【歌詞和訳:解説(2)】World's Smallest Violin(AJR)
こんにちは!
今回もAJRの「World's Smallest Violin」の歌詞の続きを見ていきたいと思います。
なお、既に前回の記事で訳した部分と重なるところは省略したいと思います。
5フレーズ目
このフレーズも、1フレーズ目と同じように、
語尾が「ウー」になるように韻を踏んでいます。
さて、最初2行は、2行目に「And」がある以外は
1フレーズ目の冒頭2行と同じなので、早速ですが割愛します。
直訳は「全く、俺は(自分を)とんだ馬鹿のように感じる」。
「Man」はいら立ちを表す間投詞として用いられることがあります。
(全く、ああ、ちぇっ、などなど)
「feel like」は「~だと感じる」。
「feel」は後ろに来る単語が形容詞であれば「like」は不要ですが、
ここでは後ろに来るのが「such a fool」という、名詞が中心のかたまりとなっているので、「like」がつきます。
「such a…」は「とても~な」という強調表現。
僕は「とんだ馬鹿のように感じる」を「自分が惨めになる」と訳しました。
「とんだ馬鹿みたいだ」とは、主人公がお祖父さんと自分を比較して、お祖父さんがあまりに立派なので自分がとんだ馬鹿のように感じています。
なので、この感情は、「惨めになる」「情けない」という日本語の表現と通じるものなので、「惨めになる」と訳しました。
この意訳は許容範囲ではないかと思います。
直訳は「認めてもらうためにとてもたくさんのものが私には残されている」。
「prove」は「証明する」というのが基本的な意味ですが、
ここでは「自分自身の力を証明する」という意味です。
「認めてもらう/認めさせる」という日本語がしっくりくる用法です。
自分には力があるんだぞと見せつけることで、
相手に認めてもらうという意味です。
「got」は「have got」の略、そしてこの「have got」は「have=持っている」ということです。
なんだかまどろっこしいですが、口語では「持っている」と言う時に「have」の代わりに「got (=have gotの省略)」を使うことがよくありますね。
「so much」は、「多くの物・こと」。
「left」は過去分詞で、「so much」を追加説明しています。
「left to prove」(認めてもらうために残されたもの)というかたまりです。
これらを合わせると、
「認めてもらうためにたくさんのものが俺には残されている」となります。
つまりどういうこと?
立派なお祖父さんと比べてもらうためには、
「君のお祖父さんは立派だったけど、君も負けず劣らず立派だよ」
と言ってもらうためには、
まだかなりの努力をしなければいけない(=残されている)、
ということです。
このニュアンスを、意味を変えず別の表現で表すために、
「越える壁が高すぎる」と僕は訳してみました。
6フレーズ目
ここは、語尾に「エ」という音が響くように揃えています。
(厳密に言うと、en, en, in, etなので、揃ってはいないんですが…)
日本語もそれっぽくそろえようと、2行目は「上手え」、4行目を「楽しいかね?」としようかと思ったのですが、イマイチだったのでやめました。
直訳は「俺の友人にはみんなVAPEを吸っている友人がいる」。
VAPEは電子タバコの一つだそう(この曲で初めて知りました…)。
「vaping friends」で画像検索するとこんな感じ。
こんな感じで、皆で集まって吸うんですね。
これをするのが不良かと言えば必ずしもそうではないかもしれませんが、
近寄りがたく感じる人もいそうですね。
電子タバコとは言え、中毒性も疑われているVAPE。
この歌詞の主人公は吸うのに抵抗があるようです。
「vaping」は「VAPE」(名詞)を動詞(to vape)として用いた場合の、現在分詞(~している)です。
直訳は「彼ら(=友人の友人)は友人を作るのがとても上手だ」。
訳自体はこれ以上特に説明は不要だと思います。
確かに、VAPEだけでなく、タバコを吸う人って新しい人と知り合うのが上手な気はします。喫煙室でのちょっとした隙間時間に、集まった人と話すのはよく見る光景です。
VAPEを吸う人が元々社交的な人なのかもしれませんし、
吸うことで気軽に人とコミュニケーションが取れるのかもしれません。
しかし主人公はこう言います。
「俺は屈服してしまうのがとても怖い」
この「cave in」を僕は訳すのが難しく、
何度も翻訳を書き換えています。
中心の意味は「崩れ落ちる」「陥没する」。
口語では「上からの圧力に屈する」「降参する」と言った意味です。
では、歌詞の中で何に屈服するかというと、
友人の友人がVAPEをやっていて、彼らがとても社交的なのだから、
自分も押しに負けてVAPEを吸い始めてしまいそう
ということです。
そして「それがとても怖い」と主人公は言っています。
直訳は「あれは本当に楽しいのですか?」
最後の「yet」を訳すのが難しかったのですが、「entertaining」であることを訝しがっている意味と捉えました。➡「本当に」と訳ました。
「あれ(that)」というのは「VAPEを吸うこと」。
「entertaining」は「(人を)楽しませる」。
主人公は、友達を作るのが上手なVAPE仲間の社交性には惹かれるものの、
VAPEを吸うことには抵抗があり(中毒性もありますしね)、
そもそもVAPEを吸うのって楽しいの?
と疑問を投げかけています。
自分の弾くバイオリンを弾いてほしい主人公ですが、
仲間を作るためにVAPEを吸うリスクは冒せない、という感じでしょうか。
そして、ここから2メロ、サビと続きます。
ここは前回も訳しているので割愛します。
7フレーズ目
このフレーズは全て「アー」という音で語尾を合わせています(語尾の子音の部分を除く)。
直訳は「宇宙のどこかで」。
この後、まだ文が続きます。
直訳は「どこかで誰かがもっとひどい目に遭っている」。
動詞は「has got=持つ」。「has」は「's」という形で略されていますね。
「get it worse」は、「ひどい目に遭う」「ついていない」と言った意味。
ここの「it」は特に意味がないと考えた方が良いかなと思います。
強いて言うなら、例えば「人生」がこの場合は当たるでしょうかね。
主語「I」が抜けていますが、仮定法の文です。
過去形に見えて、実はこれは現在の架空の話をしています。
「that」は、前文までの「Somewhere in the universe, someone has got it worse」です。
「make it easier」。ここの「it」は「get it worse」の「it」のように「人生」と考えてみます。ただしここでは主人公の「人生」です。
「(主人公の人生を)より簡単なものにする」になります。
そして「I wish+仮定法」で「~だったらいいのになあ」になります。
「他にもっと不遇な人生を送っている人がいるよ、と考えることで、
俺の人生をより簡単なものにしてくれればいいのに」が文の意味です。
ただし、この仮定法は「反実仮想」つまり「現実とは違う架空の話」なので、
実際には、
「下には下がいると言ったところで、俺の人生なんて楽になるもんか」
ということを言いたいわけですね。
これも主語「I」が抜けていますね。
直訳は「私がその痛みを感じなければ良いのに」。
「the hurt」は「その痛み」または「この痛み」ですが、
これは「立派な人(=祖父、曽祖父)」や「楽しそうな人生を送っている人(=VAPEを吸う、友人の友人)」に比べて、
自分は「何て馬鹿」なんだろう……「何て恥」なんだろう…
と考える時に感じる「痛み」のことです。
そして、ここもやはり「反実仮想」で、前々文までの内容を受けて、
「下には下がいると言ったところで、この痛みを感じなくなるものか」
という意味になります。
「~するものか」と訳すか、「~したらなあ」と訳すかでだいぶ主人公の意志の強さが変わってきますが、どちらでも良いのではと僕は思います。
僕は、こういう暗い話をとても明るい曲調で語っているところに着目し、
「~したらなあ」と敢えて軽めに訳すことにしました。
そして、最後のサビの4行があり、少し音楽に間があった後。
急に速度が上がっていくところからです。
ですが、ちょっと既に長くなってしまったので、今回はここまでにしておきたいと思います。