COVID-19ワクチンが世界的な死者・患者数の増加をもたらしたとするプレプリントに、専門家から激しい批判が寄せられる

【和訳】
COVID-19ワクチンの世界展開により、死亡者数と患者数が増加したことを明らかにしたと主張する、査読を経ない個人的な研究が、一部のソーシャルメディア投稿で包括的な分析として引用されています。しかし、ロイターはデータの専門家にこの記事を紹介し、いくつかの大きな限界を強調しました。

スクリーンショットを介して広く呟かれたアブストラクトから、研究の全文は、ここで見つけることができます。pdf版はこちら

7,000以上の「いいね」が付いたあるツイートでは、この分析が「網羅的」であると評され、陰謀論ウェブサイトおよびチャンネルであるInfowarsは、ビデオセグメント(こちら)でこの分析を取り上げています .

この論文は、カナダ・アルバータ大学の国際関係・比較政治学博士課程に在籍するKyle Beattie氏(kylebeattie.dx.am/こちら)によって書かれたものです。

彼は、ワクチン接種率の低い4カ国(ブルキナファソ、チャド、コンゴ民主共和国(DRC)、南スーダン)のデータを、ワクチン普及がはるかに進んでいる他の国々と比較しました。

これらの対照群は、『限られたワクチン介入によるウイルスの「自然な」進行を最もよく表しています』と彼は述べました。

Beattie氏は、彼の研究によって、COVID-19ワクチンの世界的な普及が、この病気の死亡者数と患者数を増加させる「強く重大な傾向」があることが示されたと主張しました。彼は、この発見は「政策立案者にとって非常に憂慮すべきもの」であると付け加えました。

Beattie氏はその後、ロイターに対し、「このテーマに対する個人的な興味」から論文を書いたのであり、「大学からの援助や提携はなかった」と電子メールで語っています。

「この研究は、公共政策として制定されたワクチン投与の効果がどのようなものか、また、それがCOVIDによる患者や死者を減らすのに役立っているかどうかを広く理解しようとする私の誠実な試みです」と彼は述べています。

「私は、私の結果を示し、議論し、できれば、この方法論の改善点について建設的な批判を受けるために、これをResearchGateサーバーにプレプリントとして公開しました。」

ロイターは、この作品を3人の専門家に紹介しましたが、彼らは皆、この研究の方法論と結論にいくつかの問題点を指摘し、他の広く認められた研究結果といかに矛盾しているかを強調しました。

専門家からの講評

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)医療統計学部門のElizabeth Williamson准教授は、「全体として、この分析結果に対する信頼度は非常に低い」と述べ、この論文は「非常に複雑な問題に対して、非常に強い仮定の妥当性を議論することなく、非常に単純なアプローチをしている」と付け加えました。

この研究では、アフリカの4カ国を「比較対象」として選びました。つまり、これらの国は、他の国(例えば、日本、米国)がワクチンを導入していなかったらどうなっていたかを表すために使われたのです。

『使用された合成比較法が、COVIDワクチンの効果について有効な結果を与えることが出来るかどうかは、この手法が、他の因果関係のある手法と同様に、検証不可能な仮定に依存しているため、確実ではありません。』

彼女は更に、「私が確信しているのは、他の全ての国との比較としてこれらの4カ国を使用することは、賢明な答えを与える可能性が非常に低いということです。」と付け加えました。

Williamson教授の共同研究者で、LSHTMの医療統計学部長であるLinda Sharples教授は、この論文は「非常に異なる国々の幅広い範囲からの集計データ」をまとめていると述べ、批評に同意しています。

彼女はロイター通信に以下のように語りました。:「まず、これらの国々は、国民の年齢分布、地理的、経済的、その他の人口特性が大きく異なりCOVIDの検査戦略やワクチン接種プログラムが異なることは言うまでもありません。」

この場合、データを組み合わせることは困難が伴い、誤解を招く可能性が高いです。」

また、検証不可能な仮定についても言及し、「明らかに、実際に行なったことと異なることをしていたらどうなっていたかはわかりません。もし、各個人について多くの詳細な情報を持っていれば、これらの非常に強い仮定の影響を少なくすることは出来ますが、その影響を完全に無くすことは出来ません。」と述べています。

ロイターは、MRC生物統計学ユニット(BSU)のディレクターで、ケンブリッジ大学の生物統計学教授のJohn Whittaker氏にも話をお聞きしましたところ、Williamson 氏とSharples氏のコメントに同意されました。

『我々は、これらの対照群を(ワクチン)介入期間/国と『交換可能』である必要があります。即ち、介入がなかったらどうなっていたか(反実仮想)を合理的に予測出来るほど類似していると信じることが出来なければなりません。私はどちらの仮定も信じていません。」

特に4つの対照国の選択について、Whittaker氏は、これは「チャドが死者や症例を報告しなかったので、フランスでワクチンが有害であったと言うに等しい。」と述べられました。

3人の専門家全員がロイターに対し、結論は無作為化試験やその他のデータ、分析から得られる証拠から導き出されるのが良いだろうと語りました。

「無作為化試験や関連する研究から多くのデータが得られているので、これらの手法に頼る必要はありませんし、これらの試験は、より証拠に基づいた別の絵を与えてくれます」と、Sharples氏はコンセンサスをまとめられました。

「これらの試験から、私はワクチン接種の有効性に確信を持っています」。

著者からの回答

Beattie氏はロイターに対し、自分が選んだ対照国の限界を理解し、ブルキナファソ、チャド、コンゴ民主共和国、南スーダンは「平均年齢が低く、そのためCOVID-19の影響が少なく、良い対照にはならないかもしれない」と「鋭い解説者」が強調したことを認め、「それはあり得る」と認めた。

Beattie氏は、「この報告書に選ばれた国々は、最終的に利用可能なデータの中で、最も偏差の少ない基準と最も高い予測信頼性を提供した」と結論づけました。

これに対し、Whittaker氏は次のように述べました。:「これらの国々が、例えば、全国集中検査システムのあるイギリスと異なる理由は沢山ありますが、報告の違いは確かに1つであり、年齢構造はもう1つです。これらの4カ国は、パンデミックを通じて非常に低い率しか報告していません。特に、COVIDの報告率が低いという理由で選ばれたようなので、これは有効な比較対象ではありません。」

Williamson氏は、「これらのデータから他の国のセットは、比較対象としてより悪い選択であっただろうという主張のようですが、これは、これらの4カ国が妥当な比較を提供するという主張とは全く異なります。」

「私は、これらのデータの中には、必要な仮定を満たすような対照集団(国のグループ)は存在しないと考えています。有効な因果関係の比較が出来ない状況では、正しい選択は、全く行なわないことです。」

評 価

誤解を招くプレプリント。個人の資格で書かれた査読のない論文の結論は、医療データの専門家から異論が出されている。

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