血圧測定には、SNS上で宣伝されている認証されていないアプリではなく、認証された医療機器のみを使用するのが望ましいです。

【主張】

  • 血圧記録アプリが血圧計の代わりになる。

【詳細評定:誤解を招きます】

  • 謳い文句とは裏腹に、Facebookの投稿で宣伝された血圧アプリは血圧を測定するものではなく、従来の血圧測定カフで測定された血圧を追跡できるものです。

  • アプリとは異なり、血圧計は医療機器と見なされ、正確な結果が得られるよう米国FDA食品医薬品局や欧州委員会のような機関による監視対象となっています。

【キーポイント】

  • 数多くのアプリが、その能力や正確さについて十分な証拠を提示することなく、スマートフォンを通じて血圧を測定すると主張しています。

  • 血圧計は、保健規制当局によって分類された医療機器であるため、効果的なアプリであれば、この認証を得ることが求められます。

  • 認証されていない、また規制されていないアプリを根拠に医療判断を下すことは危険です。

  • 血圧や薬の服用について心配なことがあれば、資格を持った医療専門家に相談すべきです。

【レビュー】

高血圧は早死にする主な原因であり、世界中で10億人以上が罹患しています。血圧は通常、上腕に血圧計を装着して測定します。血圧計は、上腕部を圧迫して血流を止め、ゆっくりと収縮させながら測定します。米国心臓協会は、正確な測定方法について、事前に安静にすること、正座すること、正しく校正され検証された装置を使用すること等の指示を発表しています。

血圧値は収縮期圧と拡張期圧の2つの数値で測定され、それぞれ心臓が収縮・弛緩する際に記録される最大圧と最小圧を指します。収縮期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧が80mmHg以上は高血圧(high blood pressure)と判断されます。

広くシェアされたFacebookの投稿では、医師に扮した人物が血圧計を脇に押しやり、親指を立ててから、心拍数、血圧、血中酸素、体温のライブ測定値を表示するアプリが表示されたiPhoneのカメラに指をかざす動画が紹介されていました。この投稿では、《Blood Pressure-Monitor Tracker》というアプリをダウンロードするよう視聴者に勧めています。

App Storeのアプリの説明には、「完全な血圧計のようなもの」と書かれています。Facebookの投稿もApp Storeの説明文も、このアプリが血圧を測定出来るかのように誤解を与えています。しかしながら、アプリ開発者によりますと、血圧値はユーザーが手動でアプリに入力する必要があるということでした。このことがアプリの説明で明確に説明されていなかったため、ユーザーから否定的なレビューが寄せられ、アプリ開発者はそのプロセスを説明するために対応しました。

Facebookの宣伝用投稿では上記のように表示されていましたが、このアプリが血圧を測定出来るということは示されていません。その代わり、このアプリは、血圧計等の他の機器から測定した数値を保存し、追跡することが出来るだけです。

血圧測定は有効な医療機器によってのみ実施されるべきものです

スマートフォンから正確に血圧を測定することが出来るという裏付けのない主張をするアプリの歴史は注目に値します

2016年、ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究者は、《Instant Blood Pressure》[1]と呼ばれるこれらの人気アプリの1つの正確さと精度を調査しました。このアプリは1年以上利用可能で、iPhoneアプリのベストセラートップ50に定期的にランクインしていました[1]。

研究者達は、アプリと校正された有効な血圧計((sphygmomanometer)を使って85人の血圧を測定しました。その結果、アプリは高血圧を過小評価し、低血圧を過大評価する傾向があることが判明しました。これらのエラーの結果、アプリは高血圧患者の約5分の4を見逃してしまい、血圧が健康な範囲にあると偽って安心させてしまっていました。

この研究が発表されるまでに、《Instant Blood Pressure》アプリはApple App StoreとGoogle Playストアから削除済みになっています。しかしながら、研究者達は、類似のアプリがまだいくつかあることに警告を発しています。

これらの認証されていないアプリの使用を検討している人は、定期検診や自己モニタリング用の実績のある血圧モニタは、意図した通りに機能することを保証するために規制当局の監視下にあることを忘れてはなりません。このようなモニタは、米国FDA及び欧州委員会によって、それぞれクラスIIおよびクラスIIaの医療機器に分類されています。効果的な血圧モニタであれば、これらの基準に達していることが求められます。

カフのサイズが適切であれば、手首や指のモニターよりも信頼性の高いカフ式モニタを米国心臓協会は推奨しています。また、モニタが正しく使用され、クリニックの機器と同じ結果が得られるかどうかを医療専門家にチェックしてもらうことも勧めています。

最近の調査では、Amazonで販売されている腕用カフ式モニタの大半は、独立したテスターによってその正確性が認証されていないことが判明しました[2]。認証された血圧モニタのデータベースは、米国及び世界中で利用可能です。

認証されていない、規制されていないアプリに基づいて医療上の決定を下すことは危険です。血圧に関する懸念、または高血圧や低血圧(低血圧)の薬の服用に関する懸念は、資格のある医療専門家に相談する必要があります。

引用文献

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