堕胎作用のある植物は危険であり、堕胎法としては効果がありません。

主張

  • ペニーロイヤル、ブルーコホシュ、ブラックコホシュ、或いはヨモギ等の植物は、中絶のための代替方法である。

詳細な評定:裏付けが不十分

  • ペニーロイヤル、ヨモギ、ルー、コホシュ等の所謂、堕胎作用のある植物が、安全で効果的に中絶を誘発するという主張を裏付ける科学的な証拠はありません。

  • 中絶が起こるとすれば、これらの有毒な植物を摂取することによって生じる病気の副作用です。

  • 重症になると、そのような病気は死に至ることさえあります。

キーポイント

  • Roe vs. Wade裁判がひっくり返ったことで、ミフェプリストンとミソプロストールを使った薬による中絶のような安全な中絶手術は、米国内の多くの女性にとって非常に難しくなることが予想されます。

  • そソーシャルメディア上では、ペニーロイヤル、ブルーコホシュ、ブラックコホシュ、ルー、ヨモギ、パセリ等の堕胎作用のある植物の利用を促進する動きが多く見られるようになりました。

  • これらの植物の多くは非常に毒性が強く、死に至ることもあります。

  • 中絶を誘発する効果があることを示す科学的な証拠も不足しています。

レビュー

2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年の《Roe vs. Wade》判決を覆し、憲法による中絶権の保護に終止符を打ち、各州が独自に中絶を規制する法律を設定出来るようになりました。

Roe判決を覆した後、中絶をほぼ全面的に禁止する「トリガー法」を即座に制定した州が10州以上あり、今後もこのような法律を制定する州が増えることから、多くのユーザーがソーシャルメディアに目を向け、代替となる自作の中絶方法について議論しています。その一例が、様々な植物を挙げ、ハーブティーや軟膏の形で中絶を誘発することが出来ると主張するInstagram投稿です。

これらの投稿では通常、これらの植物は妊娠中に流産する可能性があるため、「妊娠中は避けなければならない」とユーザーに警告していました。しかし、これらの投稿が公開された時期、つまりRoeの判決が覆ったすぐ後であることと、いくつかの文言は、これらの投稿が中絶の可能な代替手段としてこれらの植物を密かに宣伝していることを示唆しているのかもしれません。そのヒントは微妙なものです。例えば、ある投稿のキャプションは次のように結んでいます:「このような状況を引き起こす可能性のあるハーブや他のハーブについて学び続けて下さい。そうでなければ、どうやって不慮の流産を避けることが出来るでしょうか?あなたは十分賢いのだから、このようなことも出来るはずです。」別の人は、「この情報を使って何をするかだ」と述べています。

これらの投稿の動機が何であれ、これらの投稿にある情報は、安全で効果的な中絶方法ではないため、害を及ぼす可能性があることを利用者が認識することは非常に重要なことです。これらの植物の多くは非常に有毒であり、更に、中絶を誘発する効果は科学的な証拠によって裏付けされていないのです。この投稿には、ペニーロイヤル、ブラックコホシュ、ブルーコホシュ、ヨモギ、ルー、クィーンズレース、パセリ等、妊娠中絶することが出来るとされる植物がいくつか挙げられています。毒物学者や産婦人科医などの医療専門家は、これらの植物の煎じ薬は妊娠を中絶する方法として証明されてはいないと警告しています。

第一に、これらの植物を摂取することで効果的に中絶を誘発することを示す確実なデータは殆どないのです。産婦人科医のJen Gunter氏は、「(ペニーロイヤルが)実際に効果的な堕胎薬であるという証拠はありません」と強調しました。よもぎ、アカネ、コホシュ等の他の植物についても、効果に関するデータは同様に不足していると、彼女は付け加えました。

ケース・ウェスタン・リザーブ大学の医療毒物学者であるRyan Marino氏もAP通信に、「中絶を誘発したり妊娠を予防したりするのに安全で有効な薬草療法は存在しません」と語っています

もし、女性がこれらの植物のいくつかを摂取した後に流産を経験した場合、総じて言えば、その植物の毒性が深刻な病気を生み出すからです。「胎児か胎盤が冒され、胎児死亡が起こり、最終的には陣痛か感染症を引き起こし、それがうまくいけば陣痛を誘発することになるか、或いは、妊娠している人が肝不全などの病気になり、酸素不足で胎児が死亡するか、血液が凝固する能力を失って胎盤の裏側で出血が始まるため、流産となる」とGunter氏は解説しています

言い換えれば、これらの植物は妊娠を中断させることが出来ますが、これは毒性の副作用であり、そのような結果を得るためには、合併症や死亡の高いリスクも伴うものとなっています。Marino氏はこう説明しています:「確かに、妊娠中の人が重度の臓器不全に陥るほど毒を盛れば、妊娠が出来なくなる可能性は十分にあります。」

実際、これらの植物が中絶を誘発すると主張するソーシャルメディアの投稿が広まり、医療関係者の間で警鐘が鳴らされています。彼らは、これらの植物の殆どが深刻な健康問題を引き起こす可能性があると警告しているのです。このような投稿でよく引き合いに出される植物の一つが、ペニーロイヤル(Mentha pulegium)です。Marino氏と、同じく医療毒物学者のJosh Trebach氏は、Twitterで、肝臓や腎臓にダメージを与えるプレゴンと呼ばれる物質が含まれていると説明しています。「人間が摂取しても安全なペニーロイヤルの量はない」とMarino氏は付け加えました。

ヨモギ(Artemisia vulgaris)は、一般的に堕胎作用のある植物としても知られています。ヨモギは伝統的な薬として使われてきましたが、アブサンにも含まれるツジョンという神経毒を持つ物質が含まれています[1]。ツジョンは低用量であれば耐えられますが、医薬品では用量が厳密に管理されているのに対し、ヨモギ茶などの自家製製剤はツジョンの量が制御されていません。十分な量のツジョンを摂取すると、治療が困難な発作を引き起こす可能性があると、Marino氏は指摘しています

また、ブルーコホッシュ(Caulophyllum thalictroides)は、嘔吐、痙攣、昏睡、そして死を引き起こすとTrebach氏は警告しています。

ハーブのルー(Ruta graveolens)は、嘔吐、出血、多臓器不全など、同様に深刻な症状を引き起こすとGunter氏は言っています

このことから、所謂堕胎効果のあるハーブティーは、安全でもなければ堕胎を誘発する効果もないことが分かります。流産が起こるとすれば、それは主として植物の毒性によって引き起こされる重病の結果です。流産を誘発するためにこれらの植物を利用する人は、合併症や、場合によっては死亡する危険性もありますが、成功する可能性は十分にあります。

FDAは、ミフェプリストンとミソプロストールを、初期妊娠(最終月経の初日から70日以内)の非外科的な安全な中絶のために承認しています。しかし、Roe法が覆されたことで、多くの女性にとって薬による中絶へのアクセスは極めて複雑になりそうです。ブルームバーグの取材に対し、Trebach氏は、医療を受けることが困難な人は、医療機関や審査に合格した団体を通じて支援を求めることが出来ると助言しています。

引用文献

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