【原口一博世界デビューwww】The People's Voiceの見出しに反して、COVID-19ワクチンは「何百万人も殺している」のではなく、死亡を防いでいるのです。
基記事はこちら。
【主張】
日本のリーダーがワクチン未接種者に謝罪: あなたが正しかった。ワクチンは何百万人もの我々の愛する人々を殺している。
【詳細評定:事実誤認】
COVID-19ワクチンを接種した人は、未接種の人に比べてあらゆる原因で死亡する可能性は高くないことが、公表された研究や安全性モニタリングのデータから判明しました。
それどころか、COVID-19ワクチン接種によって重篤な疾病が予防され、命が救われたという証拠も示されています。
【キーポイント】
COVID-19ワクチンは、COVID-19の重症化や様々な合併症のリスクを減らし、世界中で数百万人の命を救ってきたと推定されています。
あらゆるワクチンは副作用を引き起こす可能性があります。
しかしながら、COVID-19ワクチン接種による副作用の大部分は一般的に軽度で、数日以内に消失します。
COVID-19ワクチンによる重篤な副作用の症例は存在しますが、極めて稀であり、ワクチン接種の利点を上回るものではありません。
【レビュー】
2024年5月31日、The People's Voiceの記事は「日本のリーダーがワクチン未接種者に謝罪: 『あなたは正しかった、ワクチンは何百万人もの我々の愛する人々を殺している』」。この見出しを伝える投稿はFacebookやInstagramで話題となり、何万もの反応が寄せられました。
この主張はX(旧ツイッター)上でも拡散され、元英国議会議員のAndrew Bridgenのような著名なユーザーにより賛同を受け、その投稿は10万ビューを超えました。Bridgen は、COVID-19ワクチンの安全性に関する誤った情報を繰り返しSNS上に投稿してきました。2023年4月12日、BridgenはCOVID-19ワクチンの展開をホロコーストと比較したため、保守党から永久追放処分を下されました。
主張の発端:原口一博
The People's Voiceの記事とBridgenの投稿は、国会議員であり元総務大臣である原口一博の演説の映像を共有したものです。この映像は2024年5月31日にウェブサイトwww.aussie17.com、同じハンドルネームのXアカウント(@_aussie17)によって最初に公開されたものです。Xの投稿は、記事執筆時点で50万回以上再生されています。
原口一博は、WHOのパンデミック協定に反対する東京での集会で発言しました。この協定は陰謀論や誤報の標的とされており、WHOが人々にワクチン接種を強制することを可能にするという誤った 主張も多数見受けられます。
Science Feedbackは、原口一博のスピーチの内容を確認するため、日本ファクトチェックセンターの古田大輔氏とAnnie Labの鍛治本正人氏に連絡を取りました。以下は、原口一博のスピーチの英訳です:
翻訳を見ますと、この動画クリップにはThe People's Voiceが引用した「数百万人」という数字への言及は含まれていないようです。とはいえ、原口一博のスピーチは、COVID-19ワクチンが死亡や障害を引き起こしたという全体的なメッセージを伝えていました。
Science Feedbackが以前の主張レビューで説明しましたように、この長年続く主張は、COVID-19ワクチン接種が大量死や病気を引き起こした証拠として、誤って解釈されたデータ、逸話、単純化された相関関係を一般的に用いてきました。
このレビューでは、COVID-19ワクチンが死に至るという主張が、科学的証拠に裏打ちされていない理由を説明します。それとは逆に、臨床試験、安全性モニタリング、調査研究のデータから、COVID-19ワクチンが世界中でCOVID-19による入院と死亡とを減少させるのに重要であることが示されています。
COVID-19ワクチンを接種した人は、未接種の人より死亡する可能性は高くない
COVID-19ワクチンは、一般への提供前に臨床試験で安全性と有効性が示されていました。COVID-19ワクチンを含む全てのワクチンが副作用を引き起こす可能性があることは注目に値します。しかしながら、これらの副作用の大半は軽度であり、自力で回復可能なものですが、中には重篤になる可能性のあるものもあります。それでも全体として、重篤な病気や死亡のリスクを減らすというワクチン接種の利点を上回るほどの副作用は認められていません。
WHO、米国CDC、欧州医薬品庁(EMA)を含む保健当局は、潜在的な安全性シグナルを検出するために、COVID-19ワクチン接種後の有害事象を監視し続けています。これにより、COVID-19ワクチンに関連する非常に稀な副作用(Council for International Organizations of Medical Sciencesのガイドラインによりますと、ワクチン接種者1万人あたり1人未満に発生する副作用)が特定されました。
より具体的には、mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech社及びModerna社)は、稀に重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)と、特に若い男性で2回目の接種後に心筋炎のリスクが僅かに上昇する症例に関連しています[1,2]。ウイルスベクターCOVID-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca社及びJohnson & Johnson社)は、非常に稀ではありますが、若い女性において生命を脅かす血栓症例と関連しています[3]。
もしCOVID-19ワクチンが、主張されているように、本当に何百万人もの人々を殺しているのであれば、その影響はワクチン未接種者に比べてワクチン接種者の死亡率の高さに反映されると予想されます。しかしながら、データはそう示してはいません。
Science Feedbackは以前のレビューで、異なる国や米国の州における死亡率を比較した研究では、ワクチン接種率が高い地域の方が低い地域よりも超過死亡率が低かったと説明しています[4,5]。相関関係だけでは因果関係は確認出来ないため、これらの結果はワクチンが死亡率を減少させたことを証明するものではありませんが、これはCOVID-19ワクチンが致命的であるという説明とは矛盾しています。
これまでのところ発表されている研究でも、Science Feedbackが以前のレビューで説明したように、COVID-19ワクチンと死亡リスクの増加との間に関連性は示されていません。例えば、CDCと共同で実施されたある研究では、2020年12月から2021年7月にかけて、米国内の7か所から12歳以上の1000万人以上の死亡データを評価しました[6]。
この研究では、COVID-19ワクチンを接種した人にCOVID-19以外の原因による死亡リスクの増加は認められませんでした。その結果、ワクチン未接種者はワクチン接種者よりもCOVID-19以外の原因で死亡する可能性が少なくとも2倍高いことが判明しました。人口統計学的特性で調整した後の相対リスク減少は、Pfizer-BioNTechワクチンでは41%(1回目)と34%(2回目)、Modernaワクチンでは34%(1回目)と31%(2回目)、Johnson & Johnsonワクチンでは54%でした。
2023年にVaccine誌に発表された追跡調査でも、2020年12月~2021年8月2021年10月~2022年12月の期間において、ワクチン接種者におけるCOVID-19以外の死亡率が同様に低下していることが著者は報告しています[7]。
これらの結果と一致して、インディアナ州の50万人以上が参加した別の研究では、2021年から2022年にかけて、ワクチン接種者の全死因死亡率がワクチン未接種群に比べて37%低下していることが判明しました[8]。
ワクチン接種は死亡を含むCOVID-19関連リスクから保護する
死亡リスクを増加させるのではなく、ワクチンは重篤なCOVID-19とそれに関連する死亡を含む複数の健康リスクを効果的に予防します[9]。推定によりますと、重篤なCOVID-19のリスクを減少させることで、ワクチン接種が世界中で数百万人の死亡を防いだ可能性が高いです[10,11]。
2023年、英国国家統計局は、イングランドの12歳から29歳の人々におけるSARS-CoV-2感染またはCOVID-19ワクチン接種後の死亡リスクを推定しました[12]。解析の結果、この集団では心疾患死亡率及び全死因死亡率のリスク増加は認められませんでした。本研究では、ウイルスベクターCOVID-19ワクチンの初回接種後に、女性における心臓死リスクの増加(ワクチン接種女性10万人あたり6人の追加死亡)が確認されました。しかしながら、著者らは、有害事象のリスクが高いと思われる臨床的に脆弱な人々がこのグループに多く含まれていると説明しています。そのため、この観察は一般集団には当てはまらないかもしれません。
更に、この潜在的なリスクはCOVID-19そのものがもたらすリスクと一緒に考える必要があります。この意味で、本研究では、ワクチン接種後に全死因死亡のリスクは増加しなかったものの、SARS-CoV-2感染後、特にワクチン未接種者では増加することが判明しています。この増加は、12歳から29歳のワクチン未接種者11,936人に1人の割合で死亡が増加したのに対し、ワクチン接種者55,661人に1人の割合で死亡が増加したことに相当します。
最近では、2024年にNature Communications誌に掲載された研究で、香港の100万人以上を対象に、SARS-CoV-2感染後の心血管疾患と全死亡のリスクに対するCOVID-19ワクチン接種の長期的効果が評価されています[13]。この研究では、ワクチン接種者、未接種者共に、感染は感染後3ヵ月以内の心血管疾患及び全死因死亡のリスク上昇と関連していました。
しかしながら、そのリスクはCOVID-19ワクチンを接種した人(未感染の対照と比較して、心血管疾患のリスクは2倍、全死因死亡のリスクは3倍)では、未接種の人(未感染の対照と比較して、心血管疾患のリスクは4倍以上、全死因死亡のリスクは18倍)よりも低かった。
時間の経過と共に、感染に関連した心血管疾患と死亡のリスクは、ワクチン接種群とワクチン未接種群の両方で減少しました。しかしながら、完全接種者は3ヵ月後には非感染者と同程度のリスクレベルに戻ったのに対し、ワクチン未接種者や部分接種者のリスクは1年以上上昇したままでした。
最後に、COVID-19ワクチンは予防可能な死亡を減らす以上の効果があります。例えば、CoplandらがNature Communications誌に発表したある研究では、英国の500万人以上の小児と青少年を対象に、SARS-CoV-2感染後の入院率に対するCOVID-19ワクチン接種の効果を調査しています[14]。
著者らは、SARS-CoV-2感染が、多系統炎症症候群や心筋炎を含む、事前に評価した12の健康状態中7つの入院リスクの増加と関連していることを発見しました。対照的に、感染前にワクチン接種を受けた小児及び青年では、これらの病態は観察されなかったか、或いは殆ど減少したかでした。
成人を対象とした他の研究でも、心血管疾患、認知症、非COVID-19肺炎、糖尿病、腎不全を含むいくつかの疾患による全原因救急受診及び入院[8]の減少が認められています[15]。
死亡率について上述したように、これらの結果は、COVID-19ワクチンが集団感染を引き起こすこととも矛盾しています。むしろ、これらの結果は、成人及び小児におけるCOVID-19ワクチン接種の現実的な有益性を強調しています。
結論
COVID-19ワクチンが数百万人を死亡させたという主張は根拠がありません。
科学的研究とワクチン監視データから得られた証拠は、COVID-19ワクチンを接種した人が未接種の人より死亡しやすいことを示唆していません。
どちらかといえば、ワクチン接種の方がCOVID-19による重篤な病気や合併症のリスクを低下させることによって、死亡率を減少させた可能性が高いことを示しています。
引用文献
1 – Goddard et al. (2022) Incidence of Myocarditis/Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination Among Children and Younger Adults in the United States. Annals of Internal Medicine.
2 – McDonald et al. (2024) Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination: 2024 Status and Management Update. Canadian Journal of Cardiology.
Michael A. McDonald3 – Bunoinfante et al. (2022) Understanding thrombosis with thrombocytopenia syndrome after COVID-19 vaccination. npj Vaccines.
4 – Bilinski et al. (2022) COVID-19 and Excess All-Cause Mortality in the US and 20 Comparison Countries, June 2021-March 2022. JAMA.
5 – Mendoza-Cano et al. (2023) Assessing the Influence of COVID-19 Vaccination Coverage on Excess Mortality across 178 Countries: A Cross-Sectional Study. Vaccines.
6 – Xu et al. (2021) COVID-19 Vaccination and Non–COVID-19 Mortality Risk — Seven Integrated Health Care Organizations, United States, December 14, 2020–July 31, 2021. Morbidity and Mortality Weekly Report.
7 – Xu et al. (2023) A safety study evaluating non-COVID-19 mortality risk following COVID-19 vaccination. Vaccine.
8 – Tu et al. (2023) SARS-CoV-2 Infection, Hospitalization, and Death in Vaccinated and Infected Individuals by Age Groups in Indiana, 2021‒2022. American Journal of Public Health.
9 – Johnson et al. (2023) COVID-19 Incidence and Mortality Among Unvaccinated and Vaccinated Persons Aged ≥12 Years by Receipt of Bivalent Booster Doses and Time Since Vaccination — 24 U.S. Jurisdictions, October 3, 2021–December 24, 2022. Morbidity and Mortality Weekly Report.
10 – Watson et al. (2022) Global impact of the first year of COVID-19 vaccination: a mathematical modelling study. Lancet Infectious Diseases.
11 – The WHO European Respiratory Surveillance Network. (2024) Estimated number of lives directly saved by COVID-19 vaccination programs in the WHO European Region, December 2020 to March 2023. medRxiv. [Note: This is a preprint that has yet to be peer-reviewed at the time of this review’s publication.]
12 – Nafilyan et al. (2023) Risk of death following COVID-19 vaccination or positive SARS-CoV-2 test in young people in England. Nature Communications.
13 – Lam et al. (2024) Persistence in risk and effect of COVID-19 vaccination on long-term health consequences after SARS-CoV-2 infection. Nature Communications.
14 – Copland et al. (2024) Safety outcomes following COVID-19 vaccination and infection in 5.1 million children in England. Nature Communications.
15 – Xiang et al. (2024) Association of COVID-19 vaccination with risks of hospitalization due to cardiovascular and other diseases: A study using data from the UK Biobank. International Journal of Infectious Diseases.