Fauci氏は、(悪意に満ちた)紛らわしい動画の中で文脈を無視して(切り取り)引用されても、COVID-19ワクチンの利点についての見解を変えるものにはなりませんでした。

【主張】

FauciがCOVID-19ワクチンの利点について次のように見解を変えた:

  • COVID-19ワクチンは宣伝通りには効かない。

  • 「自分が間違っていたと言う代わりに、なんと美化した言い訳をするのだろう」

  • 「ワクチンは6回接種しても陽性反応が出続ける」

【評定詳細:引用発言の(意図的な)誤読】

  • Fauci氏の発言は文脈を無視して引用されたものです。

  • 全体を見る限り、2024年8月のMedPage Todayのインタビューは、Fauci氏がCOVID-19ワクチンの利点についての立場を変えておらず、ワクチン接種者にも感染症が発生する可能性があることを認めていることを示していました。

【キーポイント】

  • COVID-19ワクチンの利点はそのリスクを上回ります。

  • 科学的エビデンスに基づく限り、COVID-19ワクチンは重篤な病気や死亡を防ぐのに非常に効果的であり、他の人への感染リスクも低減します。

  • ワクチンを接種した人に起こる可能性のある感染症は、ワクチン未接種の人の感染症よりも軽いことが殆どです。

【レビュー】

2024年8月、米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci前所長の2つのインタビューを比較した動画がSNS上で拡散されました。この動画はFacebookの様々な投稿で150万回以上再生されました

この動画は、3年違いで2021年と2024年に実施された2つのインタビューの抜粋を並べたものでした。2021年の最初のインタビューでは、「ワクチン接種を受ければ、感染することはないと安心することが出来ます」というFauci氏の言葉が引用されています。2024年の2回目のインタビューでは、Fauci氏は6回ワクチン接種を受けたにも関わらず、COVID-19に3回目の感染したことを述べています。

この動画を含むいくつかの投稿には、Fauci氏が過去の発言と矛盾していることをほのめかすようなキャプションが付けられていました。例えば、あるユーザーは、「科学はより多くの情報が明らかになるにつれて変化する」と主張することは、「自分が間違っていたと言う代わりにする美化した言い訳」だと書いています。また、「6回注射を受けても陽性反応が出続けるような場合」という別の書き込みもありました。

この動画とキャプションは、Fauci氏がCOVID-19ワクチンの利点について一貫性がないか、または静かに見解を変えたことを暗示していました。全体的に、投稿は彼の発言を、COVID-19ワクチンは当初の主張通りには効かないことを認めたと解釈したのです。

Fauci氏の発言がCOVID-19ワクチンの誤報を拡散するために利用されたのは、これが今回初めてのことではありません。Science Feedbackは、2021年2022年にFauci氏の公式見解を文脈から逸脱させた主張に対して取り組んでいます。

以前の事例と同様に、3回目のCOVID-19接種を受けたFauci氏の経験に関する最近のFacebookへの投稿は、文脈からFauci氏の言葉を取り出して誤解を招き、その結果、両インタビューでFauci氏が語った内容を誤って伝えています。

1つ目の抜粋は、2021年5月17日のMSNBCによるFauci氏のインタビューから抜粋したものです。このインタビューの中でFauci氏は、8人が既にワクチン接種を受けていたにも関わらず、COVID-19の陽性反応が出たヤンキース球団の9人のメンバーに関する事例について述べています。

インタビューの全文を聞けば、Fauci氏が(ワクチン接種にも関わらず感染する)ブレークスルー感染が起こりうることを認めていることに疑いの余地はないことが明らかです。「皆さんはブレイクスルー(感染)を見たくないでしょうが、私にとってこれは衝撃的なことではありません」とFauci氏は語っています。

Fauci氏は、ブレークスルー感染症は通常、ワクチン未接種者の感染症よりも軽症で、感染力も弱いと説明しました:

ワクチン接種により、自分自身を感染から完全に身を守り、 仮に感染しても 無症状で済む可能性が高くなり、 また、感染しても他の人にうつさない可能性が非常に高くなります。

Fauci Confirms ‘Extremely Low’ Risk Of Transmission For Fully Vaccinated - YouTube

このインタビューは、Fauci氏がCOVID-19ワクチンが感染を100%防ぐものではないことを認識し、それをオープンにしていることを示しています。彼は、ワクチン接種の利点は病気の重症度を下げ、伝染のリスクを減らすことであると明言したのです。

2 つ目の抜粋は、Fauci氏の回顧録であるOn Call(The Doctor's Journey in Public Service)の出版に関して、医療ニュースサイトMedPage Todayが8月10日に行なったインタビューからのものです。

このインタビューの中でFauci氏は、2024年にはCOVID-19の脅威は以前より少なくなっていると説明しています。何故なら、現時点では大多数の人々が、感染、ワクチン接種、或いはその両方によって、このウイルスに対するある程度の免疫を獲得しているからです。

Fauci氏はその後、抜粋にあるように、3度目のCOVID-19に罹患したことを説明しました。Fauci氏がCOVID-19の3回目の発症について語った部分は、Facebookへの投稿が示しているものです。しかしながら、その後に続く彼の発言は省かれており、Fauci氏がCOVID-19ワクチン接種の重要性と有効性を強調するために彼の経験に言及したことが分かります:

とても軽い感染症でした。私は83歳で、免疫学的に甘く考えていたら、この感染症は私を死に至らしめたと思うのですが、それ程の病気にもなりませんでした。ちょっとした鼻水と副鼻腔炎と発熱があっただけで済みました。

Fauci Still Masks: Here's When and Why - YouTube

そのため、両インタビューの全文を聴けば、Facebookへの投稿が暗示するものとは異なる姿が浮かび上がって来ます。Fauci氏は、2021年と2024年との間でCOVID-19ワクチンの利点についての見解を変えていませんし、彼自身の意見と矛盾しているわけでもありません。

入手可能な科学的データは、COVID-19ワクチンが感染を完全に防ぐわけではないものの、重篤化(防止)には効果的であり、伝染のリスクを低下させることを繰り返し 示していることは、Science Feedback何度も 説明している通りです。このエビデンスに沿い、Fauci氏は2021年と2024年の両インタビューで、ブレークスルー感染の存在を認め、伝染病と重症化に対するワクチンの有効性を強調したのです。

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