記事においては、どちらかというと給付制限期間の短縮が取り沙汰されているケースが多いですが、この書き方を見る限り、上記の背景を踏まえて、「教育訓練の促進」をメイン施策と据えて(給付制限を解除)、訓練がない場合においても1か月に短縮するよう付記する形です。雇用保険本来の趣旨に沿った施策である事が伺えます。
なお、5年間で3回以上の自己都合離職の場合は、給付制限期間は変わらず3か月となります。
【教育訓練の受講について】
前掲の厚生労働省の資料の「現状・課題」の所に記載がありますが、
(「※ただし、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合、給付制限が解除される。」)
実は現状においても、教育訓練の受講により給付制限の解除に関する要件は存在しています。今回の改定については、
教育訓練給付の対象となる教育訓練その他の厚生労働省令で定める訓練を離職日前1年以内に受けたことがある受給資格者
対象教育訓練を離職日以後に受ける受給資格者
が要件に加わり、いままでの指定された教育から自主的な教育訓練でも同様の対応ができるようになったのは大きな変更といえるかと思います。
【今後の見通しなど(考察)】
私自身もこのニュースを見て、最初実は単純に、
給付制限が1か月に短縮される → 離職者がより経済的に負担なく次の職場を探せる
というものと思っていましたが、もっと奥が深いものでした。
今回、4月1日からの施行により上記制限が緩和されて、自己都合離職者にとっては多少のメリットがあると思われます。しかし、基本手当の額や支給日数などは変わりません。
私自身、改めていろいろな資料・各種記事を調べてみましたが、やはりこの基本手当はあくまで「会社都合」での離職者向けを保護することが趣旨で、自己都合による離職者には国がどこまでカバーするのかというのはこれからも議論の対象になっていくと思われます。
現在ハローワークでの求職者において、
どのくらいの方が求職活動が行われているのか。
会社都合なのか自己都合なのか。比率はどの程度なのか。
年齢層はどの程度なのか。
男女比はどの程度なのか。
こういった実績もできれば公表いただいて分析を行ったうえで、最善の施策提言を期待したいところです。
会社の側からみると、今回の施策で自己都合離職の可能性が増えるかというとそうは思わないですが、優秀な人材の定着についてはやはり重要施策として必要かと思います。
また、よりよい採用の機会についても常にアンテナを張る必要があるかと思います。
いかがでしたでしょうか。
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次回もぜひお楽しみに!