小さなカケラ vol.9 / 師走の空とカラス達 カヒミ カリィ_ミュージシャン、文筆家
年の瀬も押し迫り寒さが本格的になってきましたが、いかがお過ごしですか?
先日、鳥の声が騒がしいなと思って外に出てみると、空に今まで見たことがないくらい沢山のカラスが一斉に飛んでいて驚きました。遠くに見える木の枝々を良く見ると、葉々だと思っていた影は全てカラスで所狭しと並んでいます。
不思議に思って調べてみると、この時期になるとカラスは集団となって一つの寝ぐらを共有するのだそう。多くは数百羽から数千羽のグループ、寒い冬の時期は集団寝ぐらを作って体温調節をしやすくしたり、餌場の情報を交換したり、つがいをみつける機会を増やすのです。我が家の近くには小さな森林があるので、きっとそこで夜を過ごしているのでしょう。カラス達は寒波が来るのをすでに分かっていたのか、数日後から気温がまた急に下がりました。
都会のカラスはちょっと物騒な印象がありますが、田舎で見かけるカラスは悠々としていて穏やかで風情を感じます。娘が幼い頃によく読んであげた、かこさとしさんのカラスの絵本を思い出して、ほっこりとした気持ちになりました。
ところでこの時期、ペンシルベニアの朝は凍りつく寒さで何とマイナス10度になることもあります。
平日は娘のお弁当を作る為に6時半前に起きるのですが、窓の外はまだ薄暗く、7時頃になるとやっと空がピンク色に染まってきます。私は本来夜型で、昔は早朝に起きるのが辛かったのですが、娘の学校だと思うとなぜか起きられるようになったのは、やはり責任感やヤル気の違いでしょうか。なかなかベッドから出てこない娘の姿を見て、自分が幼かった頃を懐かしく思います。
目覚ましが鳴っても夢うつつですが、まずブランケットの中で簡単なヨガのポ-ズをしてゆっくりストレッチ。これは以前、勢いで起きて大きな伸びをしたら背中がつってしまったことがあったので、欠かさずやる様にしています。そしてベッドから出ると鉄瓶でお湯をゆっくり沸かし、その間にシャワーを浴びて、Joscilleのエッセンスやオイルで肌や髪の手入れをしたら、レモン入りの白湯やお茶を飲みながら娘の朝ごはんとお弁当を作り始めます。
遅刻しないよう娘を急かせたり髪を結ってあげたりで結構慌ただしいのですが、そのお陰で家を出る頃にはすっかり目も覚めて一日がスタートした気持ちになれます。
早朝の冷たく新鮮な空気を吸いながらいつもの道を歩くと、一見変わらない冬の風景でも、陽の光や風、道端の植物、鳥や猫達…本当は全て変化していて、毎日新しい景色が広がっている事に気付きます。
毎日歩く道だからこそ、その小さな変化に気付くことが出来るのだなと思うと、娘と歩く何でもない道も恋しく感じられます。
春夏にたくさん成長した我が家の庭の草花や野菜達もすっかり枯れて、今はどこからか飛んできた大きな枯れ葉だけが絨毯のように静かに積もっています。
春に植えたレモンバ-ベナやラベンダー、ミントなどは秋に収穫し乾燥させてハ-ブティなどにし、バジルはクルミやオリ-ブオイルなどと一緒にミキサーにかけてジェノベーゼソ-スにしました。自分達で育てたと思うと大切に味わいたくなるものです。たっぷり採れたので次の春が来るまで楽しみたいと思います。
夕方は4時半頃には日が沈み、長い夜がやってきます。師走に入ってから娘とクリスマスツリーを買いに行き、夜になると2人でフェルトを縫ったり、生のオレンジを乾燥させてオ-ナメントを作りました。娘は先月で13歳になり、どうやらサンタの秘密に気付いたよう。今年は学校の年少の子供達の為に、皆んなでサンタからのプレセントを作ったよ、と言っていました。
娘の成長を感じるたびに、時が経つのは早いものだなと実感する今日この頃です。今年も無事に一年を終える事が出来てホッとしています。
慌ただしい年の暮れ、どうぞお健やかにお過ごしくださいね!
来年もどうぞよろしくお願い致します。
カヒミ カリィ
ミュージシャン、文筆家、フォトグラファー 。91年デビュー以降、国内外問わず数々の作品を発表。音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまでカルチャー誌や文芸誌などで写真や執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。
http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official