Kaiser社は、COVID-19の感染リスクが「注射を打つ度に増加する」とは述べていません。
既に、
にて、情報に信頼性がないことを指摘しましたが、Lead Storiesさんがファクトチェック記事をUPしてくれましたので和訳しておきます。
アメリカの大手非営利健康維持機関Kaiser Permanenteは、COVID-19の感染リスクが「(ワクチンを)打つたびに高まる」と認めたのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。Lead Storiesは、この主張の対象となったmRNA-1273(Moderna)ワクチンの評価である研究の主執筆者に話を聞きました。彼によりますと、ネット上のコメンテーターは、この研究結果を鵜呑みにして、Moderna社製のワクチンの有効性を誤魔化すために結果を捻じ曲げてしまったということです。
*健康維持機関:アメリカは国民皆保険ではありませんので、人々は個人で健康保険を用意してくれている機関に申し込まないといけません。
この主張は、2022年10月4日にConservative Reviewに掲載された投稿で浮上しました(アーカイブはこちら)。これらの主張は、2022年10月6日に自費出版プラットフォームSubstackに(アーカイブはこちら)、2022年10月11日にウェブサイトThe Defenderに(アーカイブはこちら)再投稿されました。これら3つの出版物は、医学的予備研究を公開するmedRxivで公開されたModerna社製ワクチンのレビューを引用しています。
Kaiser Permanente Southern Californiaは、同名のCOVIDワクチンの製造元であるModerna社との契約に基づき、この研究を委託しました。著者の大部分はKaiser Permanente Southern Californiaで働いており、研究の抄録によりますと、1人は非営利団体の非常勤研究員、他の2人はModerna社の従業員であるとのことです。The Defenderの記事の見出しは以下のようなものでした:
この記事を書いている時点では、以下のように表示されています:
当該研究は、mRNA-1273ワクチンがCOVIDウイルスのOmicron亜種による感染をどれだけ効果的に防ぎ、入院を予防し得るかを検証したものです。2022年1月1日から6月30日の間に、ウイルス検査で陽性となった30,809人と陰性となった92,427人に焦点を当てた研究です。
科学の専門家は、この研究をまだ精査していません。
Lead Storiesは、この研究の筆頭著者である、Kaiser Permanente社の研究・評価部門の上級科学者で、Kaiser Permanente Bernard J. Tyson School of Medicineの教授であるHung Tseng博士に連絡を取りました。2022年10月17日に送信された電子メールで、Tseng氏はLead Storiesに対し、COVID-19に感染するリスクは、ワクチンを接種する度に増加するわけではない、と述べています。更に、COVID-19の入院や感染のリスクは、ブースター注射によって減少するとも述べています。
Tseng氏はLead Storiesに対し、他の研究が以前から実証していること、つまり、4回接種のワクチンは3回接種よりもよく効き、3回接種のワクチンは2回接種よりもよく効くことを、今回の研究は示していると述べています。彼は以下のようにまとめています:
以下、Tseng氏の回答に基づいて、The Defenderの記事でなされた目立つ主張のそれぞれについて取り上げます:
COVID-19への感染リスクがワクチン接種後に増加することはありません
The Defenderの記事は、研究の30ページにある、mRNA-1273ワクチンの3回接種の有効性と、3回接種と2回接種の有効性を経時的に比較した表を引用しています。The Defenderは、5つのOmicron亜種のうち4つについて、この表は、ワクチン接種後5カ月以内に、その効果が「負の領域に落ち込み、Kaiser社の3回接種の登録者は、未接種の人よりもCOVID-19にかかる確率が高かった」ことを示していると主張しました。
Tseng氏はLead Storiesに対し、これは研究結果の正確な描写ではないと述べています:
COVID-19ワクチン接種後5カ月で「無効になる」わけではありません
また、The Defenderの記事では、「有効性は接種後14~30日から急速に低下し、1~3カ月で低下し、3~5カ月でさらに低下し、それ以降は無効になる」と主張しています。
Moderna社製ワクチンの感染に対する有効性は時間の経過と共にに低下しますが、それでもワクチンは重症化から身を守ることが出来ます。特にCOVIDのオミクロン変異体は「免疫を回避する」のが得意なので、ブースター接種が特に重要であるとTseng氏は述べています。
なお、Tseng氏と彼のチームは、オミクロン変異体に対応していないオリジナルのCOVID-19ブースター接種を評価しています。この記事の執筆時点では、2種類のオミクロン亜種とオリジナルのCOVID-19ウイルスに対応する「二価」ブースターの方が感染防御に優れているという初期データがあるのだそうです。
「3回接種」を受けた人は、「COVID-19のリスクが高い」わけではありません
Moderna社製ワクチンの効果が時間と共にどの程度薄れるかは、正確には、ワクチン接種後に人々が冒すリスクによって決まります。人々はワクチン接種後に行動を変え、予防措置をあまりとらず、感染リスクの高い状況に身を置く可能性が高い、とTseng氏は付け加えました。とはいえ、Kaiser社のデータでは、3回接種よりも4回接種の方が予防効果が高いことが示されています。
「我々は、各ブースター投与が感染と入院の両方に対する予防効果を高めると信じているし、データも何度も示しています」と、Tseng氏はLead Storiesに語っています。
異なるCOVID-19亜種は異なる「免疫回避特性」を持ちます
COVID-19に対する防御率は、ワクチンの各投与量だけでなく、ウイルスの亜変異体や最後のワクチン注射からの時間の長さによっても異なっています。亜種は進化して様々な免疫低下特性を持つようになり、これらの特性に対処する方法も進化しています、とTseng氏は付け加えました。
更に、Tseng氏は、新しい2価のブースターは、「オミクロンBA4 及びBA5亜種に対して、より優れた防御効果を発揮することが期待出来る」と結論付けています。
COVID-19ワクチンに関連するLead Storiesのファクトチェックは、こちらでご覧になれます。