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【Zatsu】イライラとゲラゲラの境界で2
引き続きオバチャンズについて考える。
彼女らはものすごい集中力と確固たる世界観を持っていると思う。でも、時としてそれがマイナスに働いてしまうこともある。周りが見えなくなるときがあるんだ。
休日の昼下がり、おれは電車に乗っていた。あいにく満席だったので、仕方なくつり革につかまりながらボーっとする。しばらく行くと、途中駅でおれの前の席が2つ空いた。やれやれと思って、背負っていたバッグを下ろしかけた瞬間、向こうからオバチャンが走ってきて、おれの前の席に滑り込む。
ウソでしょ、結構な距離あったぞ……
なら隣りに座ろうかと思いきや、
「加藤さ~ん、ここあいているわよ~」
離れたところにいる仲間に向かって叫ぶんだ。あ、向こうから前傾ダッシュで誰か来たッ! お前か、加藤ってのは😱
この状況でおれ、座れないです。そんな勇気ない。座ろうもんなら、言葉攻めにあっちゃう。ズバズバといろんなこと言われちゃう(言われたい)。
けれど、この人も、たぶん最初からこういう破天荒なキャラクターではなかったはずなんだ。なにかきっかけがあったのかな。高校生でこういう光景ってあまり見ないでしょ。それがいつしか「まあいいか」っていう考えが定着し、覇道を歩み始め、さらに進むと「だって、しょうがないじゃない」になる。こうなるともう、アキ子和田である。
だいぶ前だけど、自宅近くの駅のホームで3人のオバチャンズがおれの前を歩いていた。大声で笑いながら、横一列になってタラタラと歩いている。
「こいつら邪魔だな」と思いつつ、うしろから追い抜きにかかった瞬間、真ん中の女性の髪に目がいった。髪を束ねていたのはゴムじゃなく、なんと針金だった。ほら、おせんべいとかの袋をしばるひらべったい針金入りのやつ、あるでしょ。あれなのよ。
(オイオイ、かんべんしてくれよ、使い方間違ってるぜ)
そいつらを追い抜いたとき、どんな顔しているのか見てやろうと思い立った。振り返る。そして、その真ん中の針金女性が自分の母親だったことに気づいた瞬間の虚無感たるや。
オレ、無言のまま針金を指差す。
すると母は答えた。
「だってしょうがないじゃない」と。