働くシニアの年金のゆくえは? ~在職老齢年金見直しへ~
みなさまこんにちは。よこちょうです。
もう間もなく師走を迎える時期となり、寒さも増してきました。皆様お体の調子は如何でしょうか。
インフルエンザの流行が本格的になっている報道も聞かれておりますので、年も押し詰まりよりご多忙かとは思いますが、体調にご留意され年末を乗り切っていただけますと幸いに存じます。
さて、11月20日付日本経済新聞朝刊の、なんとトップに、働くシニアにとって切実な問題となりうる「在職老齢年金」の話題がありましたので、今回はこの話題を取り上げてご説明、考察をお届けしたいと思います。ぜひお付き合いください。
【タイトルネタの紹介記事】
本タイトルに関連した記事ですが、11月20日付日本経済新聞朝刊1面トップでご紹介されています。(会員以外の方は冒頭のみ参照可能です)
また、YahooニュースのこちらのURLでも紹介されています。
次項でご説明しますが、高齢者(65歳以上)で働いている方は、当然給与の支給を受けますが、同時に年金受給資格も得る事になり、実際に支給を受けられる方もいらっしゃると思います。
この場合、状況によっては老齢厚生年金に関し、支給の停止が行われる場合があり、このことを「在職老齢年金」と呼んでいます。この制約が緩和される見込みであるとの報道が今回の内容になります。
年明けの通常国会に提出される年金制度改正の関連法案に盛り込まれる方向のようです。
企業の人手不足が顕著になる中、働くシニアが増える事で、その意欲をさらに上げるための施策ですね。
そういえばですが、昨今103万円の壁の議論がお茶の間を賑わせていますが、この在職老齢年金も基準額に引っかからないレベルで働き控えってあるんでしょうかね?
【そもそも「在職老齢年金」とは?】
この「在職老齢年金」という言葉はよく色々な所に出現しますので、そういう給付制度(たとえば加給年金とか寡婦年金とかなどと同様に)があるのかなと勘違いする方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうものとはちょっと違うものです。
老齢厚生年金の受給権を得た方が、給与をもらって働いている場合に、本来支給されるべき年金が、給与の額によっては削減されてしまう事があり、この事象を「在職老齢年金」と呼んでいます。
今回のニュースは、その条件が緩和される可能性が出てきた事がネタとなっています。
【現在のルールはどうなっているのか?】
私が以前受験したDCプランナー資格においても、在職老齢年金ネタは出題ポイントとなっておりまして、さらに昨年度と今年度で基準額が変わった事もあり、私としても印象に残っている項目です!
現状のルールを具体的に説明しますと、
総報酬月額
(毎月の月収と、その月以前1年間の賞与の総額を12で割った値を足した額)老齢厚生年金の基本月額(加給年金などは除きます)
上記2点を加えた際に、50万円を超えてしまうと、超過分の2分の1が支給停止となります。
たとえば、総報酬月額35万円、老齢厚生年金の基本月額が19万円ですと、合計が54万円になりますので、超過分の4万円の2分の1、つまり2万円が支給停止となります。
最悪の場合は、支給停止額が基本月額を超えてしまうほど給与をもらっていると、老齢厚生年金が1円ももらえない事もありえます。
なお、老齢基礎年金については影響ありませんので、念のため。(厚生年金だけです)
ちなみに、2023年度はこの基準額「50万円」が「48万円」でしたので、少し緩和されました。
厚労省では、この基準額を62万円や71万円へ引き上げる案を中心に検討されているようです。
【働くシニアへの処遇について:考察】
今回、こちらの記事を読んでみまして、「まあそうだろうね」と思う部分と「うーん??」と思う部分が私の中では両方あります。
どういう事かというと、
企業の人手不足への対処として「シニア人材を活かす」事は当然の事で、それに見合う報酬が必要である事
厚生年金の「保険料」を長期間払っており、その金額に見合った支給は当然受けるべきである事
上記2点は論ずる必要すらない「当たり前の事」であり、支給されるべき年金が削減される「在職老齢年金」については納得がいかず、ひいては勤務のモチベーションが下がることも懸念される事はあるかと思います。
ただ、その一方で、
年長者が働く意義として、社会への貢献(後継者の育成や若い方への啓発活動など)がベースにあり、報酬の位置づけが低い方もいるのでは?
在職老齢年金の対象になるほど給与をもらっている方は、そんなにいないのでは?(おそらく1割程度)
給与をそれほどたくさんもらっていれば、年金もらわずとも生活には困らないのでは?
である事も、また事実なのでは?と思う所です。
この2つの事象をいずれもクリアするのは本当に難しい所で、現状の在職老齢年金の基準額を上げていく方向性は、妥当とみるしかないかなと思いますが、年金財政が将来に向けて厳しい事もこれまた事実ではあります。
たとえばですが、高齢者で給与が多い方は、年金をある意味「寄付」のような形で返上してもらい、その年金を返上した部分を所得から控除し(いわゆる寄付金控除みたいな形)、税金で恩恵を受けられる形にするなどの案って考えられないのかな~ なんて思ったりしています。まあ、国家財政もひどいですけどね。
とりとめのない話になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。今回話題とさせていただきました、退職後の年金系の話題も含め、働き方、人事労務関連など、相談先にお困りでしたら、ぜひ社労士法人JOYのお問い合わせからご相談下さい。
ぜひ以下のURLからお気軽にご相談下さい。
次回もぜひお楽しみに!