SARS-CoV-2 RBDブースターワクチン接種の延長により、マウスの体液及び細胞の免疫耐性が誘導されました。

【注目すべき点】

  • 長期間の免疫により血清中和活性が低下しました。

  • 長期間の免疫により胚中心形成が低下しました。

  • 長期間の免疫によりCD8+T細胞の活性化が低下しました。

【まとめ】

  • 中和エスケープ変異を有するSARS-CoV-2亜種の出現が相次ぐ中、ワクチンブースターの反復使用が検討されているが、その予防効果や副作用は未だ殆ど明らかになっていません。

  • 我々は、Balb/cマウスを用い、RBD(receptor binding domain)ワクチンブースターによる長期接種と従来の免疫戦略による免疫応答を比較検討しました。

  • また、CD4+及びCD8+T細胞の活性化を著しく低下させ、これらのT細胞におけるPD-1及びLAG-3の発現を増強させることが明らかとなりました。

  • メカニズム的には、RBDブースターの長期接種が、適応免疫寛容を促進することにより、保護免疫記憶を覆すことが確認されました。

  • この結果は、SARS-CoV-2ワクチンのブースターを継続的に使用することの潜在的なリスクを示し、世界的なCOVID-19ワクチン接種強化戦略への直接的な示唆を与えるものです。


➡2023/01/16 15:43追記:

【考察】

  • 現在、COVID-19に対するワクチン接種が世界中で推進されていますが、新たに出現したSARS-CoV-2亜種株に対する持続的な防御が絶えず課題となっています。

  • ブースターワクチンを追加接種することにより、防御免疫反応を再刺激出来ることが臨床的に証明されています(Chengら、2022年、Gruellら、2022年)。

  • このようなワクチンによる免疫反応の再確立がブースターの継続適用によって繰り返されるかどうかは疑問視されているが、現時点では殆ど解明されていません。

  • ここでは、Balb/cマウスモデルを用いて、従来の免疫コースでRBDワクチンブースターを繰り返し接種した場合と、延長接種戦略で接種した場合の効果を比較検討しました。

  • その結果、通常接種で確立した体液性免疫と細胞性免疫による防御効果は、拡張接種コースでは共に大きく損なわれていることが分かりました。

  • 具体的には、長期間のワクチン接種により、RBD特異的な血清抗体の量と中和効果が完全に損なわれただけでなく、長期間の体液性記憶も短縮されました。

  • これは、脾臓胚中心B細胞およびTfh細胞の数の減少と共に、胚中心反応における免疫耐性と関連しています。

  • 更に、拡張免疫によりCD4+及びCD8+T細胞の機能的応答が減少し、メモリーT細胞の集団が抑制され、Te亜種細胞におけるPD-1とLAG-3の発現が亢進することが示されました。

  • また、Treg細胞の割合が増加し、IL-10産生の有意な上昇を伴っていることが観察さ れました。

  • これらの結果から、RBDブースターワクチンの反復接種は、従来のワクチン接種コースで確立した免疫反応にマイナスの影響を与え、適応免疫耐性を促進する可能性があるという重要な証拠が示されました。

  • 我々の最近の研究では、RBDワクチンの3回投与コースは、Balb/cマウスモデルで4ヶ月間、体液性および細胞性の両方の免疫保護を得ることに成功しました(Gao et al.、2021)。

  • 本研究では、その後の同じワクチンの4回目の投与により、RBD特異的中和抗体の産生を引き続き刺激し、その血清レベルは少なくとも6週間持続することを見出しました。

  • これらの知見は、SARS-CoV-2変異体に対するPfizer社製ワクチンの4回目の接種による中和効果の報告(Tanne, 2022)と一致するものでした。

  • しかしながら、同じワクチンブースターを追加接種し、同様に増強された、或いは少なくとも持続的な免疫応答を誘導しようと試みたところ、全体の免疫応答の明白な減少が観察されました。

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