SNSでの主張に反して、Pfizer社の二価ワクチンは虚血性脳卒中のリスクを高める可能性が極めて低いことが明らかになりました。
【主張】
Pfizer社製COVID-19二価ワクチンで脳卒中が起こる。
【詳細な評定】
裏付け不足:
ある特定の医薬品監視システムが提供する安全シグナルは、実際のリスクが存在すると結論づけるには不十分です。
モニタリングシステムは感度が高くなるように設計されており、そのため時折誤報が発生することがあります。
更なる分析および他のシステムとの比較が必要です。
情報源の誤認 :
CDCとFDAの共同声明では、Vaccine Safety Datalink(VSD)の安全シグナルは、他の米国のデータベース、臨床研究、または他の国では再現されていないと述べられています。
【キーポイント】
COVID-19二価ワクチンは、オリジナルのSARS-CoV-2とOmicron変種の両方に対する防御を提供するように設計されています。
医薬品監視システムからの安全シグナルは、実際のリスクが存在するかどうかを判断するには十分ではありません。
そのため、更なる調査や他のモニタリングツールとの比較が必要です。
VSD監視システムで検出されたワクチン接種後の脳卒中リスクの高さは、他のシステムでも臨床研究でも確認されておりません。
【レビュー】
ワクチンは、承認・認可後も必ずモニタリングの対象となります。これは、臨床試験中に現れなかった稀な副作用を確実に検出するためです。これにより、公衆衛生当局が国民に警告するための適切な措置を講じることが可能となります。
2023年1月13日、米国CDCと米国FDAは共同声明として、両者の医薬品監視システムの1つが、Pfizer社のCOVID-19 二価ワクチンにおいて「安全シグナル」を検出したと発表しています。
より具体的には、Vaccine Safety Datalink(VSD)と呼ばれる薬物監視ネットワークが、二価ワクチン接種後3週間以内に高齢者における虚血性脳卒中のリスクが上昇する可能性を報告しました。二価ワクチンを接種した65歳以上の55万人のうち、130人が21日以内に脳卒中を発症しましたが、死亡例は報告されていません。VSDは、全米に散在する13の医療機関のネットワークで、患者の臨床データを提供することで、ワクチンの安全性を継続的にモニタリングし、起こりうるリスクを迅速に発見することが可能です。
多数の 報道 機関 がFDA/CDCの声明を伝えました。そして、多くの ネット ユーザー が、COVID-19ワクチンが脳卒中を引き起こしていることを暗示するような形で、ソーシャルメディア上で情報を拡散させました(こちらとこちらもご参照下さい)。その主張をした人の中には、Simone Goldのように、過去にCOVID-19やCOVID-19ワクチンに関する偽情報を伝播した人もいます。しかしながら、この主張には裏付けがありません。CDCとFDAの初期調査では、既にCDC/FDAの声明で説明したように、この安全シグナルは誤報であったことが示唆されています。
ワクチンの安全性監視システムは、起こりうるリスクを検知するのに十分な感度を持つ必要があります。感度が高いということは、統計的な偶然によって誤報が発生することがあるということです。バンダービルト大学の感染症専門家であり、CDC予防接種実施諮問委員会のCOVID-19ワクチン作業部会のメンバーであるWilliam Schaffner氏は、CNNに次のように述べています:
「時折、誤ったシグナルを発信するような監視システムが必要です。シグナルが出ないと、何か見落としているのではないかと心配になります」
つまり、VSDによって発生した安全シグナルだけでは、ワクチンが高齢者に脳卒中を引き起こすと結論づけるには不十分なのです。この初期シグナルを調査する必要があります。その一つの方法は、他のワクチン安全性監視システムで同様の効果が検出されたかどうかを確認することです。
例えば、よりよく知られているワクチン有害事象報告システム(VAERS)データベースは、CDCとFDAが運営するもう一つの重要なワクチン安全性監視データベースですが、同様の安全性シグナルは報告されていません。また、メディケア・メディケイド・サービスセンターのデータベースと退役軍人省のデータベースに基づく他の2つの研究でも、リスクの上昇は検出されなかったと、共同声明にて付け加えています。
重要なのは、Pfizer社製COVID-19二価ワクチンは米国内だけで流通しているわけではないことです。欧州連合加盟国など他の国でも、このワクチンの使用が承認されているのです。もし、このワクチンが脳卒中のリスクを高めるのであれば、これらの国々でも同様に観察されるはずです。しかしながら、CDCとFDAによりますと、同様の安全シグナルを報告した国はありませんでした。
その結果、CDCとFDAは、「現在のデータでは、VSDにおけるシグナルが真の臨床リスクを表す可能性は極めて低い」と結論付けました。Schaffner氏はまた、COVID-19がワクチン接種よりも遥かに危険であることを強調しました: 「間違いなく、入院を含む一連の有害事象のリスクは、ワクチンによるものよりもCOVID-19によるものの方が遥かに遥かに大きいです」と述べています。
CDCとFDAは、最初の安全シグナルを確認する追加データがないため、ワクチン接種の習慣を変更することは推奨されないと強調しました。彼らは、この問題を更に議論するために2023年1月26日に会議を開くことを発表しました。