【営業妨害で訴えられろ】Pfizer社のチーズ製造用レンネットで病気になることは決してありません。

バイオエンジニアリングによって製造されたレンネット(チーズ製造に必要な酵素で、主にPfizer社によって製造されている)は、Facebook上の動画が暗示するように、病気を引き起こすのものでしょうか?いいえ、そんなことはありません: 複数の専門家がLead Storiesに語ってくれた所によりますと、レンネットは遺伝子組み換えとは考えられておらず、人間の健康にとって安全であるとのことです。レンネットは最終的なチーズ製品の製造に使われるもので、チーズの原材料ではありません。

この主張のあるバージョンは、2024年8月7日にFacebook上でシェアされたリール(アーカイブはこちら)に、以下のようなキャプション付きで掲載されていました:

大手製薬会社は利益重視のビジネスで、当然、私達の食べ物を乗っ取っている。

#cheese #eatclean #wellness

Facebook (archive.md)

本稿執筆時点では、この動画は以下のように表示されていました:

(出典:2024/08/14 水曜日 08:57:00 UTCに取得されたFacebookのスクリーンショット)

このリールは、発酵生成キモシン(FPC)として知られる、チーズの製造に使用される酵素であるバイオエンジニアリングによって製造されたレンネットが人体に害を及ぼすことを示唆しています。この動画は、「彼ら」(=恐らく製薬会社のこと)が 「あなたを病気にしたい 」から使用されていると主張しています。

Lead Storiesが話を聞いた3人の独立した専門家によりますと、このような主張は誤りだということです。

キモシン・レンネットは牛乳からチーズを作る触媒です。

レンネットは、ヤギ、子羊、子牛といった反芻動物の第四胃の内壁に存在する天然由来の酵素群です、と2022年発行の書籍《Value-Addition in Food Products and Processing Through Enzyme Technology》(アーカイブはこちら)に記載されています。その一節はこちらでご覧頂けます(アーカイブはこちら)。レンネットの主要成分であるChymosimは、乳中のカゼインタンパク質を固めてチーズ製品を作る酵素です。レンネットは牛乳を固めて液体と固体を分離するもので、チーズ製造工程の触媒ですが、チーズの成分とは考えられていません。

レンネットには微生物、植物性、動物性、発酵生成キモシン(FPC)の4種類があります。その名が示すように、「発酵生成」とは、そのタイプのレンネットがどのように作られるかを指しています。

シカゴを拠点とする登録栄養士で、業界団体であるAcademy of Nutrition and Dietetics(=栄養・食事療法学会:アーカイブはこちら)の広報担当者であるMelissa Prest氏(アーカイブはこちら)がLead Storiesに語ってくれたところでは、バイオテクノロジーによって作られたレンネットは1990年代に米国FDAから認可を受けている(アーカイブはこちら)とのことです。Prest氏は2023年8月16日付の電子メールに次のように書いています:

FPCは、1980年代に科学者により、ウシの細胞から微生物に遺伝子を導入し、微生物がキモシンを生産することを可能にする方法が発見された後に生産されたものです。これらの微生物は発酵プロセスを経て、発酵生成キモシン(FPC)を作り出しました。キモシンとレンネットはチーズの製造に使われる酵素であり、チーズの製造方法によって、これらの酵素のどちらかが含まれることになりますが、必ずしも両方が含まれるとは限りません。

Fact Check: Pfizer's Rennet For Cheese Production Will NOT Make You Sick | Lead Stories

天然由来のキモシンから発酵キモシンへの業界シフト

フロリダ大学の園芸科学教授であるKevin Folta氏(アーカイブはこちら)によりますと、ここ数十年でチーズへの需要が増大し、仔牛の消費が減少したため、チーズメーカーは需要に対応するため、レンネットを合成的に生産するようになったとのことです。

「キモシンは、チーズ製造に使われる微生物の中で最初に遺伝子操作された化合物の1つです」と、Folta氏は2024年8月15日、Lead Storiesの電話インタビューに答えています。レンネットは、組換えベースの、或いは遺伝子クローン(アーカイブはこちら)のタンパク質を生成する「最適化されたシステム」を用いて生成されます。

「レンネットはチーズの原材料ではないのです。恐らく微量に存在するのでしょうが、反応を行なうために使用され、最終製品には含まれないという考え方です」とFolta氏は言い、「組換えタンパク質に関連するリスクはありません」と付け加えています。

FPCは遺伝子組み換え作物(GMO)には分類されません。

科学に関する誤った情報や偽情報と闘う非営利団体Genetic Literacy Project(アーカイブはこちら)のエグゼクティブ・ディレクターであるJon Entine氏(アーカイブはこちら)は、2024年8月15日、Lead Storiesの電話インタビューに対し、FPCは遺伝子組み換えでもなければ、人間の健康にとって危険だと考えられているものでもないと答えています。

「レンネットは遺伝子組み換え作物ではありませんが、遺伝子組み換えプロセスの産物です」

Entine氏は、Genetic Literacy Projectが書いたFAQページ(アーカイブはこちら)をLead Storiesに紹介し、GMOプロセスについて次のように説明しています:

90%のチーズとほぼ全てのハードチーズは、発酵生成キモシン(FPC)と呼ばれる遺伝子組み換えバクテリアによって生成されたキモシンという酵素を使って製造されています。米国では長年にわたり、牛乳はrBSTで処理された牛によって生産されてきましたが、このrBSTは1985年に研究者達が遺伝子組み換え微生物に生産させ始めた天然由来のホルモンです。

これらの物質から作られた最終製品は、食料品店の棚に並ぶ頃には、通常遺伝子操作された物質を含んでいません。米国FDAは、これらの製品は遺伝子組み換えの助けを借りずに作られた食品と実質的に同等であるとしています。

Is your cheese GMO? The Non-GMO Project and other activists claim 90% of cheeses in America are 'tainted'. Here are the facts - Genetic Literacy Project (archive.md)

私達のインタビュー後、遺伝子リテラシー・プロジェクトは2024年8月16日、FPCに関連する健康上の懸念に関する説明書を発表しました(アーカイブはこちら)。その中で、Entine氏は特にFacebookの動画を取り上げ、「GMによる食品は安全でない可能性がある」、「GMを使用して製造されたレンネットは殆どテストされていない」といった「数々の虚偽の主張をしている」と指摘しました。

「GMは改変のプロセスであり、製品ではありません」とEntine氏はLead Storiesに語っています。

FPC製チーズに関連する既知のリスクはありません。

米国FDAはFPCを 「一般に安全とみなされるもの:Generally Regarded as Safe(GRAS)」に指定しています(アーカイブはこちら)。このグループには、一般的に使用されている香料や香辛料から、リン酸塩や食品添加物のカラギーナンまで、様々な物質が含まれており、定められた用途では無害とされています。

「酵素はキモシンで、動物から出る酵素と同じです。生産者が 『一般的に安全と見なされています』と言うのは、それ以外の何ものでもないからです。これは動物の遺伝子に由来するもので、腸の山から採取するのではなく、大きな発酵槽の中で発現させるだけなのです」と Folta氏 は述べています。

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