【おかしな縄文】人面付岩板3
奥三面遺跡群元屋敷遺跡の人面付岩版3
岩版とは
みなさんは、岩版と聞いて、どんなものを想像するでしょうか?
すでに、下記に記しているので、まだの方は、こちらをご覧ください。
奥三面遺跡群元屋敷遺跡からは、顔の表現を持つ岩版が出土しました。
人面付岩版です。
元屋敷遺跡の人面付岩版は、どんなものなのか、紹介していきます。
元屋敷遺跡の人面付岩版3
写真の人面付岩版3は、文様から縄文時代後期後半(約3500年前)のものです。
素材は、頁岩で、自然礫そのままの形を活かしています。高さ14.9cm、幅5.3㎝、厚さ1.8㎝、重さ233.1g
電話の受話器ぐらいな感じです。顔部分を耳にあてたら、なんかささやいてくれるかもです(おかしい人と思われるので、しませんけどね)。
短冊状です。顔面部分と反対の下側が折れています。わざとなのか、はじめから折れていたのかは、判断できないです。
顔面表現するために、顔面部分以外が一段低くなっています。もともとがこのような素材であったことも考えられますが、顔面部分直下に剥落した痕跡があることから、顔面の輪郭を線で彫りこんで、余計な部分を剥離させた可能性が高いようです。
顔面部分には、中央よりやや上に横方向の直線が彫りこまれています。横線が眉の表現のようで、線の中央から下に向かって、鼻の表現があります。
おでこ、鼻、目はだいたい同じ高さで、顔部分が磨かれ、くぼめられています。目や鼻はまず、線で描かれて、まわりを磨き、一段低くしました。口は、低くなった部分に彫りこんでいます。
顔面表現は、同時期の土偶の顔面表現と同じです。
T字状になる眉鼻、コーヒー豆のような目。
この人面付岩版は、土偶なのでしょうか。
変形行為
人面付岩版3では、人為的に、元の形から変えた痕跡は、はっきりとは確認できません。
一応、下部が折れてはいるのですが、故意か事故かはっきりしません。
恋なら、自己もふくまれるのですが、
この場合、落下事故や製作過程での事故、素材採取時からといった、縄文人の意図しないことでの欠損は、変形行為としてはカウントできません。
終わりに
同時期の出土品の中で、頁岩製のものには、線刻礫があります。
線刻礫での人体表現は、体の部分を表現するものが多く、顔面表現だけの人面付岩版3は、線刻礫とは別のルールの中にありそうです。
そして、線刻礫にも、格子目文や弧線といった独特の文様があり、文様の内人面付岩版3は、やはり線刻礫とは違うと考えられます。
また、土偶と同じ顔面表現ですが、手足が省略されています。また、土偶には文様が背面に施されますが、この人面付岩版3には、文様もありません。
土偶は、手足や頭を壊すことに意義があるのではないかと推測されていますので、手足がないといった点からも、この人面付岩版3は、土偶と同じ役割ではないと考えられます。
そこで、あてられたのが、人面付岩版でした。
しかし、他の2つの人面付岩版とは、時期も使用方法も違います。
人面付岩版1・2のことは、上記をご参照ください。
人面付岩版3は、敲いての変形行為が認められないからです。
人面付岩版1・2は、なにかを敲く行為が伴っていました。
では、人面付岩版3はどのような道具だったのでしょうか。
これは、妄想段階で、更なる検証が必要なのですが、
縄文時代後期以降の石棒の仲間だったのではないでしょうか。
縄文時代後期からの石棒は、小形化し、杖のような威信材としての役割、または、盛装の一部のような役割が想定されています。
この人面付岩版3も、縄文ファッションの一部として身に着けられていたのかもしれません。
すこし飛躍しすぎた考えですので、これは妄想としてお楽しみいただけたらと存じます。
知れば知るほど、謎が湧き出すのが、縄文時代の道具です。
不思議な道具です。
人面付岩版について、みなさんはどんな感想を持ちましたか?いろいろとお聞かせいただけたら、うれしいです。
参考文献
八木勝枝2002「第Ⅴ章 遺物 5石器・石製品 C(29)岩版」『朝日村文化財報告書第22集 奥三面ダム関連遺跡発掘調査報告書ⅩⅣ 元屋敷遺跡Ⅱ(上段) 本文編』 PP.305・306 新潟県朝日村教育委員会・新潟県
池田淳子2002「第Ⅴ章 遺物 5石器・石製品 C(22)石棒類」『朝日村文化財報告書第22集 奥三面ダム関連遺跡発掘調査報告書ⅩⅣ 元屋敷遺跡Ⅱ(上段) 本文編』 PP.286~289 新潟県朝日村教育委員会・新潟県
斎藤和子2001「岩版・土版の身体表現についてー土偶との関りからー」『人類学雑誌』108巻2号 pp.61~79 日本人類学会
稲野彰子1983「岩版一研究動向」『縄文文化の研究』9 pp.102~113 雄山閣
稲野彰子1990「土偶と岩版・土版」『 季 刊 考 古 学』30 pp.75~77 雄山閣
こちらもお読みいただくと、より楽しめますので、よろしくお願いいたします。
ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。奥三面遺跡群のことを通じて、あなたの縄文ライフの一助になれれば、幸甚です。