【総天然色】虹怪獣 バエラ

「この辺かな?」

アキコは自撮り棒を伸ばすとインカメラを起動して角度を調整する。
周囲には自撮り棒を構える集団や、一眼レフを構える者もいた。

「来た!」

遠くの女子大生が声を上げる。空の彼方から放射状の“虹”が現れた。

「キャーッ!」「せーの、チーズ!」「ピース!」

アキコも自撮り棒を構えるが、まだシャッターは押さない。絶好のシャッターチャンスを静かに待つ。
やがて“虹”から触手が現れた。一部は荷物をまとめ立ち去り始めたが大多数は更なる熱狂に包まれた。

カシャーッ!カシャーッ!

次々とシャッター音が鳴る中、触手はアキコのすぐそばにいた金髪の男を巻き取った。

「や、やべっ……助けっ」

男は虹の中へと連れ去られて行く。

「今だ!チーズ!」

カシャーッ!小顔に見える角度の笑顔とだらりと垂れた男の腕、そして綺麗な虹。最高の写真だ。

「いいねいただき!」

アキコはガッツポーズを決めながら触手に巻かれまいと走り出した。



#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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