テレピン油の摂取は危険であり、寄生虫の治療に使うべきではありません。
油絵書くんじゃないんだから飲むなよwww。
【主張】
テレピン油の摂取により、寄生虫を駆除することが出来る。
【詳細な評定】
裏付け不十分
テレピン油の摂取が、体内の寄生虫を効果的に除去するという証拠は殆どありません。
現代医学が発達する以前から、様々な病気に対応するために歴史的に使用されていましたが、それが何らかの利益をもたらしたかどうかは不明です。
根拠不明
テレピン油の摂取は危険であり、少量でも命にかかわることがあります。
中枢神経を抑制し、反射を鈍らせ、腎臓と肺にダメージを与え、入院や昏睡に至ることもあります
【キーポイント】
テレピン油は少量でも臓器不全を起こす致死性の毒物です。
寄生虫の感染症に効果的であるという信頼性の高い医学的根拠はなく、このような使い方をすると、却って大きな害をもたらす可能性があります。
抗寄生虫薬はいくつかあり、様々な感染症に効果があります。
【レビュー】
TikTokに投稿され、Facebookで再共有された動画は、テレピン酸を摂取することで、体内の寄生虫を駆除出来ると主張しています。この動画はFacebookで12,000以上のエンゲージメントを獲得しました。テレピン油の用途は、一般的に塗料用シンナーや家具用ワックス等の溶剤です。このレビューで詳しく説明するように、テレピン油は少量でも有毒です。寄生虫に感染しているかもしれないと心配する人は、医療機関に相談する必要があります。
テレピン油で寄生虫感染症を効果的に治療出来るという証拠はありません
テレピン油が寄生虫や感染症の治療に使えるという誤った思い込みは、過去に何度かニュースの見出しを飾りました(例えば、こちら、こちら、こちら)。 テレピン油は、歴史的に医師が寄生虫を含む様々な病気に使っていました。しかし、現代医学が安全で効果的な治療法を提供するようになると、この方法は使われなくなりました。
このテレピン油の使い方を復活させたのは、元医師のJennifer Danielsです。Danielsは、ニューヨーク州医師会(The New York State Board for Professional Medical Conduct)から課された保護観察期間に違反し、医師免許を返上しました。Danielsは、テレピン油がアフリカ系アメリカ人奴隷の「奇跡の治療法」として使われていたと主張しました。しかしながら、寄生虫の治療に有効であるという証拠は発表されていないようです。
テレピン油の摂取は少量でも危険です
テレピン油とは、松の木の樹脂から取れる毒性の強い液体です。テレピン油の健康への影響については、皮膚に触れたり、その蒸気を吸ったりした場合の影響が、多くの研究で検討されています。長期間の皮膚への暴露は、炎症や感作を引き起こす可能性があり、これは塗料の薄め液として専門的に使用していた人に起こる可能性があります(現在、代替品にほぼ置き換えられています)。加えて、テレピン油の吸入は肺を損傷する可能性があります。
テレピン油は飲むことを目的としていないため、その影響に関する研究は殆ど発表されていません。しかしながら、腎不全、胸痛、嘔吐、そして死亡を引き起こす可能性があることが報告されています[1]。また、テレピン酸は中枢神経系の活動を低下させ、反射神経を失い、最後には昏睡状態に陥ります。
9歳の男の子が誤ってテレピン油を飲んでしまい、低血圧、低心拍数、血液凝固能の低下が起こりました[1]。また、18ヶ月の子供がテレピン油を飲んで肺を損傷し、呼吸困難に陥り、手術が必要になった例もあります[2]。1936年には、生後11ヶ月の子供が、虫に感染したと思った祖母から小さじ2杯のテレピン油を飲まされて間もなく死亡したと報告されています[3]。
デラウェア州保健社会サービスによりますと、テレピン油中毒の治療法はありません。その代わり、医師は発作を含む症状を治療することになります。肺へのダメージを防ぐために、胃のポンプは可能な限り避けられますが、深刻なケースでは麻酔をかけて治療をすることもあります[4]。
米国国立環境保健科学研究所のために作成された報告書では、テレピン油の経口致死量は15 mlから150 mlと推定されています。しかし、これより少ない量でも健康被害が生じる可能性があります。
TikTokの動画では、発表者が角砂糖にターペンタインを数滴加えて飲み込んでいる様子が映し出されていました。使用量や摂取の頻度については明記されていません。動画は、テレピン油の危険性について警告する代わりに、次のように述べています:「怖がらないで下さい、テレピン酸は単なる松脂です」と、テレピン酸は天然物なので無害であることを示唆しています(天然物訴求の誤謬)。多くの天然物は濃縮されると致命的となるため、これは誤解を招きます。
寄生虫には有効な治療法があります
ネット上で流れているテレピン油に関する主張の多くは、寄生虫の駆除に使われていることに着目しています。イベルメクチン、パモ酸ピランテル、アルベンダゾールといった抗寄生虫薬が、蟯虫、鉤虫、河川盲目症といった症状の治療に利用されています[5]。薬剤師から市販されている治療薬もあれば、処方箋が必要な治療薬もあります。寄生虫に感染しているのではないかと心配な人は、医療従事者の助言を仰いで下さい。
参考文献
1 – Guzel and Acikgoz (2014) A lethal danger in the home: turpentine poisoning. The Turkish Journal of Pediatrics.
2 – Khan, AJ et al (2006) Turpentine Oil Inhalation Leading to Lung Necrosis and Empyema in a Toddler. Pediatric Emergency Care.
3 – Harbeson AE (1936) A Case of Turpentine Poisoning. Canadian Medical Association Journal.
4 – Riordan et al. (2022) Poisoning in children 4: Household products, plants, and mushrooms. Archives of Disease in Childhood.
5 – Thome and Wen (2012) Drug Therapy for Common Parasitic Infections Within the United States. US Pharmacist.