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◇古本屋での予期せぬ再会(その4)


ここからの舞台は、ベースボールの本場アメリカに。
『魔球の正体』という、ボクが発見した「ジャイロボール」という球種について書いた本がある。
こちらも村上晃一さんに編集を担当いただいた。
ただこの本、日本国内ではなく、著者のまったく予想しなかった活用法を思いついた人物がアメリカにいた。

◇『魔球の正体』ベースボール・マガジン社刊
https://www.amazon.co.jp/%E9%AD%94%E7%90%83.../dp/4583036728

事件は、2006年12月に起きる。
松坂大輔投手が、西武ライオンズからポスティングシステムを使ってメジャーに挑戦することが決まったオフシーズンのことである。
この『魔球の正体』の中で、松坂大輔投手はジャイロボールという球種を投げている可能性がある、とボクが指摘する部分があった。


ジャイロボールは、バックスピンストレートに比べ、空気抵抗が小さく、打者にとっては”伸びてくる”ような錯覚を与える魔球?

ちょうどこの年の春、第1回WBCが開催された。このはじめての野球の世界大会で、みごと日本が世界一の栄冠を勝ち取り、松坂投手はチームのエースとして活躍、3勝0敗、防御率1.38でMVPに選出されていた。

また、この大会の決勝ラウンドの舞台はアメリカ。これにより、当然彼は、本場のベースボールファンにも認知されることとなった。
そして、そのオフシーズンに、世界一になったJapanのエースが、魔球をひっさげ来シーズンからメジャーリーグに挑戦!・・・というニュースが日米の野球ファンの関心の的に。


スプリングキャンプの松坂投手の動向は、日米の野球関連メディアだけでなく、ワイドショーなどでも連日放送される騒動に!

実はこれには、仕掛け人がいた。
松坂投手の代理人のスコット・ボラス氏である。
このボラス氏が、先に述べた、拙著『魔球の正体』の思わぬ活用法を思いついた人物である。
彼は、メジャーリーグの各球団との交渉の席で、自分のバッグにこの本を忍ばせていたというのである。
それも、原著(しかないだろうけど)の日本語版を。
彼は交渉の席で、こう切り出したのだと。

「いいか、よく考えてくれ。これまでの優秀な投手とは、次元が違うのだ。Daisuke Matuzakaは魔球を投げているんだぞ。その魔球を駆使して、メジャーやキューバ打者をねじ伏せることのできる才能を持った唯一無二の投手なのだ。本当にこの提示額で後悔はないんだねぇ?」。
結局、交渉先の権利を勝ち取ったボストンレッドソックスが用意した年俸は、5年契約の60億円!

同じ初速のボールであっても、空気抵抗の小さな4シームジャイロは、ホームベースへの到達速度が速い!

◇松坂大輔。レッドソックスと大型契約
https://column.sp.baseball.findfriends.jp/...

なのにその後、敏腕エージェントのスコット・ボラス氏から、著者のボクにはなんの連絡もなし(そらそうかぁ・・)。

ただ、このジャイロボール騒動は、一度付いた火がこれで鎮火するどころか、2007年のメジャーリーグスプリングキャンプでさらに激しく燃えさかることになるのである。

次回に続く------

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