英語にもある?!「条件法」
こんにちは!
先週末から英語の「仮定法(subjunctive mood)」にハマっている(?)じょさのんと言います。
ちなみに、「仮定法」とは、「仮定を表現する方法」という意味ではありません。
上の英語名にご注目ください。
「法」に当たる語が「method」ではなく「mood」になっていますね。
この「mood」は日本語にもある「ムード」と同じ「気持ち」を表す語。
誰の気持ちを表しているのかというと、「話し手」の気持ちです。
これを言語学では「法」という言葉で訳しているのです。
話し手が、どんな気持ちで話しているかによって、
口調だけでなく、動詞の形が変わってしまうんですね。
(英語の動詞はほとんど変化しなくなっちゃいましたけれど)
英語には、
話し手が、事実を率直に説明する『直説法』(indicative mood)、
話し手が、誰かに命令をするときに使う『命令法』(imperative mood)、
そして、
話し手の主観が大いに入った(事実かどうかは気にしない)話をするときの『仮定法』(subjunctive mood)
この3つの「法」がある、とされています。
少なくとも、日本で学ぶ英文法では。
この『仮定法』という訳、実はあまり評判は良くないようで、
フランス語やイタリア語にも全く同じ名前の「法」はあるのですが、「仮定法」とは言わずに「接続法」と訳したりします。
接続詞(ifやthat)の後ろに来ることが多い動詞の形だからですね。
そして、そうやって英語の仮定法について色々調べているうちに、
中学生の時には疑問にさえ思わなかったことが急に気になり出しました。
典型的な仮定法の文です。
でも、皆さんにお伺いしたいのですが、
この「would travel」の部分って、何の法の、何の時制の形と習いましたか?
何か、「if 動詞の過去形、主語+would 動詞の原形」
という風に習ったように僕はうろ覚えながら記憶しています。
上の「公式」自体が「仮定法」だと習ったかもしれません。
でも、「法」が現れるのは動詞の中においてです。
文全体が「法」なんてとんでもありません。
となると、
前半部の「had」は仮定法過去として良いとして、
後半の「would travel」は何ぞや? と。
日本での英文法では、どうも後半についても「仮定法過去」と説明されているようです。
でもちょっと待ってください。
「travel」の仮定法過去って、「travelled」では?
なぜ、「would travel」って言うの? と。
確かにこれは、
If I have money, I will travel around the world.
という、もっと現実性のある仮定をするときの文(これは『直説法』です)を、
単純に仮定法で置き換えた、と考えれば良いのでしょうけれど、
何だか腑に落ちませんでした。
というのは、英語で書かれている「subjunctive mood」の説明を見ると、
「if I had money」の「had」がそうだ、としか書いていないからです。
If I had money, I would travel around the world.
と、わざわざ全文を書いておきながら、「仮定法」だと言っているのは「had」だけで「would travel」ではないんですよね。
それで、ちょっとドイツ語で書かれた英文法のサイトをちらちらと見てみたのですが、
それを見ると、「would travel」は「present conditional」という形だ、と書いてありました。
「present conditional」。
日本の英文法では見たことがない用語ですね。
ただ、フランス語やイタリア語を学んだ方であればピーンと来ると思います。
そう、「条件法現在」というものです。
…なんかややこしくなってきました。
英語には「直説法」「仮定法」「命令法」の3つの「法」しかないと言われていたのに、
実はもう一つ、「条件法」というものがあったとは!
ちなみに、この「条件法」は「条件文」とはまた別です。
上の例のように、「if」という条件や仮定を表す接続詞が出て来る文のことは「条件文」ですが、
この「条件法」には「if」は特に必要ありません。
よく耳にする、
I would like to have a cup of coffee.
これも動詞「like」が「条件法」の形をとったときの文なのです。
この「条件法」ですが、見て頂いたとおり、それ自体特別な動詞の変化形を持っているわけではなく、
「would」や「could」「should」「might」などの助動詞と、動詞を組み合わせる必要があるようです。
なるほど、「would」とか「could」って、「will」や「can」の過去形じゃなかったんですね。。。似て非なるものだったわけです。
そして、
「would(その他の助動詞)+動詞の原形」を
「条件法現在」(present conditional)
「would(その他の助動詞)+ have + 過去分詞」を
「条件法完了」(perfect conditional)
と呼ぶのだそうです。
何か英語と日本語の語順が逆になっているのが気になりますが、
それよりも、
何か新たな用語が出てきて大変ですね…。
しかも、「仮定法」と「条件法」って、
用語としてものすごく紛らわしいと思いませんか?
さて、この「仮定法」と「条件法」の意味する「法」、
つまり「話し手の心のうち」の違いですが、
……これがややこしい。。
フランス語の「接続法」と「条件法」の違いは?と言われたら、
「接続法」は「事実かどうかは問わず、話し手の主観を述べるとき」
「条件法」は「事実ではない、起こりそうにないと思っているとき」
と整理することができるのですが。。。
上をご覧いただいたらピンと来る方もいると思うのですが、
「あれ?『接続法』って英文法でいう『仮定法』なんでしょう?
でも、上の『条件法』の説明って、『仮定法』の説明では?」
と…。
そうなんです。
フランス語の説明をそのまま引っ張ってくると、
英語の仮定法と条件法の違いの説明が曖昧になってしまうんです。
これはややこしいですね…。
でも、ドイツの学生はこの違いをちゃんと理解できているわけですね。
そもそも、「仮定法」の英語である「subjunctive」には、「仮定」という意味はありませんので、紛らわしくないのかもしれませんが……。
ちなみに、「条件法」の説明は「would+動詞の原形」にも当てはまります。
「起こりそうもない、事実ではない」と思っているからこそ、
「~していただけませんしょうか?(Would you, Could you..)と言った、
丁寧な表現になるわけです。
「Will you close the window?」が「あなたは窓を閉めるつもりですか?」だとするなら、
「Would you close the window?」は、「多分そうじゃないとは思うんですが、あなたは今、窓を閉めたいと思っていたりやしませんか…?」
というニュアンスになり、結果として丁寧な表現になるわけです。
そして、いわゆる「仮定法の文」の主文に「would+原形」つまり「条件法」の形をした動詞が使われるのも納得。
「ま、ありえないとは思うんだけどさ」という気持ちが前提としてあるので、
「まあ、ありえないとは思うけど、世界中を旅しようかなあ」
と言えるわけです。
そして、「I would travel around the world」の動詞の形から、「ありえないと思っている感」がひしひしと伝わってくるので、
「if」の文を省略しても成立するわけですね。
すっかり長くなってしまいましたが、
英語にも実は第四の法、「条件法」があり、
これはドイツでは教えられている(らしい)、というお話でした。
ちょっと今度街の図書館に行って、
実際にドイツでそのように英文法が教えられているのか、見に行きたいと思います。
それでは、ここまでお読みくださいまして本当にありがとうございました!