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ひと昔前はデジタル時計の方が高価だったらしいぜ

 第二種殺しの免許ライセンストゥキル保有者は、自動火器に加えてある種の爆発物と毒物も仕事で扱うことができる。おれはスイッチを握り込む。
 ドアの蝶番が吹き飛んだ。

 おれはご機嫌だった。全額前払いという好条件の救出任務を請けたのだ。それも指名で。調子に乗って一人でメインフロアに忍び込み、強襲をかけた。アサルトライフルとかサブマシンガンを撃ってくるやつらをすみやかに制圧して、神経質にあちこち巡る。救出対象はどこだ?
 向こうで、誰かが手を振り上げている。投げナイフか、グレネードか。反射的に頭を撃ち抜いた。

 わん、と低く残響が巡った。
 そして静寂が戻る。
「あっ」
 焦って撃ったそいつは非武装の少女だった。

 おれはベルトの見えやすいところに固定した殺しの免許証を左手で押さえた。違反点数いくつだ? もしかして一発免停じゃないか? またクソ辺鄙なド田舎の、殺しの免許センターまで行かなきゃならないのか。

 埃っぽくざらついた思い出が蘇る。殺しの免許合宿で顔を合わせた教官の悪人面。クソいけすかない乳臭い同期のガキ。ボロい強襲車と、汗臭いヘルメットとベスト。

 フラッシュバックが途絶える。
 薬莢が落ちて、いやに澄んだ金属音をする。

 民間人の副次的被害は許されない。こいつが救出対象ならいいのになと思った。少なくとも、仕事が失敗するだけで済む。
 目が合った。

「ありがとう、ジョー」
 少女は花開くように微笑んだ。おれはジョーではなく、しかも、時間を逆に生きるみたく死から蘇る友達はいなかった。
「やはり貴方は来てくれたね。これで本当に仕事はおしまい。同志に報酬を振り込ませるよ」
 さっきみたいなオーヴァーアクションで肩を叩かれる。
「ああ、貴方にとっては初対面か……それなら、こういう終わり方はどうかな。貴方にとっては始まりだ」

「はじめまして。私、ガラス。貴方は?」
「ジョーだ」
 最初に思いついた偽名を告げた。

【つづく】

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