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劇団☆新感線いのうえ歌舞伎「バサラオ」当日券で焦る

全97公演のバサラオも、あと数公演で終わりだねーという時期になった。花粉症と闘いながらチケットの先行予約に片っ端から応募し、真夏の暑い新幹線のホームを駆け抜けて博多座に通い、朝晩の涼しさを感じつつフェスティバルホールへ向けてドーチカを疾走する幸せな日々ももうすぐ終わりである。明治座は我慢した自分を褒めたい。偉い、よく堪えた、自分。

2024年の私は完全にバサラオ中毒である。もはや病気である。

病気なので、先日、気づいたらフェスティバルホール当日券の申し込みボタンを押していた。これまで散々抽選で外れ、先着で敗れ続けていたのに、なんと販売開始一発で繋がり、買えてしまった。うちの弱々Wi-Fiにも関わらず、なんでだ。え、どうしよう。明日の公演なのに、家族にも何も言っていない…。

しかし当たったのだから、これはきっとなんかの神様が行けと言っているのだろう。日々仕事をしながら家族の食事や弁当を作り、掃除洗濯をし、麦茶を作り、ゴミを分別し、うさぎのフクちゃんのお世話から夫や子ども達の雑談・相談相手を務め、浮気もせず不倫願望もない良き妻、良き母の私である。ちょっとくらい家族に黙って追いバサしても罰は当たるまい。

そして幸いにもマチソワある日の昼公演である。開演時間が12時と早いので、「ちょっと仕事の資料を探しに出かけてきまーす」というテイで朝食後さり気なく外出し、何食わぬ顔で夕刻戻ってくるという完全犯罪も夢ではない。

パンフレットにあった麗しいヒュウガ様の姿とともに「ようこそ欲望の奈落へ」というフレーズがちらりと胸をかすめた。こうなったらもう欲望の奈落まで!ちょっと!!行ってきます!!!

当日券での入場は開演1時間前集合なので、少し早めにフェスティバルホールのガラス扉の外で待つ。目の前には推しの名前が入ったミニ幟が立っている。この推しの名前4文字を見ただけでドキドキ興奮してしまう自分は、やはりどこかおかしいのではないだろうか。開演前からこんな危険な状態では、上演中に心の臓が止まるやもしれぬ。もう、この推しの名前4文字だけについて延々と語るブログが書けそうな気がしてきた。

高ぶる気持ちを落ち着けるために、スマホに保存しているうさぎのフクちゃんの画像を眺める。

うさぎのフクちゃん(食事中)


間の抜けたフクちゃんの画像で高揚する思いをなんとか静めている間に、いよいよ当日券の呼び出しである。ガラス扉が開けられ、入った順に1列で並ぶ。本日のラッキーガールは私を入れて総勢12名。恐らく今年の運を使い果たした12名である。「予約どこでやりましたー!?家ですか?外出先?スタバのWi-Fi速くないですかー!?」などおしゃべりしたい気持ちをグッと堪えておとなしく自分の引き換えの番を待つ。きっと皆さんも当日券に当たった喜びを静かに噛み締めていらっしゃるに違いない。話しかけるのは不粋と言うものだ。

当日券を購入した時点で、すでに席の割り当てはシステム上決まってるのかな?と思っていたが、受付のお姉さんは上から順に入場チケットを切り離し、並んだ順番に引換券と交換している様子である。

私のもとにやって来たチケットは、超前方の列ではないものの、通路横のとても見やすい素敵なお席であった。良かった。確実に今ここで、今年の運は使い果たした。間違いなくルマンドの配信は外れるだろう。

開演15分前に視界をクリアにするという評判の「速攻ブルーベリー」を持参した水で飲む。以前、水を忘れて慌てて水なしで飲み込み、胸の真ん中あたりに引っかかったまま開演となったことがあったが、サキド様のド派手な登場シーンにびっくりした瞬間、食道を通過して行った。さすがのサキド党である。もはや観劇やコンサートには欠かせない存在となった「速攻ブルーベリー」だが、唯一困った点はその効果がいまひとつ良く分からないところである。気は心である。

思い起こせば、夏休みの博多座千穐楽の日、朝の7時から娘と2人で当日券を求めて博多座前に並んだのだった。前の前にいらっしゃった方で当日券が完売し、結局立ち見ドセンという立ち見の中では最高の席で観劇したことも今では良い思い出である。博多座のスマートな男性スタッフさんが立ち見の我々にも煎餅を手渡してくれ、「斬歌党のお兄さんじゃないのかよぅ!でもありがとう!」と複雑ながらも嬉しかったのも今では良い思い出である。

ああ、バサラオ。良い思い出しかないな。


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