SIDS死亡の79.4%がワクチン接種と同じ日に起こったという主張は、CDCの研究を誤って解釈しています。
【主張】
SIDSで死亡した赤ちゃんの79.4%が、同じ日にワクチンを接種していた。
SIDSで死亡した赤ちゃんの79.4%が、同じ日に健康診断を受けていた。
【詳細評定】
事実上不正確です:
この記事は研究結果を誤って解釈しています。
引用された79.4%という数字は、死亡時ではなく、ワクチン接種当日に2種類以上のワクチンを接種した子供のことを指しています。
誤解を招きそうな内容です:
もしSIDSと小児期のワクチン接種との間に因果関係があるとすれば、ワクチン未接種の乳児に比べてワクチン接種を受けた乳児のSIDS発生率が高くなるはずです。
しかしながら、公表されている研究では、ワクチン接種を受けた乳児のSIDS発生率は、ワクチン接種を受けていない乳児に比べて増加していません。
【キーポイント】
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、「原因不明の1歳未満の赤ちゃんの突然死」と説明されています。
科学的研究によって特定されたSIDSの危険因子には、うつ伏せ寝(お腹を下にして寝ること)、妊娠中の喫煙、柔らかい寝具等があります。
SIDSとワクチン接種との因果関係の主張を支持する科学的エビデンスはありません。
【レビュー】
2024年12月初旬、ワクチンが乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因であることを示唆するSNS への 投稿が相次いで公開されています。同様の主張を行なったのは、自身のウェブサイトで「自閉症克服の専門家」「量子医学の専門家」と自称するJodie Meschukです。Facebookで41,000人以上のフォロワーを持つMeschukはまた、ワクチンが自閉症を引き起こすと虚偽の主張をし、自閉症を回復させるためにラクダの生乳を飲むという実証されていない習慣を喧伝しています。
そのような投稿の一例として、「SIDSで死亡した乳幼児の79.4%が同じ日にワクチンを接種していた」と主張しています。これは、米国CDCの研究者が2015年に発表した研究を参照したものです。79.4%という数字は、上記の他の記事にも出てきます。
「十分な調査をしても原因が判明しない1歳未満の乳幼児の突然死」、とSIDSは説明されています。SIDSによる死亡の90%は生後6ヶ月までに起こり、その数は生後1ヶ月から4ヶ月の間にピークに達します。
ワクチンの誤報で、SIDSはよく取り上げられるトピックですが、信頼のおける研究ではSIDSとワクチンとの関連は見つかっていません。2003年、米国医学研究所(現在の米国国立医学アカデミー)は証拠を検討し、「複数のワクチンへの暴露とSIDSの因果関係を否定することを支持する証拠が存在しました」[2]と結論づけています。それにも関わらず、この根拠のない主張は根強く、Science Feedbackが以前のレビューで取り上げたような、方法論的に欠陥のある研究を用いて正当化しようとする者も存在します。
これらの以前の主張と同様に、SIDSや 小児死亡の79.4%がワクチン接種によるものであると主張する投稿は不正確であり、2015年のCDCの研究を誤って解釈した結果です。以下で説明します。
SIDS症例の79.4%がワクチン接種と同日に発生したとは 発表されていません。
2015年の米国CDCによる研究では、1997年7月から2013年12月までの間にワクチン接種後に死亡した症例について、米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)を調査しました。また、死因を特定するために医療記録、剖検報告書、死亡診断書についても調査したということです。2,100件以上の報告が分析され、約68%が小児に関するものでした。
この研究では、SIDSの報告は分析した死亡報告(成人を含む)全体の約28%を占め、「死亡と時間的に関連する最も一般的なワクチンは、特定の年齢で一般的に推奨され、接種されたものである傾向がある」ことが判明しました。この79.4%という数字は、研究の中で3回出てくるが、特に抄録の最初の方に出てきます《For child death reports, 79.4% received >1 vaccine on the same day》。
研究そのものでは、この数字はより詳細に報告されています(「0~17歳の小児における1469件の報告の中で、1166件(79.4%)がワクチン接種当日に1回以上のワクチンを受けています」)。
これらの詳細から、79.4%という数字は、死亡当日ではなく、ワクチン接種当日に2種類以上のワクチンを接種した小児を指していることが明らかです。
このことから、SNSの投稿がこの数字を解釈したのは、抄録のもっと短い文章にのみ基づいていたと推測することが出来ます。そして、その短い文章は、死亡した「同じ日」に複数のワクチンが接種されたことを意味すると誤解されたものです。しかしながら、先に指摘した通り、この研究を実際に読んでみますと、これは誤りであることが分かります。
2021年11月に行なわれた同様の主張に関するロイター通信のファクトチェックでも、この数字がいかに誤って解釈されているかが浮き彫りになりました。米国CDCの広報担当者は、「死亡した乳幼児の79.4%が、日帰りでクリニックを受診した際に1回以上の予防接種を受けていたことを意味するだけです。その日1日に複数の予防接種を受けていたのです。これは、予防接種を受け、その日のうちに死亡したということとは異なります」と説明しました。
SIDSと小児ワクチン接種との間に関連はないとの 研究結果があります。
小児ワクチンがSIDSを引き起こすという主張には、ワクチン接種直後に乳児が原因不明の死を遂げたという逸話的証言がよく引用されています。こうした話は説得力があるように思えるかもしれませんが、時間的な関連だけでは両者の因果関係を示すには不十分です。
その主な理由の一つは、SIDSがワクチン未接種の乳児にも起こることです。ワクチン接種児と未接種児のSIDS死亡のピークは、乳児がワクチン接種を受ける年齢の前後であるため、ワクチン接種後にSIDSが発生するのは単なる偶然である可能性があります[3]。
そのため、因果関係を立証するには、時間的な関連だけでなく、SIDSの発生頻度がワクチン接種児の方がワクチン未接種児よりも高いかどうかを明らかにする必要があります。もし因果関係が存在するならば、ワクチン接種を受けた乳児のSIDS発生率は、ワクチン接種を受けていない乳児に比べて高くなると予想されます。
しかしながら、このテーマに関して発表された研究では、ワクチン接種児がワクチン未接種児に比べてSIDSになりやすいという結果は得られていません[4-7]。2つの研究では、ワクチン未接種の乳児はワクチン接種の乳児に比べてSIDSが起こりやすいことが判明しました[6,7]。これらの知見は、小児期のワクチン接種がSIDSのリスクを高めるという主張と矛盾します。
要するに、ワクチン接種はSIDSの危険因子ではないという科学的証拠が示されているのです。それどころか、研究によって特定されたSIDSの危険因子には、うつぶせ寝(腹ばいで寝ること)、妊娠中の喫煙、柔らかい寝床が含まれています[8]。
引用文献
1 – Moro et al. (2015) Deaths Reported to the Vaccine Adverse Event Reporting System, United States, 1997-2013. Clinical Infectious Diseases.
2 – Institute of Medicine (US) Immunization Safety Review Committee; Stratton K, Almario DA, Wizemann TM, et al., editors. Immunization Safety Review: Vaccinations and Sudden Unexpected Death in Infancy. Washington (DC): National Academies Press (US); 2003. Immunization Safety Review: Vaccinations and Sudden Unexpected Death in Infancy. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK221465/
3 – Brotherton et al. (2005) Probability of coincident vaccination in the 24 or 48 hours preceding sudden infant death syndrome death in Australia. Pediatrics.
4 – Yang and Shaw. (2018) Sudden infant death syndrome, attention-deficit/hyperactivity disorder and vaccines: Longitudinal population analyses. Vaccine.
5 – Jonville-Béra et al. (2008) Sudden unexpected death in infants under 3 months of age and vaccination status – a case-control study. British Pharmaceutical Journal.
6 – Vennemann et al. (2007) Sudden infant death syndrome: No increased risk after immunisation. Vaccine.
7 – Fleming et al. (2001) The UK accelerated immunisation programme and sudden unexpected death in infancy: case-control study. BMJ.
8 – Moon et al. (2022) Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics.