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プロダクトマネジメントの王道と隠し味: PMおすすめ書籍メタサーチと個人的隠れ推し本

◆ 誰へ何のための記事か?
○プロダクトマネジメントに興味がある方へ:
王道おすすめ書籍を明らかに

○PMの方へ:
マイナーだけど役立った個人的推し書籍をご紹介
隠れた個人的推し本を紹介してもらうきっかけに


サマリ

1)PMがおすすめする本として紹介数が多い書籍はこれらだよ

PMがおすすめするプロダクトマネジメント関連書籍の紹介数順ランキング

2)PMの役回り×サブスキル別に紹介数が多かった書籍はこれらだよ

役回り×サブスキル別に紹介数が多かったプロダクトマネジメント関連書籍

3)個人的隠れ推し本はこれらだよ

プロダクトマネジメント関連の個人的推し本 by @jouykw

執筆モチベ: 知識の体系化が進んでいる領域 / いない領域はどこか?

皆さんこんにちは、toC Fintech スタートアップでプロダクトマネージャーとして日々奮闘しております「じょー(@jouykw)」です。

プロダクトづくりに関して考えていることや学びを定期的に言語化して書き下したいと思い初めた note ですが、まだ世の中にデファクトスタンダードなナレッジがない & 仕事の実践の中で試行錯誤した暗黙知的なことをテーマに書いた方が世の中的にバリューがあるよなぁとテーマ選びに苦慮していると、そもそもこんな疑問にぶつかり立ち止まってしまいました。

「そもそもプロダクトマネジメントについて何が形式知として体系化され、何が形式知化されていないのだろう?」

車輪の再発明を避けたい・巨人の肩の上に乗っかりたい性分の私は、ある分野で must read な本や記事は漏れなく抑えたいし、悩んでいることに関してまだ見ぬ良書や記事があればそれを読んで思索を深めたいと思っています。
ところが探し始めてみると、個別に書籍や記事を勧めるものはあれど、この領域が全体観としてどのような書籍や記事が信頼されているか?の重み付けや枝葉末節を深めていくガイド的なもので自分的にしっくりくるものがイマイチ見当たらずに困りました。
というわけで、見つから無いのでければ自分なりにまとめてみよう!というのが本記事の前半の趣旨です。

それをまとめていると、次第に「なぜこの本が紹介されていないんだ、、、!?」という個人的推し本が思い出され、きっと今も同じ悩みを抱えているPMはいるはずだと書いたのが後半の個人的隠れ推し本紹介になります。

興味がある箇所についてどうぞご笑覧ください〜!

◆Appdneix
必読文献が浮かび上がる→引用マトリクスで複数の文献の関係と分布を一望化する 読書猿Classic
卒論を書く際に行っていた、参考文献リストからその領域での必読文献を整理するこちらの方法を思い出しながらまとめてみました。
新しい領域についての見通しをよくする上で非常に参考になる手法なので是非。

前準備: プロダクトマネジメントの役回り観点での整理

プロダクトマネジメント関連の書籍を雑多にリストアップするだけだと、書籍の立ち位置が分かり辛く見通しが悪いので、筆者の観点で独自に4つのカテゴリ分けを行っています。

プロダクトマネジメントの4つの役回り

1)決める:なぜ何の価値に取り組むかを決める
2)つくる:価値を果たすものをつくる
3)広める:価値を広める
4)動かす:誰がどうやるかを促し動かす

それぞれの役回りを果たす為のサブスキルとして、各スキルを研鑽する必要があるという階層構造で整理を行なっています。

◆ Appnedix
カテゴリ分け方としては
プロダクトマネジメントトライアングル
プロダクトの4階層
に沿った分類なども考えられましたが、
前者:やるべきことを進める上での個別のテクニカルスキルの観点
後者:プロダクトとして検討すべき成果物の観点
が強く、1プロダクトマネージャーがやるべき役回りという観点でざっくり整理した方が普段の筆者の感覚に近いのでそちらで整理しています

以下この整理に沿って、プロダクトマネジメントのおすすめ書籍としてどのような書籍が頻繁に紹介されているか?を見ていきます。

プロダクトマネジメントについて学ぶ王道: PMおすすめ書籍としての紹介数ランキング

PMおすすめ書籍に関して触れている紹介記事をリスト化し、各記事で紹介されているプロダクトマネジメントに関連する書籍の紹介数をカウントしたのがこちらになります。

PMがおすすめするプロダクトマネジメント関連書籍の紹介数順ランキング

プロダクトマネジメントの全体観を語る入門的な書籍や、各分野における不朽の名著が並びます。
個人的に目を引いたのは二点。一点目は入門書の並びに割って『ジョブ理論』が入っている点で、こちら私も大好きな書籍なのですが、他PMの皆さんもやはり推されているんだなぁというのが改めて可視化されて納得感がありました。
もう一点は『トヨタの製品開発』について多くのPMの方が推されている点で、リーンプロセスに影響を与えた原点でもあり日本が誇るものづくりプロセスのナレッジが、ソフトウェアプロダクトマネジメントへも脈々と受け継がれているんだなぁと思うと何故だか嬉しくなりました。

次に、前セクションのプロダクトマネジメントの役回り体系・サブスキルに沿って、各分野で頻出の書籍をまとめるとこうなりました。

役回り×サブスキル別に紹介数が多かったプロダクトマネジメント関連書籍

スプレッドシート上で各書籍の紹介数ローデータを見てもらえるとわかるのですが、「全体観」「つくる」「広める」「動かす」あたりの各サブスキルでは must-read 的な書籍がわかりやすく存在する一方で、自身が最近深掘りしたいなと感じている下記のようなテーマについてはデファクトスタンダードとなるような書籍はまだないのかも?というのが個人的発見でした。

決める:  ”プロダクト戦略” 的なテーマの書籍
つくる:  “価値定義/UXデザイン ~ デザイン与件整理の間” のテーマの書籍
広める: “PMM” っぽいテーマの書籍(PdM⇆PMM間の分担・連携など)

もしこのようなテーマの書籍や記事がありましたらご紹介 or 日々皆様が実践されていることや考えなどを記事などに落としてくださったら私が非常に喜びます m(_ _)m

※各書籍内容は既存の紹介記事がたくさんありますのでそちらへ譲ります
※ 『プロダクトマネジメント頻出書籍リスト(Spreadsheet)』に各書籍について紹介している記事リンクもまとめていますので適宜ご参照ください

プロダクトマネジメントに深みを出す隠し味を求めて

プロダクトマネジメントについて学ぶ際によく勧められている王道書籍について、メタサーチ結果を元にご紹介してきました。どれも非常に勉強になる書籍ばかりなのですが、こうしてよく紹介される本は入門書的な書物がどうしても多く、個別の状況や課題感に応じて深掘りした書籍や他分野の本はあまり紹介されない傾向にあるなとも感じています。
したがって、あまり頻繁に見かける書籍ではないんだけれど、実際のプロダクトマネジメントの実務をする中で個人的に密かに役に立てている、隠れた良書・推し本がPMの皆さんあるのではないか?と思っており、本記事の後半では個人的に折に触れて読んでいる自身のプロダクトマネジメントにおける「隠し味」的な書籍や記事をご紹介したいと思います。

「決める」の推し本: 『意思決定の理論と技法』

不確実性が高い状況下における戦略的意思決定に関して、どのようなプロセスで行うとリターンを最大化できるか?についてまとめた本です。
新卒時代に駆け出しのプロダクトグロース企画職として奮闘していた頃、「何をするべきかの意思決定を質高く再現性を持って行うにはどうすればよいか?」についてイマイチ勘所が分からずに悩んでいた際に、ふと学生時代に尊敬する方から勧められた本書を思い出して読み返したところ、社内の起案会議などでボードメンバーの方々から良く問われていたような暗黙知的な観点が改めて形式知として整理されており、非常に頭が整理されていく思いがしたことを覚えています。

PMの役割を突き詰めると、
・置かれた状況や与件を分析し
・どのような基本方針/ Option を
・どのような観点でチームが選び取ってリソースを張るべきか?を決める
またはこれらをチームとして成し遂げることをファシリテートする役割だと思っているので、どのように意思決定を行うか?という観点での考えを深める本書のような本は一冊読んで損はないでしょう。

◆ 特に好きな一節
成し遂げたいことと意思決定の間に横たわる問題(悩みの本質)を以下の3項目に分類する。
・不確実要素についての情報や判断:何を知っていて何を知らないのか。あるいは何がわかっていて何がわからないのか。
・選択肢・代替案:何ができるのか、どのようなオプションがあるのか。
・価値判断基準および複数の価値判断基準間のトレードオフ関係:何がしたいのか、どうなったら望ましいと思うのか、何が判断基準か。

籠屋 邦夫『意思決定の理論と技法―未来の可能性を最大化する』pp.10

「つくる」の推し本: 『クリストファー・アレグザンダーの思考の軌跡 デザイン行為の意味を問う』

デザインという行為がどのような営みなのか?について考察した書籍です。
デザイナーの方にデザインを依頼する前提として、企画における要求整理やイメージを伝えるために体験設計素案やワイヤーフレームを描く際、ユーザーの課題仮説を定義でき、どのような打ち手方針を今回検証すべきか?までが定義できたとしても、そこから具体的なワイヤーフレームやモックアップを作る際に、どのような要素がどのように配置されていれば目的に対して必要十分な体験設計や画面設計を作れるのか?というプロセスの中身はブラックボックスのように感じ苦手意識がありました。(というか今でも感じることがあります)

こちらの本では、建築・デザイン理論研究家のクリストファー・アレグザンダー氏の思想の概略をなぞりながら、デザインという行為のプロセスや、どのような形が良いものなのか?についてロジカルに秩序立てた整理の一例を示してくれており、それまで他社のアプリなどを貪るように触り、UIデザインパターンのストックを増やして、一番目的達成の為にそれっぽいものを作り上げるという本当に感覚的にやるしかなかったプロセスを、考えながら進めることができるものにしてくれました。

こちらの書籍と『オブジェクト指向UIデザイン』は、自分のような頭でっかちな人間が、デザインのプロセスに対しての解像度をグッとあげるのにとても役立った恩人のような書籍なので、似たような悩みを抱えている方は是非、、、!

◆ 特に好きな一節
磁場からの力と、その力に従うことで現れてくる砂鉄の形は、ちょうどコンテクストとその求める形との関係と同じだとアレグザンダーは考えた。
(中略)
コンテクストとは求める形に対して要求条件(力) を提示してくるものであり、その要求という力に形を適合させようとする努力のことを、私たちはデザインと呼んでいるのである。

長坂 一郎『クリストファー・アレグザンダーの思考の軌跡―デザイン行為の意味を問う』pp.20

「動かす」の推し本:『途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法』

こちらは国際協力という分野の書籍ながら、個人的にUXリサーチや組織のファシリテーションに対してたくさんの示唆があった、目から鱗な実践ナレッジ満載の playbook 的な書籍です。
国際協力援助の現場では、全く門外漢である人々が地域に入っていき、そこで何が起きているのか?なぜそのような現象に陥っているのか?を明らかにした上で、その課題をどのように「本人らの自発的な」行動によって改善していくか?について日々実践がなされています。
前半戦である正しい現状把握については、素朴で簡潔な事実質問を繰り返して正しいファクトに基づいた状況把握をすることの重要性が解かれており、質問の仕方次第で地域の人々から誤った情報が集まってしまう国際協力プロジェクトのリアルな失敗談がたくさん詰まっており、読み物としてもとても面白いです。
例えば「普段何を食べているか?」と尋ねた際の答えと、「では今日の朝ごはんは何を食べましたか?昨日の晩御飯は何を食べましたか?」と尋ねた際の答えがまるで異なってびっくり、よくよく聞いてみると前者の質問の仕方で答えた食べ物を直近で食べた日は全く記憶にないくらい実際は食べてなかったというエピソードはまさに人のバイアスの罠と質問の仕方の重要性を教えてくれ、UXリサーチのアンチパターンとして語られるような示唆が多分に含まれてます。
そしてこの本の面白いのが、当初は上記のように UXリサーチ文脈での学びが多い本と捉えていたのですが、社内を動かすファシリテーションの文脈でも非常に学びが多かったところです。私が取り組む仕事が領域横断の戦略推進組織にて様々な事業領域の皆さんを外部からサポートする役割に異動になった際、外からの視点で現場を正しく把握し、かつ現場の皆さんが自発的に戦略案件を推進するための立ち回りを学ぶ上で本書の内容が非常に参考になりました。
特に好きなのが「本気であること=対等な関係とは何か」というセクションの「最初からプロジェクトを持ち込むな:やるべき活動の根拠は、自分たちで見つけるように働きかける」というパートで、自助の実現には程遠い現状をいかに良くするか?を推進する上で、外からリードするだけではダメで、ファクトを当人たちで見つめ、自らで考えてもらい、自らで進めてもらうことを促すことで、少しずつ実際の物事が前に進むという趣旨の記述が、当時自分勝手に外から課題を見つけてプロジェクトを推進しようとしてはうまく進められずに空回りしていた自分にとって非常に耳が痛く反省させられました。以降自身がプロジェクトをリードする際にも、外からサポートする際にも折に触れて読み直して参考にさせて頂いている大事な一冊です。

◆ 特に好きな一節
「問題は何か?」と改めて問われれば、普段それほど深く考えていなくても何かしら問題を挙げなくてはならなくなる。
(中略)
次の「原因は何ですか」は、さらにまずい質問だった。つまり「なぜ」と聞いてしまった。因果関係の分析ほど難しいものはないにも関わらず、これまた尋ねられた方は、何か答えないわけにはいかない。

和田 信明, 中田 豊一『途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法』pp.267

おわりに: 皆さんの隠し味はありますか?

プロダクトマネジメントについてこれから学び始める方や、ある分野を深掘りしてみたいと思った方、ちょっとマイナーめの良書に出会いたいPMの方々にとって少しでもお役に立てたのなら幸いですm(_ _)m
またプロダクトマネジメントについて日々実践し思索を深める他PMの皆さんの隠れ愛読書や記事についても知りたい & 日々の実践内容についても雑談交流したいなと思ってますので、対面でお会いした際や Twitter (@jouykw)へ是非教えてください!

Appendix: プロダクトマネジメントに関するPMおすすめ書籍紹介頻出リスト

※紹介記事は機械的なルールに則って筆者の目検によりリスト化されており網羅性を担保するものではありません(この紹介記事漏れてるよ!この紹介記事もカウントに加えて!みたいなものがあったら教えてください)
※単にPMとしてのおすすめ書籍記事内で紹介されている数が多いだけで、各書籍の内容の良し悪しについて評価・判断するものではありません
※紹介数が少ない良書や、紹介されていない隠れた良書もたくさんあるはずで、むしろそれを推したくて & もっと知りたくてこの記事を書いておりますので、ぜひ皆さんの隠れ推しも教えてください


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