小さなカケラ vol.15 / クリスマスツリ-の森で深呼吸 カヒミ カリィ_ミュージシャン、文筆家
気付けばもう師走も半ばですね。今年は日本もアメリカも暖冬になりそうだというニュースを聞きましたが、ここペンシルベニア州は先月からどんどん寒くなり、今朝の気温は何とマイナス6度、庭に置いてある小鳥用の水がカチカチに凍っていて驚きました。
昨年は、秋とは思えないような暖かい日が続いた後にガクッと気温が下がる事が何度かあり、庭の植物の中には種を付けるチャンスを逃して枯れてしまったものも結構あったので今年は大丈夫だろうかと心配だったのですが、今年はそこまでではなく、種をしっかり付けた後に冬がやってきたので少しほっとしました。この数年気温差が激しく、大寒波が訪れる割には雪が積もる事はなくなっています。どうか今年の冬は、以前のように子供達がワイワイとソリ遊びをする可愛い姿が見れますように。
ところで我が家の庭のマスコット、グラウンドホッグ達は10月からすでに冬眠に入り、それまで彼らとイタチごっこでドタバタだった家庭菜園も嘘のように静まり返っています。
アメリカでは毎年2月2日にグラウンドホッグデ-という、春の訪れを予想するちょっとノンキな天気占いの行事があり、その前後に彼らは冬眠から目覚めると言われているのですが、という事は約4ヶ月間も何も食べずに眠っているという事?!
そう考えるとあの見事な食べっぷりも納得です。あのイタズラな姿を思い出すと今では、たくさんお食べ!と恋しく感じます。来年は自分達のものとは別に、彼ら用の小さな菜園も作ってあげて、私達の野菜を食べられないようにどうにか工夫出来たらと考えています。
アメリカでは秋になると大きなカボチャを玄関先にゴロンと飾り、そして11月の第4木曜日には感謝祭という祝日があります。七面鳥のロ-ストやコ-ンブレッド、パンプキンパイなどのご馳走を作り、親戚一同が集まって日々与えられる多くの恵みに感謝をしお祝いするのですが、その週末になると皆一斉に玄関先のカボチャを片付て、代わりにモミの木枝や赤いリボンなどで飾られたクリスマスリ-スを玄関のドアに飾り付けます。
街中の飾りつけも、秋のオレンジ色から冬の緑と赤色へと一気に模様替えするのがとても素敵で、店の窓のデコレーションもアイディアが楽しいものが多く、アメリカ人は寒い冬を楽しむのが上手だなぁと毎年感心してしまいます。
そして12月の週末になると皆、今度は大きなクリスマスツリーを買いに出かけるのです。大都会のNYでは路上や近所の教会の庭先などに期間限定のツリーのお店が出るので、よく大きなツリーを2人で背負って運んでいる姿を見かけます。ランカスターはというと、田舎なので皆んな車に乗って近所のファ-ムや大型の園芸店に出掛けていき、車の屋根に大きなツリーを乗せて持ち帰ります。
我が家も今年は形の良いツリーを手に入れるべく、いつもより少し早く買いに行く事にしました。私達がお気に入りのファ-ムは、その時期になるとホットチョコレートや紅茶など無料の温かい飲み物が店内に用意され、スモアというお菓子が作れるようにグラハムクラッカーやマシュマロ、それを焼けるように焚火も店先に。ちょうど日暮れ頃に行くとクリスマスのデコレーションやパチパチと燃える焚火がとてもきれいで、新鮮なクリスマスツリーの香りが辺り一面に漂い、まるで森の中にいるようでなんとも幸せな週末の夜を過ごすことが出来ます。
買ったツリーを車から下ろして部屋まで運び、ヨイショとツリースタンドに立てて眺めてみると、外で見るよりも随分大きく感じて毎年驚くのですが、でも身長が伸び盛りの娘は逆に去年はもっと大きかったように感じるんだよねぇと不思議そうに言います。
今年も娘とクリスマスのオ-ナメントを作ったり靴下を編んだり、ロ-ルケ-キやアップルパイなどを作ってゆったり暖かな冬休みを過ごせたらいいなと思っています。
皆さんもどうぞ素敵な年末をお過ごし下さいね。
カヒミ カリィ
ミュージシャン、文筆家、フォトグラファー 。91年デビュー以降、国内外問わず数々の作品を発表。音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまでカルチャー誌や文芸誌などで写真や執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。
http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official