移植された臓器がドナーから被移植患者に性格的特徴を伝えるという事実は証明されていません。
移植された臓器は、ドナーから被移植患者に性格的特徴を伝えるとSNS上で主張する動画がありますが、それは本当でしょうか?いいえ、そんなことはありません。移植外科医及び 移植患者支援NPOは、Lead Storiesに対し、移植臓器がドナーから被移植患者に性格的特徴を伝達するという考えを支持する科学的証拠や 信憑性のある研究は存在しないと述べています。臓器移植は主に生理的機能の移植であり、人格的特徴が移植されるという主張には科学的根拠も検証もありません」。
この主張は、2023年4月28日にYouTubeに公開されたTetragrammaton with Rick Rubinの動画(アーカイブはこちら)に、「Jack Kruse博士とAndrew Huberman博士(パート1)」というタイトルで登場しました。動画の字幕は次のように始まります:
Jack Kruse博士は身長188cm、体重162kgで、2007年に膝の半月板断裂に見舞われた際に啓示を受けた神経外科医です。それがきっかけとなり、彼は物理学、光、磁気、電気について更に研究するようになりました。やがて彼は、現代医学には自然界で人間がどのように機能するかについての深い理解が欠けているという結論に達しました。
記事執筆時のInstagram上での投稿は以下のようなものでした:
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動画
4時間近いポッドキャストの中の短いコーナーで、脳神経外科医で自称「最適健康教育者」であるJack Kruse医師は、移植を受けた人が臓器提供者の性格を受け継いでいるように見えたことが、彼の医療キャリアの中で3回あったと述べています。そのうちの1つについて、番組の3:16:23から詳しく説明しました。以下はその要約です:
私は18、9歳のある若い子に臓器を提供してもらいました。以前は、臓器がどこの人に提供されたかを知らせる手紙が送られてきていたのです。HIPAA(個人情報保護に関する法律)の関係で日付は分からないのですが、この人には目が、この人には肝臓が、この人には心臓が、という具合にね。名前は教えてもらえませんでしたが。
それで半年後、私のクリニックに神経外科的な問題を抱えているわけでもない女性がやって来たことがありました。彼女はただ私と話をしたいというだけで、事務の女性は「どういうご相談なのか分かりません」と言うんです。彼女は入室して来て、こう言いました:「あの、どなたに尋ねたらいいのか分からないんです。かかりつけの医者にも尋ねましたし、他の人にも尋ねました」彼女は続けてこう言いました:「この心臓の移植を受けてからというもの、私は無性にマクドナルドのフライドポテトが食べたくなるんです」
私はただ唖然として座っていました。彼女に何と言えばいいのか分かりませんでした。彼女はこの事実を知る由もありませんでした。データは公表されていません。この情報を入手することは不可能です。ドナーの子はマクドナルドのドライブスルーで車に突っ込まれて亡くなったんですが、隣の席にマクドナルドのフライドポテトがあったんです。事故が起きた時、彼はそのフライドポテトを食べていたのです。この女性は(マクドナルドのフライド)ポテトなんて食べたことがないそうです。
移植の専門家の意見
ヴァンダービルト移植センター所長のJoseph Magliocca博士は、2024年2月9日にLead Storiesに宛てた電子メールの中で、「臓器移植後にドナーの性格的特徴を獲得したという逸話があります」と述べています。彼は次のように続けます:
この現象は心臓移植でより頻繁に見られるようです。しかし、その仮説を支持する科学的根拠を私は知りません。各人の経験はその人固有のものですから、それを完全に否定することは出来ませんが、それが本当に起こることを示唆する説得力のあるデータはありません。この分野の更なる研究を歓迎します。
ネブラスカ大学医療センターの心臓・肺移植外科医であるAleem Siddique博士は、2024年2月8日付のLead Stories宛の電子メールで、移植はそのようには機能しないと語っています。彼は次のように語っています::
臓器は、ドナーから被移植患者へ性格的特徴を伝えることは出来ません。
2024年2月8日、Lead Storiesに寄せられた電子メールの中で、非営利団体United Network for Organ Sharingの広報担当者であるAnne Paschke氏は、ドナーから被移植患者へという主張は、これまで彼女が見てきた中では何の裏付けもないと述べています:
この現象についての研究は知りません。私の知る限りでは、逸話的な証言しかありません。
Lead Storiesは、臓器移植と性格の変化との関連性について考察した3つの論文(こちら、こちら、こちら)を調査しました。これらの論文では、臓器移植を受けたことと性格の変化との間に何らかの相関関係があることは示されていましたが、両者の間に直接的な因果関係があることを証明するものはありませんでした。
コロラド大学医学部精神医学の臨床助教授であるMitchell B. Liester博士は、これらの論文のうち2本の著者または共著者です。彼は2024年2月8日、Lead Storiesとの一連の電子メールの中で、自分の発見について述べています。
Liester氏は、「臓器移植後に人格が変化する証拠がある」と考えており、移植後にそのような経験をした患者から話を聞いたこともある一方で、「より多くの研究が必要である」とも認めています。彼は次のように付け加えました:
因果関係のメカニズムはまだ解明されていません。
臓器を移植することで、ドナーから被移植患者に何かがもたらされるのではなく、死や潜在的な死に直面するトラウマなど、他の何かが、観察された人格の変化を引き起こしたのではないかと、Lead Stories側から質問してみました。Liester氏は次のように回答しています:
いい質問ですね。どのような要因が人格の変化を引き起こすのかを明らかにする研究が必要です。
医療に関する主張に対するLead Storiesのファクトチェックは、こちらでもご覧頂けます。