カナダ軍の減少とCOVID-19ワクチン接種との関係を誤認させる投稿がなされています。

カナダ軍はCOVID-19のパンデミックを通じて兵員数が減少しましたが、最大5,000人の隊員がワクチンによる後遺症で軍務を離れなければならなかったという主張は誤りです。証拠として共有された動画は誤報であり、国防省はワクチン有害事象による軍人の離脱はなかったとしています。

2023年9月15日、48,000回以上再生されたFacebookの動画には、「カナダは、悪質なワクチンによって負傷した軍人を5,000人と推定している」と書かれています。

動画の中で話者が、カナダ軍(CAF)は3,000人から5,000人の隊員を失ったと言っているのが聞き取れ、COVID-19の接種による副反応が原因で、これらの隊員が戦闘不能になったことを暗に示しています。

この動画の他のバージョンは、FacebookTikTokInstagramで数万回以上再生され、軍事的損失が「中国に乗っ取られる」計画の一部ではないかという疑問を投げかける人も現れました。

2023年9月27日に取得したInstagram投稿のスクリーンショット
2023年9月27日に取得したTikTok投稿のスクリーンショット

この投稿は、COVID-19ワクチンに関する誤報の洪水の最新版です。

一方、カナダ国防総省(DND)は、ワクチン接種による副反応でカナダ軍を離脱した者はいないと発表しています。

カナダ国防総省のJessica Lamirande広報官は、9月20日付のAFPへの電子メールで、「CAFには、ワクチンによる負傷で隊員が離脱したという記録はありません」と述べています。

Lamirande氏によりますと、CAFのメンバーに接種された241,270回のCOVID-19ワクチンの接種中、346回のワクチン有害事象が発生したということです。 このうち27件は重篤なものでしたが、殆どの場合、発赤、腫脹、発熱といった症状で、軽微なものであり、自己治癒するものであったとのことです。

この数はCAFの医療従事者に報告された有害事象のみを含みます、とLamirande氏は述べています。

軍人に投与されたワクチン量に対する重篤な副反応の割合は、カナダで報告された全国平均と同程度です(アーカイブはこちら)。

Lamirande氏によりますと、2022年10月まで実施されていたDNDのワクチン要件は、299人の軍人の非自主的兵役解除をもたらし、また108人の軍人が自主的兵役解除の申請書にワクチン要件を挙げたとのことです。

2023年7月、軍事苦情外部審査委員会は、CAFの以前の強制ワクチン政策がカナダ権利自由憲章に基づく隊員の権利を侵害していると認定しました

誤報動画

この映像は、カナダのCOVID-19の対応を調査しているという独立組織「全国市民調査」(NCI)の4月の会合で、アルバータ州在住の軍事弁護士Catherine Christensen氏が証言したものです。AFPは以前、NCIのパネリストによるワクチンの主張ファクトチェックしています。

Christensen氏の証言動画全編に目を通しますと、彼女は2021年10月にCAFが実施したワクチン義務による軍人の一般的な損失額の見積もりについての質問に答えたものであり、ワクチンによる傷害だけではないことが分かります。

「何人の隊員が辞め、解雇され、早期退職し、或いはその他の方法で任務から外されたかご存知ですか?」、とNCI委員のKen Drysdaleが問いかけており、Christensen氏からの返答の前のフル動画では、このような文脈のない誤解を招くSNSへの投稿が含まれています。

2023 年9月27日に取得されたInstagram投稿のスクリーンショット

Christensen氏は9月25日のAFP通信のインタビューで、次のように再答弁しています。「ここ2、3年の間に何千人もの人々と話した私の最良の見積もりでは、3000人から5000人の兵士が(ワクチン義務化によって)直接影響を受け、カナダ軍を去りました」

Christensen氏は、カナダ国防省を相手取った権力の乱用に関する集団訴訟を主導していますが、それは軍の指揮命令系統における一般的な問題に焦点を当てたもので、COVID-19の義務化もその一例だと彼女は述べています。

Christensen氏は、軍人との会話から、ワクチン接種義務に対する不満が戦力喪失や新兵募集の不能の一因になっていると述べています。

縮小するカナダ軍の兵力

Ramirande氏によりますと、パンデミック開始前の2019年12月には、正規軍6万7492人、一次予備軍2万4147人、合計9万1369人が存在していました。2023年7月時点では85,391人です。

「民間部門と公的部門における労働力不足は、人材雇用において大きな競争を生み出しています」、「パンデミック(世界的大流行)は、採用やトレーニングの遅れを招き、問題を悪化させました」と彼女は述べています。

独立軍事研究機関である国防協会研究所Youri Cormier事務局長は、軍隊の縮小はパンデミックの影響であるとしながらも、この損失は募集の減少という問題に起因していると述べました。

「ソーシャル・ ディスタンスのため、そしてロックダウンのため、私達は訓練とリクルートの全プロセスを止めたのです」、「そのため、カナダ軍では数カ月間、入隊者がゼロになったのです」、とCormier氏は9月22日に語ってくれました。

彼は、募集の減少が、通常の退役と退職の割合と相まって、軍人の減少をもたらしたと述べました。

カナダの誤報に関するAFPの報道はこちらでご覧頂けます。

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