この研究は、COVID-19ワクチンと癌との関連を立証するものではありません。
基記事はこちら。
ある反ワクチン擁護団体は、COVID-19の接種によって生じるスパイク・プロテインが、癌を抑制する遺伝子に干渉することによって腫瘍の成長を促進する可能性があることを、2024年の研究が示していると主張しています。これは紛らわしい表現です。研究者グループは、このプロテインは感染からも生じ、p53遺伝子に影響を与える可能性があると結論づけていますが、実験室での細胞実験では因果関係は立証されておらず、著者の一人の見解によりますと、ヒトの癌に適用することは不可能であるとのことです。
「COVID-19ワクチン接種によるスパイク・プロテインが癌の成長を促進する可能性がある」と、以前にもCOVID-19に関する誤報を喧伝したことのあるグループであるAmerica's Frontline Doctorsの2024年7月1日のFacebook上のリールに書かれています。
同じ研究に言及した別のFacebookの投稿では、「COVID-19ワクチン接種は癌の増殖と生存を引き起こす 」と結論付けています。同様の主張は、有名なワクチン懐疑論者の間でもX上で広まってきたものです。

この投稿は、世界中で何百万人もの命を救ってきたと研究者らによって見積もられているワクチン接種に関する、広範囲に及ぶ誤情報の最新例となっています。
この主張は、癌専門誌Oncotarget(アーカイブはこちらとこちら)に掲載された2024年4月のプレプリント研究を参照しています。
ブラウン大学の研究者であるShengliang ZhangとWafik El-Deiryが率いるこの論文(アーカイブはこちらとこちら)は、COVID-19スパイク・プロテインがp53遺伝子を抑制し、特に化学療法後の癌細胞の成長を阻止する能力を阻害する可能性があることを発見したというものです。このプロテインは感染とワクチン接種の両方の後に体内に存在します。
Pfizer社とModerna社のmRNAワクチンは、免疫反応を起こすために弱毒化或いは死滅したコロナウイルスを注射するのではなく、ウイルスのスパイク・プロテインの断片を作る方法を細胞に指示するものです。スパイク・プロテインを作ると、コロナウイルスに感染した場合、細胞はコロナウイルスを認識して戦うことが可能になります。
しかしながら、オンライン上で共有された研究は、「COVID-19ワクチンが癌を引き起こすという証拠にはなりません」とEl-DeiryはXへの2024年5月8日の投稿(アーカイブはこちら)で述べています。
Our research does not provide proof that COVID-19 vaccines cause cancer. If you read our publication you will see that we conducted basic science experiments showing that spike protein can have an impact on the function of the major tumor suppressor protein p53 including… https://t.co/ggBjmFopTV
— Wafik S. El-Deiry, MD, PhD, FACP (@weldeiry) May 8, 2024
研究者らは研究の中で、in-vitro研究室で得られた知見を、一般的に複数の遺伝的・環境的要因に起因する病気である癌の原因と解釈することは出来ないと述べています。
El-Deiry 氏はAFP通信に対し、p53遺伝子は癌の発生を抑制する働きがあるとしながらも、「癌の最終的な原因を調べたわけではありません」と述べています。
「癌は複雑です」、「p53を取り除いたからといって、癌になるわけではありません。他のことが起こります--他の突然変異や、時間の経過と共に起こる他の出来事です。ですから、その辺りの解明が必要なのです」、と同氏は8月14日に語っています。
El-Deiry氏は、研究目標の一つは、p53遺伝子を傷つけず、発癌リスクに関してより安全なワクチンの製造に役立てることです、と語っています。
「我々の実験は、ワクチン開発においてより広く考慮されるべき問題を浮き彫りにしました」と著者たちは書いています。
「これは、侵入ウイルスやその遺伝子産物に反応する自然宿主経路の抑制を最小限にしつつ、抗ウイルス免疫を最大化するために、スパイク等のプロテインの合成変異体だけでなく、多数の天然変異体を試験することです」
AFPは、COVID-19ワクチンが癌を引き起こすという主張を繰り返し論破 してきました。
「認可され承認されたCOVID-19ワクチンは、米国史上最も包括的かつ集中的なワクチン安全性監視活動の下で投与されています」と、米国CDCの広報担当者であるNick Spinelli氏が以前AFP通信に対して語っていました。
「6億7,600万回以上の接種後、安全性監視の結果、COVID-19ワクチン接種といかなる癌のリスク増加との関連も立証されておりません。COVID-19ワクチンが癌を引き起こしたり、再発や病気の進行に繋がったりすることを示唆するデータはありません」
米国癌協会は、患者が最新のCOVID-19ワクチンを接種することを推奨しています(アーカイブはこちら)。
AFPは、ワクチンとCOVID-19パンデミックに関する他の主張についてもファクトチェックを行なっています。