美容・化粧品メーカーのサロンサポートの取り組みまとめ(11社)
サロン風景が新型コロナウイルスの影響で変化を見せる一方で、業界全体の風景としても、コンテストやセミナーなど、人が集まるイベントは軒並み中止となり、その主な主催者であった業界メーカーのサロンサポートの方向性も、withコロナを念頭においた形になっている。その動きの特徴を、メーカーアンケートの回答から整理してみる。
編集担当/美容界編集部 大頭 禅
1.業界全体で奏でる応援歌
■中野製薬(株)
サロンの求める声にスピーディに対応
コロナ禍において先手先手の支援策を施してきた中野製薬(株)。『美容界7月号』において、医療機関にマスクを寄贈したニュースも掲載したが、在宅勤務を推進する中で導入したWEB会議のシステムを、取引サロンとのミーティングにも活用。緊急事態宣言中、美容サロンが何に困り、何を求めているかを知る、コミュニケーションツールとして効力を発揮した。
「サロンのお客さまへの商品直送」や「アルコール液の無償提供」も、サロンとの密なコミュニケーションを図っていたからこそ迅速に対応できた。特にアルコール液は、関連する行政手続きを即座に行ない、自社生産したという。 物品のみならず、美容師、ディーラーにも協力を得て、総勢500名以上ものメッセージによる「with コロナ応援動画」を配信、業界ジャーナル各誌に「未来の美にむけて(コロナに負けるな)」広告を掲載するなど、コロナ禍によって大きなダメージを受けているサロンをはじめ美容業界関係のメンタルケアにも訴えた。また、コロナ禍により大きく変化したサロンの経営環境に対応するとともに、お客さまの美の実現にはサロンが不可欠であるとの視点に立って、「やっぱり、いいな、美容室」提案と称するサロンの活性化や価値向上につながる実質的な提案を進めている。
■ロレアル プロフェッショナル
メーカーから美容師へ美容師からお客へ紡ぐ言葉
「常に美容師の皆様と共に」をスローガンに掲げるロレアル プロフェッショナルは、コロナ禍で厳しい状況下にある美容サロンと美容師に向けたサポート活動を世界規模で展開中。緊急事態宣言の解除後、満を持して営業を再開した美容サロンの集客サポートとして、美容師のお客さま一人ひとりに込めた思いを体現した動画『EMOTIONS DO NOT CLOSE(あなたを思う気持ちは閉ざさない)』を公開し、全国の美容サロンへの配布も行なった。
動画においては、生き生きとした表情でサロンワークに臨む美容師の姿が映し出される中、その仕事の本質を表現したメッセージが発せられており、サロンユーザーの美しく輝きたいという願望を刺激する一方、美容師にとっても、自身の尊厳を再確認できる内容となっている。
なお同社は、4月にスタートした教育プログラム「ロレアルE‐アカデミー」の中で、サロンを衛生的に保つ7ステップ」 と題した学習動画を配信。6月半ばには、それを1枚の図解にまとめた「チェックボード」も作成し、美容サロンに提供した。
美容師は、あなたが自分をもっと好きになれるよう、もっと自分に自信が持てるよう、もっとありのままでいられるよう、人生という舞台で最高に輝けるよう、常にあなたの髪だけではなく内面から美しく輝けるよう、いつもあなたの心の声に耳を傾け、あなたにに寄り添ってくれる存在です。(動画『EMOTIONS DO NOTCLOSE』より抜粋)
■(株)リトル・サイエンティスト
“#だからこそ前へ”美容師の取り組みを支援
新型コロナウイルスの感染拡大が国内で顕著になってきた3月、「#だからこそ前へ」プロジェクトとしてさまざまな施策に取り組んだ(株)リトル・サイエンティスト。同社公式サイトでは野村社長自らが出演する動画でメッセージを配信し、新型コロナウイルスに関する正しい情報を発信する「特設サイトの開設」、「SNSによる情報共有」、同社教育システムの学習動画を蓄積した「リトルライブラリーの一部無料化」、リモート教育に対応した「メルマガ講座スタート」と4つのアクションを打ち出した。特設サイトでは、コロナ禍の対策にも万全を期す同社製品取り扱いサロン検索の登録数増加に注力するなど、集客に結び付く情報の充実を図った。その後、期間限定企画で美容師の前向きな取り組みを後押しした。
2.経営をサポートするコロナ禍対応企画
■滝川(株)
自社の強みを生かしV字回復を応援
幅広いカテゴリで商品を集約する業界総合商社ならではのキャンペーンセールで、サロン営業を援護射撃するのは、滝川(株)。
with コロナにおける安全・安心へのニーズに目を向け、サロンユーザーからの注目度も高い「衛生周り」の商材に特化したカタログ小冊子を、『V字回復応援 サロンリフレッシュキャンペーン』として制作。新たな生活様式に対応した衛生アイテムやディスポクロスなどの使い捨て商材に加え、夏の暑さを和らげる涼しいクロス、時短につながる高性能ドライヤーと、説得力のあるアイテムを通常よりもお得な価格に設定し、サロンを全力サポートする。今年9月末日まで実施するという。
『V字回復応援 サロンリフレッシュキャンペーン』掲載内容
・衛生アイテム特集
・大特価プライスセール
・定番の消耗品&ケアアイテム特集
・夏のおすすめクロス特集
・パーマ&カラーメニュー
・シャンプー&カットメニューアイテム
・バーバー応援アイテム特集
・スタイリング電化製品
・環境周り・備品特集
…etc.
キャンペーン期間は2020年9月末日まで
(株)ビューティーエクスペリエンス
withコロナも前向きに女性のビューティライフを提案
大人女性ならではの視点を持ち支持の高い女性美容師4人が開発に携わった(株)ビューティーエクスペリエンスのケアスタイリングブランド『㎜(ミリ)』を軸に“大事なお客さまのヘアライフを、デジタルとリアルをとおしてちょっと(1㎜)あと押しする活動”ミリ活を推奨中。コロナ禍においても、前向きに生きる女性を支援できる美容師であるためのオンラインセミナーを開催し、好評を博している。
6月8日には名古屋エリア限定のミリ活で、「スマホ動画編集」をテーマに、6月15日には『wit』スタイリストの伊藤真央氏を講師に迎え「マスク着用時のメイク&フィニッシュワーク」をテーマに開講。8月3日には、新シリーズ「ミリ活ソロリティ online」として、『DRESSER201』の山下愛奈氏を外部講師に招へいし、「明日から使える似合わせ術」と題し、独自のパーソナルカラー理論によるヘアカラーやメイク、骨格診断からのフォルム、服装提案について講義される。
■(株)ナプラ
アフターコロナの美容師を守りモチベーションを刺激する
サロンにようやくお客さまが戻りつつあるという中で、新型コロナウイルス感染防止策は緩められず、手洗いとアルコール消毒の繰り返しによって手荒れに悩んでいる美容師が多いという。サロン現場で苦闘する美容師に救いの手を差しのべた(株)ナプラ。同社ブランドのハンドケアアイテム『エヌドット モイスチャーハンドゲル』20万本を、同社製品の取り扱いサロンに無償で提供した。贈呈は同社製品の注文額に応じて2本まで、サロンへの直送製品に同梱して発送。20万本の定数に達したところで終了した。「非売品の扱いで販売は考えていなかったのですが、購入の要望が多く、販売する方向で準備をしております」と広報の担当者。美容師のみならず、サロン顧客のケア意識も刺激したようだ。
一方で同社は、新しい生活様式における美容師の取り組みの後押しとして、フォトコンテスト「DREAM PLUS PHOTO CONTEST 2020」の開催を発表。クリエイターのモチベーションを刺激して、業界の活性化を図る。
■タカラベルモント(株)
コロナ禍を乗り切る5つの支援対策
コロナ禍で起こり得る美容サロン経営の課題への対策として、タカラベルモント(株)は『ALL FOR SALON BUSINESS』と題し、5つの支援活動を展開中。『美容界7月号』で紹介したホーユー(株)との共同によるクラウドファンディングの支援プロジェクト「こんどきってね」もその一環だ。加えて融資や助成金といった資金面、衛生ツール・機器の「情報支援」、そして「スタッフ教育」支援など、全方向的な支援を行なっている。
緊急事態宣言の解除後は、顧客呼び戻しを含んだ集客の「企画支援」に着手。衛生管理の姿勢を示す画像素材や、ポスティングチラシ、DM作成をサポートする。また『ルベル』『エステシモ』など同社主要ブランドそれぞれから、効果的なホームケアのアドバイスも発信されている。
■コタ(株)
SNSの積極活用でお客さまとのつながりを維持
なかなかお会いできないお客さまへ、ご自宅での正しいヘアケア情報をお伝えするため、コタ(株)はSNSを有効活用。WEBマガジン『COTA BEAUTY STORY』において、サロン顧客向けに、次回来店までに健康で美しい髪をキープするためのホームケアの情報を掲載。サロンが運営するInstagramやLINEを介してサロン顧客に発信し、再来店を促す。正しいヘアケア情報を提供し、おうち時間でキレイな髪を育んでいただくことで、次回来店時のスタイル提案の幅が広がる。
3.集客を取り戻す支援アイテム
■(株)アリミノ
長期在宅で荒れがちな毛髪や肌のメンテナンス提案を
外出自粛で在宅時間が増え、ストレスもたまって毛髪や肌も荒れがち。そんなお客さまのケアを美容師の立場からアドバイスできるアイテムを(株)アリミノが提案。「おうち時間、もっと快適に。」のメッセージを添えて、ケアブランド『スプリナージュ』の特設サイトを公開した。サイト内では、美容師やエンドユーザーが、リラックスして楽しめるヘアケア法や肌ケア方法を紹介。
また、自宅で簡単にできるグレイカラーのメンテナンスアイテムとして、「カラーストーリーiプライム」シリーズのワンデイヘアカラー『ポイントコンシーラー』を推奨している。
■(株)ミルボン
来店サイクル長期化も想定内で対応を
with コロナ下、お客さまは徐々に美容サロンに戻りつつあるものの、来店サイクルは長期化傾向で推移するとの予測が立てられている。緊急事態宣言の解除後、再び感染者が増加しており、外出することへの警戒心も高まりそうである。とりわけグレイヘア向けのヘアカラーを愛用している層は、こまめなサロン通いを敬遠し、インターバル期間のメンテナンスが疎かになってしまう可能性も高い。(株)ミルボンのグレイヘアカラー『オルディーブ シーディル』には、リタッチ専用のホームカラー「インターバルリケア」がラインアップ。単に根元の新生部をカバーするのみならず、頭皮用のトリートメントで毛髪・毛根の状態を良化。サロンでの色みに応じた2ライン6色で、サロンカラーでの満足度を持続させる。来店サイクル長期化による顧客単価の低下を、店販で補うことも可能だ。
■資生堂プロフェッショナル(株)
変化するニーズから生まれた新たなコンテンツを示唆
資生堂プロフェッショナル(株)のヘアケアブランド『サブリミック』は、コロナ禍におけるサロンのニーズに絶妙にフィットする「SUBLIMIC+10」時短メニューを提案。また『ザ・グルーミング』の「UVショートメニュー」やヘアカラーの「クイックリタッチ」では、使い方動画も配信するなど。美容サロンにおける新たなコンテンツの方向性を導き出した。