大学とTシャツとわたし/高橋 龍
第5回 「学生時代に戻りたい」が口グセの大人たちへ
電車に乗っていると、大学の校章や学校名がプリントされたTシャツを着ている学生をときどき見かけます。それらは通称「カレッジTシャツ」と言いますが、その歴史は長く、1930年代のアメリカにまでさかのぼります。プリントTシャツの始まりは、カレッジTシャツだと言われたりもするほどです。
もともとは学生の運動着として生協で売られているカレッジTシャツ。その大学や大学のある町を訪れた人のお土産としても人気です。各大学のスクールカラーを基調に、学校名がプリントされているものはシンプルなものが多く、一般の僕たちでもロゴTシャツとしてバッチリ着回せます。また、日本の大学ではあまりないように思いますが、その大学のマスコットがプリントされていることもあります。左ページで紹介しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校のクマやジョージア大学のブルドッグがそう。ポップな雰囲気がアメリカらしいですよね!
大学のキャンパスでピクニックデート中。カレッジTを着て大学生のふりをしてみるけれど、「全然大学生に見えないね、私たち」ってくすくす笑いたい。そんなオレの妄想。
さて、ヴィンテージのカレッジTシャツを語る上では、そのシンボルとも言えるボディ(土台であるTシャツそのもの)・チャンピオン製「88コットン」の話は、はずせません。主に1950~70年代につくられた「88コットン」は、素材の混紡比率のことで、コットン88%、レーヨン12%でつくられているという意味。レーヨンは、吸湿性・放湿性が高く、肌触りが滑らかな一方で、水に濡れると極端に強度が低下します。そのうまい生かし方を追究した結果、この配合にたどり着いたというわけです。ゴワゴワしやすい100%コットンのTシャツに比べて爽やかな着心地で、学生たちが運動するときにもぴったりでした。また、よく染まるレーヨンとコットンが織りなす杢もくの絶妙な風合いも、「88コットン」の人気の理由です。
大学と言えば、皆さんは「アイビールック」をご存知ですか?アイビーとはアイビー・リーグのことで、アメリカ北東部にある、名門8大学の名称(ハーバード大学など)。つまりアイビールックとは、名門大学の学生たちが好んだ服装をモチーフにしたファッションを指し、三つボタンブレザーやボタンダウンシャツ、チノパンツ、コインローファーなどが代表的なアイテムです(1964年に現れた「みゆき族」のファッションでも有名)。僕たちがアメリカの学生ファッションに惹かれるのは、デザインはもちろん、自由な大学生活への憧れや懐かしさからくるところも大きいのかもしれませんね。「アイビールックが好きだ!」という方は、ぜひカレッジTシャツも着てみてください。気分は、大学生でね!
[大学]Tシャツコレクション
知っている大学のロゴが入っていると、ちょっと賢くなった気分♪どんな大学で、どんな街なのか、カレッジTシャツをきっかけに調べてみるのも楽しいかも。
ジョージア大学
1785年に設立された、ジョージア州アセンズにある州立大学で、法律、教育学、ビジネス、ジャーナリズムの分野に強い。また、同国最古の公立大学の1つで、美しく歴史のあるキャンパスも魅力。マスコットはUgaというブルドッグ。
カリフォルニア大学 ロサンゼルス校(UCLA)
カリフォルニア州ロサンゼルスにあり、同州で学生数が最も多い州立大学。さまざまな指標から順位づけされる世界大学ランキング2019では17位。マスコットはJoe Bruinというクマ。「Bruin」は同大学のスポーツチームを指す通称で、応援の掛け声は、「Go Bruin!」。
ウィスコンシン大学 マディソン校
ウィスコンシン州マディソンにある全米最大規模の州立大学。公立版アイビー・リーグの1校として名を連ねている。メンドータ湖畔の緑に囲まれた広大なキャンパスを持っている。マスコットがBucky Badgerというアナグマ。
プロビデンス・カレッジ
東海岸の避暑地・ロードアイランド州プロビデンスにあるリベラルアーツカレッジ。リベラルアーツカレッジは、実用性・専門性よりも、幅広い知識や教養を身につけることを重視する。小規模なのも特徴。同大学は、男女共にボートが盛ん。
ヴィンテージTシャツの豆知識 vol.5
自分らしいTシャツ選びは素材の確認から
自分の好みやTPOに合わせてTシャツ選びができたらかなり通!ボディの素材はタグでチェックしよう。主に、タフな綿100%、肌触りが良いコットン・ポリエステル・レーヨンの混紡、通気性が良く乾きやすいポリエステルメインのものがある。
解説_高橋 龍
たかはし・りゅう/映画、音楽、アートのヴィンテージTと90sカルチャーを感じさせる古着を専門に扱う「anytee」のオーナー。
instagram : anyteeshop
イラスト_Mizmaru Kawahara
※本記事は、『ヘアモード』2019年6月号で掲載した記事を転載しました