SNS上での主張とは裏腹に、Pfizer社は2025年にCOVID-19ワクチンの副作用リストを公表していません。

【主張】

  • 数日前にPfizer社がCOVID-19ワクチンの副作用を発表したばかりである。

  • このリストにはPfizer-BioNTech社のCOVID-19ワクチンの副作用である40以上の病状が含まれている。

【詳細評定】

事実と異なります:

  • 主張に引用されている病状のリストは、Pfizer社が2025年に発表したものではありません。

  • 2021年に米国FDAに提出された文書に由来するもので、2022年からオンラインで一般公開されてきたものです。

誤解を招き兼ねません:

  • 記載されている病状は、ワクチン接種後に報告された有害事象であり、確認された副作用は存在しません。

  • 有害事象とは、ワクチン接種後に発生する事象ですが、ワクチンとの因果関係を示す証拠はありません。

  • これらの用語を混同することで、読者を誤解させ、因果関係が立証されていないにも関わらず、因果関係があると思い込ませようとしています。

【キーポイント】

  • COVID-19ワクチン接種後に報告された有害事象は、証明された副作用とは異なります。

  • これらの事象は偶然に起こる可能性があり、因果関係を明らかにするためには厳密な臨床研究及び疫学研究が必要となってきます。

  • 規制当局によって承認されたCOVID-19ワクチンは、引き続き良好な安全性プロファイルを示しており、その恩恵はリスクを上回っております。

【レビュー】

2025年初頭にFacebook上で拡散された投稿は、Pfizer社がCOVID-19ワクチンに関連する副作用のリストを 「公表したばかりだ」と主張するものでした。これらの投稿は、抗精子抗体陽性、癲癇性精神病、死産といった、ワクチンと関連があるとされる約40から50の病状のリストを共有していました(例はこちらこちら)。しかしながら、この主張は不正確であり、誤解を招くものです。

第一に、このリストは新しいものでもなく、投稿が主張するようにPfizer社が 「発表したばかり 」のものでもありません。同様のリストは、アルゼンチンのEl Cronistaによる2023年の記事にも掲載されており、同記事はThe South Africanによる2022年の記事を引用しているだけです。これらの記事は、Pfizer社が米国FDAに1,200以上の潜在的なワクチン関連副作用のリストを提供したと主張していました。しかしながら、2022年のロイター通信と2023年のAFP通信の調査により、この主張は論破されています。Science Feedbackも2022年にこの主張を検証し、誤解を招くと判断しました。このように、2025年の投稿は、新しい情報を提供することなく、以前に論駁された主張を再利用したに過ぎません。

第二に、米国FDAに提出されたリストには、ワクチン接種者の中でワクチン承認後最初の3ヶ月間に報告された病状が記載されていますが、これはワクチンがこれらの事象を引き起こしたことを意味しているわけではありません。このような主張で 「副作用 」という言葉を使うのは、因果関係が確立されていないことを意味し、誤解を招き兼ねません。

このリストは、2021年初めにPfizer社がCOVID-19ワクチンの生物製剤承認申請の一部として米国FDAに提出した文書に由来するものです。この文書には、米国を含む63カ国の保健機関から集められた有害事象(AESI)が含まれています。

ロイター通信のレビューでは、これらの有害事象は、米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)や英国のイエローカード・システムといった各国の報告システムから収集されたものであることが強調されており、これらのシステムはワクチンの安全性を監視するために重要ではあるものの、ワクチン接種と報告された病状との因果関係を立証するために単独で使用することは不可能であることが示されています。Science Feedbackが何度も説明している通り、このようなデータベースはパターンを特定するのには有用ですが、因果関係を判断するには更なる調査が必要です(詳細はこちらと、こちらと、こちら)。

更に、Pfizer社の文書では、これらの病状は「副作用」ではなく「有害事象」として記載されています。これらの用語を区別することは重要なことです。欧州医薬品庁(EMA)によりますと、有害事象とは次のように定義されています

「医薬品を投与された患者または臨床試験対象者における医学的な不都合な出来事で、その治療と必ずしも因果関係があるとは限らないもの」 [強調は弊社による]

https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/international-conference-harmonisation-technical-requirements-registration-pharmaceuticals-human-use-topic-e-2-clinical-safety-data-management-definitions-and-standards-expedited-reporting-step_en.pdf

つまり、Pfizer社の文書に引用されているような有害事象は、偶然に発生する可能性があり、ワクチン接種そのものと自動的に関連付けられるわけではないということなのです。Pfizer社の文書もこの点を強調して、次のように説明しています:

有害事象報告の累積は、必ずしも特定の有害事象が薬剤によって引き起こされたことを示すものではなく、むしろ、その事象は基礎疾患や、過去の病歴や併用反応といった他の要因によるものである可能性があります。

https://leg.colorado.gov/sites/default/files/html-attachments/h_bus_2022a_03032022_013716_pm_committee_summary/Attachment%20C.pdf

ワクチン接種後に発生した医学的事象がワクチンによって引き起こされたという考えは、事後法(post hoc ergo propter hoc)の誤謬の一例であり、ある事象の後に別の事象が続くので、最初の事象が次の事象を引き起こしたに違いないという誤った思い込みです。因果関係を立証するためには、詳細な臨床調査と統計分析が必要不可欠です。Science Feedbackでは以前、因果関係を確定する概念についてこちらで説明しています。

EMAの広報担当者も、引用されているロイター通信の記事に同意見です:

疑われる副作用の自発的な症例報告だけで、疑われる特定の反応が本当に特定の医薬品によって引き起こされたことを証明するのに十分であることは滅多にありません。これは別の病気の症状かもしれませんし、患者が同時に服用した別の医薬品に関連している可能性もあります。ですから、症例報告はジグソーパズルの1ピースと考えるべきです。

https://leg.colorado.gov/sites/default/files/html-attachments/h_bus_2022a_03032022_013716_pm_committee_summary/Attachment%20C.pdf

例えば、mRNAワクチンの心筋炎やアデノウイルスベクターワクチンの血小板減少を伴う血栓症といったいくつかの病状は、大規模なワクチン配布後に初めて確認されました。これらの関連性は、症例検討や疫学研究によって確認されました。対照的に、Pfizer社の文書に記載されている殆どの疾患は、ワクチン接種との因果関係は確認されていません。

結論として、Pfizer社が最近ワクチンの副作用リストを発表したという主張は誤りです。これらの投稿で言及された文書は2021年に米国FDAに提出され、2022年に公開されたものです。その上、この文書に記載されている症状は、ワクチン接種後に報告された有害事象であり、証明された副作用ではないため、ワクチンとの因果関係を示す証拠を欠いています。

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