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【おかしな縄文】人面付岩板2

奥三面遺跡群元屋敷遺跡の人面付岩版2

岩版とは

みなさんは、岩版がんばんと聞いて、どんなものを想像するでしょうか?
すでに、下記かきしるしているので、まだの方は、こちらをごらんください。

おく三面みおもて遺跡群いせきぐん元屋敷もとやしき遺跡からは、顔の表現を持つ岩版が出土しました。
人面付じんめんつき岩版がんばんです。

元屋敷遺跡の人面付岩版は、どんなものなのか、紹介していきます。

元屋敷遺跡の人面付岩版2

元屋敷遺跡の人面付岩版2

写真の人面付岩版2は、文様から縄文時代晩期前葉(約3000年前)のものです。

素材は、凝灰質ぎょうかいしつ泥岩でいがん。高さ13.7cm、幅8.2㎝、厚さ5.7㎝、重さ321.2g
マグカップぐらいの大きさです。見た目より重さがないので、初めて持つとと「あ、軽いんだ」となります。

タマゴ形で、口を連想させるあなや頭部として区切りのあるような文様もんようから顔面表現を思わせます。
頭部全体を表現するためか、表裏おもてうらにつながる横方向の直線をりこんでいます。また、前面には、頭部に三角文さんかくもんきざまれています。
シンプルな顔面表現になっているので、人面付岩版1を見ていないと、顔面とは意識できないでもない気がします。ただ、胴部文様が表裏同じであるのに対して、頭部と想定される部分は表裏で違う表現になっていることから顔面表現であると推測できます。

やだ。。。直感の後付けみたいな感じですね。

元屋敷出土の人面付岩版2の裏
人面付岩版2の文様

正面側しょうめんがわ胴部どうぶには、中心に、縦方向の一本線がりこまれています。
縦線で対称たいしょうになるように、左右に同じ文様が使われます。
両端がくの字になってる文様です。縄文時代晩期前葉の土器文様で、三叉文さんさもんから派生はせいした文様です。長さが短く見える錯覚さっかく棒線ぼうせんのような文様です。
三段あります。
また、両端くの字の文様の間に楕円文だえんもんほどこされています。
かどのある文様と円。。。
素材も石なのに、やわらかみを感じさせる。
縄文人のセンスを感じさせてくれます。

ただものじゃない感がいいです。

人面付岩版2の裏の文様

裏側の胴部文様も表側とまったく同じです。
人面付でない岩版や土版は、基本的に表裏で同じ文様なので、この点は、他の岩板とおなじ意識で作られていることが分かります。

人面表現があるものの、土偶とはまた違ったルールがあることを想起させられます。

やはりあります。。。

底面に穴。へこんでます。

人面付岩版2には、底面にへこみがあります。穴があります。人面付岩版1(https://note.com/joumon_note/n/n09100a456bec)は、自立しないのですが、人面付岩版2は厚みがあり、底が平らで自立します。
そして、底にシンボリックな穴があります。

顔面表現と底の穴。手足は無いものの、人体をしているようです。

変形行為

表側の変形行為。黄色は孔をあけている所。緑は打ち付けて欠けた所。
裏側の変形行為。黄色は孔をあけた所。

人為的じんいてきに、元の形から変えた痕跡こんせきがあります。正面側に2ヶ所、裏側に5ヶ所に凹んだあながあります。完全に人為的とは断定できない感じですが、文様とも言いがたい部分にあります。
また、裏側に大きな孔があるのですが、一見、表の口表現のように回転かいてん穿孔せんこうしたようにも思えるのですが、楕円文だえんもんとの関わりや作業した痕跡こんせきなど不明瞭ふめいりょうな点が多いので、人為的な行為であると断定できません。

頭頂部。たたいてれてる。

他に、完成後に、表側胴部(前掲写真の緑の線部分)と頭頂部(水色の線部分)でたたかれた痕跡こんせきがあります。
敲きすぎて、れてしまったようです。
割れた痕跡から、表の胴部を敲いて、割れて、頭頂部を敲いて、割れたという2段階の破壊はかい行為が確認できます。

儀式ぎしきで敲く行為があって、行き過ぎて割れたのか、壊すつもりで割ったのかまでは、なかなかに断言しづらいですが、縄文人の意思によって敲く行為が行われていたのは間違いないです。

終わりに

人面付岩版2は、だいぶ簡略化かんりゃくかされた顔面表現(口の表現と頭部の区画線くかくせん)があるだけですが、底面に凹みというか穴があり、岩版に人をした表現を加えた道具であることがうかがえます。
また、人面付岩版1の文様と比較すると、人面付岩板2のほうが新しいと考えられます。
人面付岩板1から少し時間がたったことにより、儀式や道具の意味合いが簡略化されているのかも知れません。
ただし、人面付岩版の役割としては、なにかをたたくということのようです。

人面付岩版1・2の痕跡から、敲くという行為を行うことが目的のようです。つまり、土偶とは、違う道具と推測されます。

同じような人形ひとがたの土偶とは違う儀式、共通認識ストーリーを、縄文人がもっていたんだなということが推測されます。

縄文人が大切にした思いをのせた道具が、人面付岩版であることは、確かなのです。
みなさんは、みなさんの大切なものでどんなことをしていますか。そこには、もしかしたら、縄文人に通じる思いがあるかもしれません。
言い過ぎですかね?

参考文献

八木勝枝2002「第Ⅴ章 遺物 5石器・石製品 C(29)岩版」『朝日村文化財報告書第22集 奥三面ダム関連遺跡発掘調査報告書ⅩⅣ 元屋敷遺跡Ⅱ(上段) 本文編』 PP.305・306 新潟県朝日村教育委員会・新潟県

斎藤和子2001「岩版・土版の身体表現についてー土偶との関りからー」『人類学雑誌』108巻2号 pp.61~79 日本人類学会

稲野彰子1983「岩版一研究動向」『縄文文化の研究』9 pp.102~113 雄山閣

稲野彰子1990「土偶と岩版・土版」『 季 刊 考 古 学』30 pp.75~77 雄山閣

こちらもお読みいただくと、より楽しめますので、よろしくお願いいたします。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。奥三面遺跡群のことを通じて、あなたの縄文ライフの一助になれれば、幸甚です。

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