allとall theの違い
ご無沙汰しております。
今回は英語の冠詞について書きたいと思います。
皆さまは、all languagesとall the languagesの違いは何だと思いますか?
私はこの「all」と「all the」の違いがかなり苦手ですが、
違いは「特定しない」と「特定する」にあります。
「all languages」は特定しない、つまり「全ての言語」を意味する一方、
「all the languages」は、「それらの言語の全て」という意味になります。
意味的には「all of the languages」と交換可能です。
それで、例えばちょっとYouTubeで見た解説動画の例をお借りすると、
All dogs eat meat. ➡ (世界中の)全ての犬は肉が好きです。
All the dogs here eat meat. ➡ここにいる犬は全て肉が好きです。
という風に、ニュアンスに違いが出て来るのです。
さりげなく2文目に「here」を足していますが、このように、「all the」の方は、特定する以上、「具体的にどの犬なのか」を表すために、少し情報が追加されることが多いです。
と言うのが、基本的な説明です。
が、ここに大きな落とし穴があります。
というのは、
1文目にさりげなくカッコ書きで付けた「(世界中の)」のように、
「一般的な事柄」に使われるのだ、というのを強調しようと、あるいは分かりやすく伝えようとするあまり、
かえって、これが不変の原則のように無意識に考えてしまうことです。
自然科学の法則みたいな感じですね。
そうではありません。
結局、言語は人が話すもの、もっと言えば仲間内で話すものなので、
「暗黙のルール」がたくさんあります。
「全て」と言っても、誰もが皆世界中のごまんといる犬のことを念頭に置いているわけではなく、
「全て」には、その人なり、あるいはそのグループなりの範囲があります。
これを踏まえた上で、「特定されていない」と「特定されている」の区別がさらに加わるのです。
そして、この線引きがどこに引かれるのかは、正直ネイティブじゃないと分からない……というのが僕の受ける印象です。
ネイティブじゃなくても、組織に属していれば分かる例を挙げましょう。
例えば翻訳会社で、アジア言語と日本語の間の翻訳をしていたとしましょう。
この時、「全アジア言語で翻訳してください」と言う時は、
「Please translate this in all Asian languages」と言います。
「all the Asian languages」じゃないんですね。
なぜでしょう?
この翻訳会社は、中国語や韓国語だけでなく、チベット語やビルマ語、キルギス語、客家語など、ありとあらゆるアジア言語を訳すのでしょうか?
そう考えたくなるのは、この「the」のつかない「all」の「一般化」という用法を永遠不変の法則と考えているからです。
例えば、この翻訳会社では、韓国語、簡体字中国語、繁体字中国語、ベトナム語を扱っていたとしましょう。
そうすると、たった4つの言語なのですが、これがこの会社にとっての「all languages」になるのです。
これが「全て」の範囲になるわけです。
社内の独自ルールですね。
そして、この規則に則ったうえで、「all languages」と「all the languages」を使い分けるのです。
社外の人にとっては、「アジア言語=中韓越」なんて知らんよ、と思うでしょうから、
社外の人にとっては、この4つの言語は「all the Asian languages (all of the Asian languages that they translate)」と、「the」つきで特定されます。
が、社内の人にとっては、「all Asian languages」になるわけです。
逆に、「all the Asian languages」と言うと、「それらのアジア言語全て」となるので、
「それらって、どれら? 簡体字と繁体字? それともベトナム語と韓国語?」
と言ったように、社内の人にとっては「文脈が分からないとどのことを言っているか分からない言語」になってしまいます。
今回は社内ルールについて話しましたが、
恐らくこういった「特定の範囲」の境界線は、私たちノンネイティブ、あるいは部外者の見えないところで色々と敷かれているはずです。
これだからこそ、冠詞の使い方は、たとえ規則が分かっても、使い方が分からないのです。
規則は一般的であっても、使い方は独自だからですね。
また長くなってしまいました…。
少しでもご参考になれば幸いです。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました!