フィリピンにおけるCOVID-19ワクチン導入に関与した容疑でBill Gates氏に「計画的殺人」の逮捕令状が交付されたりはしていません -- そもそも、「凶悪犯罪裁判所」なんてものは存在しないのですから。
フィリピンの「凶悪犯罪裁判所」が出したBill Gates氏の逮捕状は、ワクチン展開に関連した「計画的な殺人」だったのでしょうか?いいえ、それは事実ではありません:法律専門家がLead Storiesに語ったところによりますと、「フィリピンの裁判所には、フィリピン刑事訴訟規則に基づいて国際逮捕状を発行する権限はない」そうです。更には、フィリピンには、所謂、「凶悪犯罪裁判所」なるものは存在しないとのことです。
この話は、NewsPunchが2023年3月2日に掲載した「フィリピンにおけるワクチン導入に関連する『計画的な殺人』の容疑でBill Gatesの逮捕状が交付された」という記事(アーカイブはこちら)で紹介され、冒頭で次のように述べられています:
フィリピンの裁判所は、Bill Gatesの国際逮捕状を発行し、同国でのCOVID-19ワクチン接種に関する捜査の一環とした。
ソーシャルメディアでは、このタイトルと説明文、サムネイルだけが表示されました:(➡以下はデマサイトへのリンクです。クリックは自己責任で)
【記事の主張】
マニラの凶悪犯罪裁判所は、改正刑法(RPC)248条(最低20年1日の懲役)に基づき、Gatesの逮捕命令を出した。
Lead Storiesでは、ノートルダム大学ロースクールLL.M.プログラム(国際人権法)のファカルティ・ディレクターであるDiane Desierto国際問題教授に問い合わせたところ、2023年3月6日に電子メールでご回答頂き、この主張は誤りであると述べています:
フィリピンの裁判所も、フィリピン刑事訴訟規則に基づいて国際逮捕状を発行する権限を持っていません。逮捕状はフィリピン共和国の領域内でのみ送達可能であり、逮捕状を発行する裁判所のレベル(地域や 自治体等)によっては、当該地域または自治体内でのみ送達可能です。
Desierto氏は、「凶悪犯罪裁判所」についての主張が虚偽である理由を説明してくれました:
いいえ、凶悪犯罪裁判所というものは存在しません。特別法廷はフィリピン最高裁判所の管理権限の下に創設されるもので、そのような法廷を創設する最高裁判所の発行物は見たことがありません。特別裁判所の例としては、フィリピン最高裁判所の指定により行政命令第23-2008号で創設された、我々の環境法廷が挙げられるでしょう。
「凶悪犯罪裁判所」は、2004年にフィリピンの最高裁判所によって、裁判官の殺害を受けて廃止されました。当時PhilStar.comが報じたとおりです。
著名な億万長者であるGates氏の逮捕状は国際的なニュースとなるはずですが、信憑性のある報道はありません。
記事では、「ゲイツ財団の広報担当者は木曜日に逮捕状に関するコメントを拒否し、地元ラジオに『これは誤解であり、これから解決してもらう』と語った」と主張しています。Lead Storiesは、このコメントが報道された証拠を、このGoogle検索の結果からは見つけることが出来ませんでした。
Lead Storiesは、この主張についてゲイツ財団に問い合わせをしており、回答があった場合は、この記事を適宜更新します。
Bill Gates氏とCOVID-19に関する他のLead Storiesのファクトチェックは、こちらとこちらからご覧頂けます。
【NewsPunch】
NewsPunchは当初Your News Wireとしてスタートし、偽ニュースを最も多く発信しているオンラインパブリッシャーの1つです。ロサンゼルスの夫婦が運営しており、自分たちは幻滅したリベラル派だと言っています。NewsPunch は過去に数多くの偽ニュースを発表しており、この会社が発表するものはどれも大げさなものであると考えるべきでしょう。 Media Matters For Americaの2018年の報告によりますと、そのFacebookページ《The People's Voice》は、検証済のチェックマークを失いました。
Lead Storiesは、NewsPunchの主張を否定する記事をいくつか書いており、それらはこちらでご覧頂けます。