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お互いさまの精神から育まれる「小さなサロンの“強いチーム”のつくり方」/Leaf(埼玉県さいたま市)

困ったときは、助け合う。ママ美容師の「お互いさま」から生まれる、チームワークの本質について、白髪染めと縮毛矯正の専門店を経営する『Leaf』の南 直人代表に尋ねた。

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教育を放棄するサロンにチームワークは育たない

美容の経営プラン編集部・古田領一(以下:古田) 『Leaf』は今、「ママ美容師が働きやすい美容室」としていろんな取り組みをされていますが、創業当初は、いわゆる普通の美容室でしたよ
ね。その当時のチームワークは?

南 直人(以下:南) オープニングスタッフは全員年上。地方の地域密着店は、求人しても、どうしてもこのような年齢構成になりがちです。で、美容歴も長いから、僕の言うことを聞いてくれないし、ヘルプにも入ってくれない。スタッフ同士でもいがみ合っていましたね。その後、ママ美容師を1人、パートのアシスタントとして雇用したのですが、子どもの発熱で突発的に休んだり、学校行事で土日に休暇を取ったりすると、年上のスタッフは「信じられない」という空気を出してくる。助け合いという感じはなく、チームワークはゼロでした。

古田 大変な状況ですが、コミュニケーションを取ろうとは?

 ええ。これではいけない、と飲み会に誘うのですが、ほとんどお通夜。考えてみれば、いがみ合っている相手と飲んだって楽しいわけがないのだから当たり前ですよね。

古田 「チームワーク失敗あるある」って感じですね。ただ、年上は絶対ダメかというと、そうではないとも思うんです。この点、南さん側に、何か原因はあったと思いますか?

 今思うと、僕が教育を放棄したのも原因でした。年上に技術を教えるなんて…と遠慮して、勉強会も開かなかった。ですが本当は、勉強会を開くと、自然と活発に意見交換できて、チームワークも良くなる。そのことに気付いたのは後になってからですね。

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スタッフ同士がお互いさまの意識を持つ

古田 その後、ママ美容師を積極採用し、白髪染めと縮毛矯正の専門店に転換しますね。この時期、チームワークに関する考え方はだいぶ変わっていたのでしょうか?

 先ほど話しましたが、子どもに熱があれば、急に休むのは当たり前です。ところが美容業では、当たり前ではなかった。実際、『Leaf』のスタッフでも、前に勤務していたサロンでは、子どもが熱を出しても休むなとか、保育園のお迎え時間に関係なく午後5時まで勤務しろ、といった圧力があったそうです。このようなきつい環境では、チームワークなんてできようがありません。逆に、良い環境になれば、チームワークも自然発生すると思うんです。

古田 『Leaf』では、その「良い環境」をつくっているわけですね。

 スタッフに対する『Leaf』の理念は、「働く主婦が生き生きと楽しく、プライベートも仕事も充実して、笑顔で働きやすいお店」「働きやすさ地域一番を目指す美容室」というもの。もちろんサロンとしても、午後4時に営業を終了するとか、家庭最優先でOK、土日に休んでもOKといったことはしていますが、そうした仕組みだけでなく、皆で「お互いさま」の気持ちを持つことが大事なんです。

古田 お互いさまとは?

 急な用事ができたり、学校のイベントがあったりしてサロンを休まざるを得ないというのは、どのスタッフにもあること。お互いさまなのだから、コミュニケーションを取って融通し合おう、と。このとき、僕は一切関与していません。唯一、代わりに入れるスタッフが見つからないときに、休業するスタッフに「絶対に無理して出勤しないこと」と念を押し、人手が足りない分は現場で何とかする、というぐらいです。

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『Leaf』南 直人 代表

チームワークはお客さまを巻き込んで初めて完成する

古田 チームワークの一つの形ですね。

 いえ、ここにお客さまを巻き込んで初めて、チームワークは完成すると思います。

古田 お客さまを巻き込むとは、具体的にはどういうことでしょうか?

 例えば、急に休むことに対する後ろめたさって、サロンの同僚に対してだけでなく、お客さまに対しても感じるもの。ですが、先ほどのようにスタッフは「お互いさま」で、お客さまにも理解を得ているのなら、その後ろめたさもなくなって、生き生きと働くことができます。

古田 どうしたら、お客さまの理解を得て、チームワークを築くことができるのでしょうか?

 普段からお客さまに、自分のこと、例えば「私は今子育て中なんです」などと話しておくのが大事。で、仮に子どもが熱を出して急に休むというのなら、予約の入っているお客さまには直接連絡して事情を説明し、予約をずらすか、別のスタッフに変わってもらうかを提案すれば、まず事情を理解していただけます。

古田 このように巻き込んでいないと、お客さまへの後ろめたさから、無理をしてしまいがちなわけですね。南 はい。そしてオーナーは、お客さまとスタッフが対立したら、必ずスタッフ側に立つべき。なぜなら、オーナーにとって本当の「お客さま」とは、スタッフだと思うからです。

古田 スタッフとお客さまを天秤にかけたとき、必ずスタッフが重くなる。

 先ほどの例を続けると、お客さまがもし、「あなたでなくては嫌だ、施術も今日がいい」とわがままを言って困らせるならば、僕はその人をお客さまとは思いません。

古田 この決意が、『Laef』のチームワークの基礎になっていると感じます。ありがとうございました。

スタッフから見た『Leaf』

以前務めていた職場は休みを取りづらく、子どもを育てながらの仕事は難しかったので、5年ほど前、『Leaf』へ相談も兼ねた面接に来て、すぐに入社を決めました。子どもは今年、小学1年生になり、学校行事が増えただけでなく、新型コロナの影響もあって勤務がどうしても不規則になるのですが、スタッフはもちろん、お客さまも子育てをしながら働くことの大変さを分かってくださっているので、急な休みや早退にも理解を示していただけます。また、他のスタッフも同じように子育ての都合などで休んだり先に帰ったりするときは、残る私たちがカバーし、助け合っています。働きやすい職場ですね。(入社5年目、シングルマザー)

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『Leaf』としてシフト調整を指示しない。全てはスタッフ各自が働きやすいように、お互いさま精神で調整している。

<サロンデータ>

代表者:南直人
所在地:埼玉県さいたま市南区別所
創業年:2008年
店舗数:1店舗
従業者数:8人
カット料金:6,600円~
URL:http://leaf-kulilyn.com/

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※本記事は、『美容の経営プラン』2020年10月号に掲載

■南 直人氏の著書
『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』